幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第43話 命のやり取り

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 ガウェインが私を助けてくれていなかったら、今頃あの鋭い岩に体を貫かれていた。
 目の前の非現実的な光景にギョッとした私は「あ、ありがとう……」と全身に鳥肌を立てながら言う。
 私と同じくガウェインも「間に合ってよかった……」と私を抱きかかえる手に力を込めていた。
 これまでにないほど緊張した様子のガウェインが「お嬢様、俺から離れないでください」と騎士っぽいことを言う。
 普通の女の子なら胸にきゅんと来る瞬間なのだろうが、かつてない命の危機を感じる魔王妃の私は「うん」とマジの頷きを見せた。

「おそらく次が来ます!気を付けてください!」

 まだまだ魔法が飛んでくるはずだというガウェインに私も同意する。
 私たちに襲い掛かるも尚隠れているということは、魔法で後方から攻撃するタイプの魔物なのかもしれない。
 隠蔽魔法陣で私たちを嵌めて、疲れさせてから攻撃しようという作戦からも「武闘派」ではなさそうである。

 ガウェインの合図でうまいこと岩による攻撃を避けていく私達。
 しかし、このままではいずれ回避に失敗したタイミングで致命傷を食らってしまう。
 この状況を打破するために、敵の攻撃に慣れたガウェインがあちこちの茂みに向かって袋から出した毒煙玉を投げ込む。
 おそらくそれほど遠くはない場所にいる敵を炙り出そうというわけだ。

「げほっげほっ、何よこれ……」

 ガウェインが投げた毒ガスを少し吸ったのか、魔物らしき人影が煙の中からこちらへと歩いてきた。
 私とガウェインは一時岩の魔法が止んだこともあり、この魔物がこちらに攻撃していた奴に違いないとあたりをつける。
 そして、だんだんと煙のなかから敵のシルエットがハッキリとしてきた。
 中から出てきた魔物はよく見ると、小さいウサギ耳の女の子である。
 しかし、魔力感知を覚えたばかりでもわかるほどに強烈な魔力を私は彼女から感じた。

「こいつ、とんでもない魔力を秘めている……」

 隣に立つガウェインも、この小さな女の子から驚くべき量の魔力を読み取っていた。
 毒ガスを吸ったとはいえ、結構余裕そうなウサギ耳の魔物はこちらを見てニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる。
 その様子はこんな時でなければ十分に可愛らしいものであった。

「うへへ、ちっちゃくて可愛い魔王妃様ね」

 私の方を見て、おっさんのようなねっとりとした口調で可愛い声を出すウサギ。
 捕食者のような目で私のことを見る様に、私は思わず身震いするのだった。
 そして、続いてガウェインの方を見たウサギは「まずはそこの男の息の根を止めなくちゃね」と言って、何やらぶつぶつと早口で呟く。
 彼女の独り言は早口というレベルではなく、もはや口が早送りで動いているように見え、何を言っているのか全く聞き取れなかった。

「魔法よ!!気を付けて!!」

 もしかしてこれが本に書いてあった「詠唱魔法」かと思った私は、咄嗟に叫び声をあげていた。
 ターゲットが自分だと気づいたガウェインは私を横に突き飛ばし、足元から生える危険な岩を回避する。
 地面に倒れこむ私は、先ほどまでとは違う驚異的なスピードの連続魔法攻撃を避けるガウェインを見ていた。

 必死に避け続けて反撃の機会を伺うガウェインを見ていることしかできない私である。
 何発か岩にかすりながらも致命傷は避けているガウェイン。
 しかし、岩をよけた後の空中姿勢では次の攻撃をよけられなかった。

「ぐふっ、お嬢様……」

 ウサギの魔物の手のひらから射出された「氷のツララ」が高速でガウェイン腹部を貫く。
 お腹から盛大に血を吹いて地面に落ちたガウェインは、ピクピクとわずかに動くのみであった。

「いやあああああああああ!!」

 目の前の様子が信じられない私は思わず叫び声をあげるのだった。
 私の叫び声に意識が一瞬戻ったのか、地面に臥すガウェインが「お嬢様……お逃げください……」と声を絞り出す。
 同じく、私の叫び声を聞いてニヤニヤしているウサギは「逃がすわけないじゃないね~」と興奮した様子で私の方へと歩いてきた。

「あっ!でも、逃げ惑う女の子をジワジワといたぶるのも興奮するよね~」

 気持ち悪さを感じる笑顔で恐ろしいことを言うウサギの女の子。
 私より少し背の高いぐらいの女の子が、小さな私を痛めつけようとワクワクしているのである。
 子どもの喧嘩みたいな光景だが、決してそんな可愛いものではなかった。

 じりじりと後ずさりする私は「このままではやられる」と思い、なんとか生き延びる方法がないかを考えるのだった。
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