幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第34話 強くなった私の騎士

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 周囲を警戒しつつも山登りを続ける私たち。
 凶悪な魔物に襲われるということもなく、時々出てくる強くない魔物はガウェインが処理していく。
 山越え中に訓練もかねて、道中の敵はガウェイン一人で対処させるというシグマの判断である。

「うむ、ガウェインはなかなか才能がある」

 魔王軍での訓練によって鍛えられたガウェインは見所があるとシグマは言う。
 ニャルラもガウェインの戦闘能力には高評価のようであった。

「それじゃあ、魔石を回収していくニャ」

 ガウェインが倒した狼たちの死体から「魔石」と呼ばれる宝石のようなものをニャルラが回収する。
 どうやら、これは「魔導回路」を利用するのに使うらしい。
 私が本で読んだ知識によれば、生前の世界でいうところの「電池」のような役割を果たすという。
 キラキラと奇麗な小石のようなものを次々と回収していくニャルラ。
 彼女が手際よく魔石を拾う間に、ガウェインはシグマから戦闘に関するアドバイスをもらっていた。

 戦闘も順調にこなし、山道を危うげなく進んでいく私たち。
 シグマの腕の中の私も移動にだいぶ慣れてきて、少し眠たくなってくる程度にはリラックスしている。
 私たちの間に緊張感のない空気が流れ始めていたころであった。

「狼がたくさんいるわね……」

 私たちの行く先をふさぐかのように、大量に出現した狼の群れがこちらを見ているのだ。
 しかも、先ほどまでのように小さい狼だけではなく、一際大きいボス狼のようなものまでいる始末である。
 その様子を見ていたシグマが「ガウェイン、今のお前なら問題なく行けるはずだ」と声をかけた。
 それに対してガウェインは頷き、剣を構えて魔物の群れに向かっていく。

「結構たくさんいるけど、一人で大丈夫かしら?」

 ちょっと彼の様子が心配になる私であったが、シグマやニャルラが「大丈夫」と言っている以上大丈夫なのだろう。
 その場を任されたガウェインは飛び掛かってくる狼を躱しながら剣で貫く。
 シグマから教わった「歩行術」の応用技なのか、重心の移動をうまく利用した無駄のない動きで次々と魔物を倒す。
 そんなガウェインを見ていた私は「いつの間にこんなに強くなっていたのかしら」と驚くのだった。

 ガウェインは複数の狼に対して後れを取ることもなく、最後にはボス狼をも危うげなく仕留めた。
 敵の殲滅を確認したニャルラはいつものように魔石の回収へと向かっていく。
 私とシグマのもとへと帰ってきたガウェインは疲れた様子もなく、汗もあまりかいていなかった。

「ガウェインすごいじゃない!」

 人間の中ではとんでもなく強くなったガウェインを盛大に私は褒める。
 シグマも「力が抜けていて良い動きだった」とガウェインに賞賛を送っていた。
 そんな賛辞を受けとめながらも「なんだか、突然自分が強くなったような気がします……」と自らの成長に驚いているガウェインである。
 彼も度重なる戦闘訓練と、シグマによる技術指導によって「強者達の戦い方」のコツをつかみ始めているのかもしれない。
 この事実を受けて、私は自分の騎士の成長が純粋にうれしいのであった。


----


 それからも何度か集団の魔物に襲われることがあったが、いずれも苦労することなくガウェインが倒して進んだ。
 そんな調子で日が暮れる頃にはグレイナル山脈を抜けた私たち。
 グレイナル山脈もとても広くて巨大な土地ではあるのだが、細くなっている部分を横切る分には1日あれば越えられるのである。
 これも書庫で読んだ地政学の本に書いてあった。

「この辺で今日は野営をするぞ」

 歩みを止めたシグマが言う。
 どうやら今日は「邪神教」のテリトリーであるこの森で一晩を過ごすらしい。
 背負っていた巨大な荷物を下ろすニャルラがキャンプの準備を始める。
 それを手伝うガウェインとシグマを見ながら、私は邪魔にならないように近くの石の上に腰かけていた。

「あら、怖いのかしら?」

 私の腕の中で小さく震えるワタアメが「むきゅ……」とおびえた様子を見せている。
 確かに山を越えるまでの森の中とは違い、少し肌を刺すような威圧的な空気感を周囲から感じた。

 これも、この世界に特有の「魔力」が感じ取る敵意のようなものなのかと思いながらワタアメを撫でる私であった。
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