幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第41話 魔王妃の作戦

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 魔法陣が動いて、私たちから隠れているのだから見つからないのだ。
 よく考えてみると、あれだけ探したのに見つからないということはそういうことなのである。
 私の発言に対してシグマとニャルラは「魔法陣が歩く?」と首をかしげていたが、ガウェインはなにやら気づいたことがあるらしい。

「お嬢様、魔物に魔法陣を刻むことって可能なのですか?」

 ガウェインは魔物に魔法陣を記すことができるのならば、書かれた魔物が逃げ回れば「魔法陣は動ける」のではと言う。
 それに対して私は「可能よ、私の体内にも制御魔法陣があるわ」と答える。
 生まれたときに医師のゲンジに刻み込まれた「対アルテミシア」の魔法陣であった。

「制御魔法陣が入っているだと?」

 私の体内に魔法陣が刻み込まれていることを知らなかったシグマは驚く。
 そういえば、魔王軍の魔物には私がアルテミシアであるということを話していなかったわね。
 そもそもアルテミシアについて知っているのかも分からないが、魔王軍の書庫にあった本には書かれてあったので知っているかもしれない。
 私がシグマに自分が「アルテミシア」であることを話すと、意外な反応が返ってきた。

「先代の魔王妃メルヴィナ様もアルテミシアだったのう」

 顎を手で撫でながら先代魔王妃について話すシグマ。
 今の魔王妃殿のように小さくはなかったが、黒髪に青い瞳という点はそっくりであるという。
 ニャルラは「アルテミシアって何なのニャ?」とさらに首をかしげていた。
 魔物たちの間では「魔王妃は何か知らんけど魔力がすごい」くらいの認識であるらしい。
 まあ、その辺の話題は現状打破にはつながりそうもないので後回しにしておこう。

 とりあえずこの状況をなんとかしなければならないので、私は「魔方陣が生き物である可能性」に対する対策を話す。

「自爆した人狼の魔物のように、邪神教の狙いはもしかしたら「わたし」なのかもしれないわ」

 そのことについてはシグマ達もそう思っているらしく、私を守るのを最優先に動いているという。
 人狼が襲い掛かってきたときもシグマは私の命を一番に考えてくれていたことを思い出す。
 そのことについてはガウェインも「当然です」と強く言い切っていた。

「私たちは魔法陣を手分けして探したわよね?」

 そして、私たちが魔法陣を探す方向に舵をとることも予想済みであるとするならば魔物たちはどんな手をうつか?
 急いでいる私たちが魔法陣を手分けして探すだろうということは容易に想像がつく。
 すると、二手に分かれたことによって私のガードが手薄になるはずである。
 つまり、敵はシグマと私が2人行動になったときに何らかの手を打ってくるはずだったのだ。

「だが、魔王妃殿とワタアメと3人で行動している時も魔物は気配すら感じなかったのう」

 私の話だとハサミのもとへ帰ってくるまでに接敵してるはずだと言うシグマ。
 たしかにその通りなのだが、シグマは強いのでおそらく敵も警戒しているのだろう。
 言い換えれば、魔物側は私たちに攻め入るタイミングがなかったというわけだ。
 そう考えると魔物自体はあまり強くないのかもしれないわね。

「じゃあ、どうすれば魔物は姿を現すと思うかしら?」

 私がシグマ達に問題を投げかけると、うんうん唸った後でシグマが「分からんのう」と答えた。
 ニャルラも「片っ端から魔物を探すしかないニャ……」と弱気に発言する。
 私の意図に気づいたであろうガウェインは唯一その場で深刻な表情をしていた。

「お嬢様、それは危険すぎます……」

 ガウェインが私の考えに対して難色を示していることにシグマ達は困惑していた。
 シグマ達には私の作戦が伝わっていないのである。
 ガウェインが答え合わせもかねて、考えた作戦について話し始めた。

「つまり、お嬢様は「自分を囮にする」と言いたいのですよね?」

 ガウェインは悲痛な面持ちでそう言う。
 それに対してシグマやニャルラも「それは危険すぎる」と答えた。
 私はガウェインの言った作戦が概ねあっていることに喜びながら、彼らにこの作戦について詳しく話す。
 作戦の概要は簡単だ。
 ガウェインには申し訳ないがこの3人の中で一番対処しやすいであろうガウェインをここに残して、シグマとニャルラはいったん超速で魔法陣探しに出かけるふりをしてもらう。
ある程度の距離が開いたところで、敵はこのチャンスを逃さぬように私の命を狙いに来るはず。
 それを逆手にとって後ろから挟み込むというわけだ。

「現状ではこれが最善手のはずよ」

 一同もそれ以外に解決策は思いつかず、覚悟を迫られるのだった。

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