幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第33話 異次元に強い化け物達

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 朝食を取りながら山越えの打ち合わせを済ませた私たちは、さっそく移動を始めるのだった。
 現在地はグレイナル山脈のふもと、魔王軍の領域側に位置する。
 目の前にそびえたつ大小の山々を超えた先に「邪神教」の魔物たちが住む土地があるのだ。

「それにしても、改めて近くで見るとすごいわね……」

 私は目前の壁のような山を見て、シグマの腕の中で呆然と佇む。
 そんな私のつぶやきにシグマは「この山々は儂ら魔物たちの故郷のようなものだ」と答える。
 魔王軍の魔物たちの中にもグレイナル山脈からこちらに下ってきた者たちは多いという。
 たしか、私の屋敷にいた猫執事のミャオもこの山の出身だと言っていたはずである。

「グレイナルには何回か入ったことがあるけど、あんまりいい思い出はないニャ……」

 いつもよりも少し元気のない様子で眉を顰めるニャルラ。
 シグマ親子はグレイナル出身ではないらしく、ここには数回来たことがある程度らしい。
 肩を落とす弱気なニャルラを見たガウェインも少し緊張した様子でその後ろを走っていた。

 山のふもとの森からグレイナル山脈を登り始めた私たちは、少しペースダウンしながらも良い調子で進んでいく。
 そんな中、私は出発前にシグマが言っていたことを思い出していた。
 屈強なシグマが「ここからは少し移動に気を遣う」と言っていたことについて少し考える。
 たしか、昨日は「山の向こう側では慎重に動く」と言っていた気がしたが、山の中も一応警戒する必要があるのかもしれない。
 邪神教の連中に私たち「偵察隊」の存在を気取られないようにするためなのかとも考えたが、それ以外にも理由がありそうであった。

「ねえ、グレイナル山脈に住む魔物ってそんなに強いのかしら?」

 考えられる一つの理由として「魔物が滅茶苦茶に強い」という仮定を私は考えた。
 魔王軍でほぼ最強のシグマとそれに準じる強さを持つニャルラ、最近急成長中のガウェインがいてもまずいほど強い敵の存在である。
 そんな疑問に対して、シグマではなく横を走るニャルラが答えた。

「半分正解で、もう半分は違うニャ」

 彼女が言うには、山脈で暮らす魔物たちは基本的に好戦的ではあるがそこまで強くないという。
 だが、ごく一部異次元に強い「ヤバい魔物」が存在するらしい。

「あれは、うちらが迂闊に手を出していい存在じゃないニャ……」

 かつてシグマ親子も「グレイナル山脈に住む強い魔物と戦いに行く」という企画で遊びに来た時のことだという。
 その時のメンバーには吸血姫ヴァネッサや竜人ドレイク、土塊スターチアといった魔王軍屈指の戦闘能力を持つ面々もいたらしい。
 猫執事のミャオをはじめとするグレイナル出身の魔物たちは「絶対に近寄ってはいけない」と震え上がってその魔物たちについて語るという。

「あの時はまるで歯が立たなかったのう」

 シグマを含む各部隊の隊長3人に、大戦時代からの強者であるヴァネッサとそれに次ぐ実力者のニャルラがいても手も足も出なかったのである。
 魔王軍でも最高峰の武力を持つ5人がたった1匹の魔物に軽くあしらわれたという。
 私はその話を聞いて「邪神教なんかよりよっぽど危険なんじゃない?」と思ったことを口に出す。
 ガウェインも私と同意見のようで、シグマやニャルラを子ども扱いできるような奴が本当にいるのかと信じられなさそうにしている。

 シグマ達がかつて遭遇した魔物のように、魔物という枠を超越した神のような強さの怪物があちこちに存在するのが「グレイナル山脈」だという。
 ただ、そんな怪物たちも大半は見逃してくれるらしい。
 まれに「獲物は絶対に逃がさない」といったハンターのような怪物がいるらしいので注意が必要なのだという。
 そんなわけで、魔王軍も邪神教もグレイナル山脈を闊歩する「化け物」達にはノータッチであるらしい。

「500年前の大戦の時も、特に奴らが干渉してくることはなかったしのう」

 当時のことを思い出しながら言うシグマ。
 おそらく、化け物連中も「外の小競り合い」にそこまで興味がないのだろう。
 それを聞いて「プロスポーツ選手がアマチュアの大会に出れないシステムに少し似ているな」と思う私である。

 一同は警戒しながらも「化け物に出会いませんように」と祈りながら山道を行くのであった。
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