幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第48話 四天王フォルトゥナの熱い視線

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 全身ボロボロで血に染まっていながらも、なお笑顔でこちらに熱い視線を送ってくるウサギが私は怖かった。
 そんなウサギの問いかけに対し「今はアルテミシアでもあり、魔王妃メルヴィナでもあるわ」とアルテミシアが答える。
 するとウサギはふふふっと笑って血のついた指をなめた。

「私はフォルトゥナ、邪神教四天王の一人よ。強い女は大好きだから、また会いたいわね……」

 フォルトゥナと名乗ったウサギの口が高速で動き、彼女を中心に立体魔法陣が形成されていく。
 そして、瀕死のウサギは私の方をガン見しながら興奮した様子で魔法の光に包まれて消えていった。
 私は敵を逃がしてしまったことに気づいたが、それよりも致命傷のガウェインをなんとかしないといけない。
 鉛のように重い体を動かすアルテミシアに、私はガウェインのもとへ急ぐよう言う。

「ふふふ、ご主人が騎士の面倒を見てどうするのよ」

 ガウェインの方を見て不気味にほほ笑むアルテミシア。
 私の命令に応じたアルテミシアは、酷使してボロボロになった私の身体を動かしてなんとか彼のもとへとたどり着く。
 しかし、息も絶え絶えで歩いてきたアルテミシアはガウェインの横に倒れてしまう。

「アルテミシア、助かったわ」

 最初の話通り、きちんと役目を果たしてくれたアルテミシアに私は礼を言う。
 意外にも私の身体に悪さをすることもなく、現状を打破してくれた彼女は案外悪い奴ではないのかもしれないと思った。
 まあ、たった一度優しくされたくらいでそんなことを思っちゃうあたり私もちょろい女なのかもしれない。

 ガウェインと並んで土を舐める私の元へワタアメが駆けつける。
 ワタアメはフォルトゥナの攻撃を避け続けて疲れてはいるが、致命傷を食らったわけではなかったので比較的元気であった。
 そんな彼女は「もきゅ!!もきゅ!!」と倒れる私にくっついて悲しそうに声をあげている。
 なんだかご主人が死ぬみたいな空気を纏ったワタアメに対し「大丈夫よ、ちょっと疲れただけだから」と優しくほほ笑みかける私。
 しかし、そんな言葉とは裏腹にだんだんと私の視界がぼやけていく。

「また力が欲しくなったら私を求めるのよ……?」

 そして、私の意識が飛ぶ直前にアルテミシアの不気味な笑い声が聞こえるのだった。


----


 邪神教四天王のフォルトゥナを撃退したことで、この森に施されていた隠蔽魔法陣は解かれた。
 風に揺れる木の葉が擦れる音のみが聞こえる森は、さきほどまでの不気味な静けさとは別の静寂に包まれる。

「もきゅ……」

 そして、主人とその騎士が倒れる森の中で一匹の丸っこいウサギが奮闘していた。
 ガウェインも倒れて、シグマやニャルラもいない今の状況で主人であるメルヴィナを守ることができるのはワタアメだけなのである。
 ガウェインやシグマが修行しているときに、こっそりと自らも鍛錬を重ねていたワタアメは決死の思いで弱っちい魔物から二人の身体を守っていたのだ。
 ワタアメが戦っていたのは、先ほどのフォルトゥナや邪神教の人狼たちのような「精鋭」に比べるとモブ以下の「野良犬」のような取るに足らない魔物たち相手ではある。
 しかし、小さな狼のような魔物でも気絶している二人を食うことくらいは容易い。

「もきゅ!」

 ワタアメは襲い掛かる野犬の群れを持ち前の素早さで翻弄して、的確に急所を狙って体当たりしていく。
 激突する彼女に「ガフッ」と間抜けな声をあげて野良犬が次々と倒れていった。
 全身に魔力を込めて高速で体当たりするワタアメは、メルヴィナ達のような人型が魔力を手に込めてパンチするのと似たような効果を発揮する。
 この場で動ける唯一の隊員として力を振り絞って、ドッジボールの様に次々と犬を処理していくワタアメであった。

「あっ!パパ!!あれはワタアメちゃんニャ!!」

 ワタアメが奮闘する中、遠くから聞きなれた猫の声が聞こえてきた。
 森の奥の方から現れたのは、作戦のために一時離脱していたシグマとニャルラの獣人親子である。
 どうやら、フォルトゥナが結界を解いて敗走したことにより、シグマたちの方に向かった他の四天王たちも解散になったようであった。
 倒れ伏すメルヴィナとガウェインを見たニャルラ達は、急いで二人の元へと駆ける。

 そして、犬達の死体が多数転がる中でその様子を見ていたワタアメは安心したのか「もきゅ……」と小さく鳴いて気絶するのであった。
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