幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第66話 みんなの魔王妃メルヴィナちゃん

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 政治経済部の大部屋を後にした私は、ある目的のために魔王城の広い廊下を歩いていた。
 細く綺麗な脚が向かうその先は「第二訓練場」であり、ある目的とは「魔王妃の実力向上」である。

「さて、魔王妃の実力向上とは言ったものの本当に強くなんてなれるのかしらね……」

 魔王とアドルから伝えられた命令に対して半信半疑の私。
 魔王妃である自らの実力向上は、大戦準備期における私に与えられたミッションである。
 先ほどの魔王たちとのやり取りで出てきた「私も強くなる」という発言は、その場で思いついた言葉ではないということだ。
 私に与えられた任務というのは「魔王軍非常事態宣言」によって決まった行動指針に深く関係しているのである。
 シグマやガウェインのような武闘派には「調査」「殲滅」、アリシアやスターチアのような文官タイプには「外交」「軍事」といった任務が与えられたのだった。
 
「そして、私や一部の魔物には「魔王妃の訓練」が任務として与えられたのよね……」

 やれやれといった感じで独り言ちながらだだっ広い廊下の真ん中を歩く。
 こうして小さな私が中央を堂々と歩いていると、過去に廊下の端っこを歩いていたところをアドルに注意されたことを思い出す。
 魔王軍宰相である彼に「魔王妃様は威厳を示すために廊下の真ん中を歩いてください」と言われたのだ。
 魔王と並び立つ魔王妃は、下々の者から崇められる存在なのでそうする必要があるのだとか。
 そんなことを考えながら歩いていると「魔王妃様!お勤めご苦労様です!」とすれ違う魔物達に声を掛けられる。
 リスのような小さな魔物から、私よりも遥かに大きいトカゲのような魔物まで次々と挨拶してくるのだった。
 私はその一つ一つに丁寧に声をかけながら廊下を進んでいく。
 
「しかし、魔物たちも大分私に慣れたみたいね」

 魔王城に来たばかりの頃は「小さな魔王妃」といえど、やはり相当に畏れ多い存在として認知されていたらしくなかなか魔物たちの反応も硬いものであった。
 だが、この頃は魔王妃メルヴィナのフレンドリーで温かい対応が魔物達からも好評であるらしく大変喜ばしい。
 中には「メルヴィナ様のためなら死ねる」といった狂信者のような魔物まで出始めてきているらしく少々困惑する私である。
 私が声をかけると「異常に張り切って結果を出す魔物」が最近増えているという話をアドルに聞いたときは、驚きを通り越して少し呆れてしまった。
 とはいえ、徐々に私という存在が魔王軍全体で認められつつあり、魔王妃として順調に成長しているということである点は素直に喜べることである。

「もきゅ!もきゅ!」

 活気に満ちた大戦準備期の廊下を歩いていると、進行方向の曲がり角からワタアメが現れてこちらへ走ってくる。
 近頃は文官の事務仕事の手伝いをしていた私は日中にワタアメと触れ合う機会が少なかった。
 昼間に会うのは久しぶりだったので、嬉しそうな様子のワタアメは妙に私に甘えてくる。

「こらこら、私はこれから「訓練」に行かないといけないから」

 口では注意しながらも、腕の中で幸せそうにくっついてくるワタアメに悪い気はしない。
 ただ、この子もどうやら「訓練」についてくる気でいるらしく、私の腕から離れる様子はなかった。
 まあ、ワタアメがいても特に問題はなさそうだからいいだろう。
 そういうわけで、私はワタアメを抱っこしたまま「人狼のロキ」が待つ第二訓練場へと向かうのだった。


----


 第二部隊所属の軍人である「人狼のロキ」はとにかく「賢い」魔物であるという。
 そんなロキの魔物達からの評判は基本的に良いものが多かった。

「ロキ?あいつはすげえやつだよ」
「なんというか、2手3手先を読まれているというか……」
「とにかく組手の時とかもやりづらいんだよね」
「武闘家の癖に魔法も使えるなんてズルいよな」
「文官の僕らにも丁寧な対応で報告してくれるからありがたいよね」

 魔物達から聞いた彼の噂はこんな感じであり「理知的で魔王軍には珍しいタイプの魔物?」と私は思うのだった。
 魔物たちの評判も、私が訓練場にいる彼を見た時に感じた「荒々しさ」のようなものとは異なる意見が多いように感じる。
 ガウェインが以前ロキについて「攻撃に転じる際の踏み込みが異常に速い」と評価していたことからも、彼が武術に秀でたタイプであることは分かるのだが「魔法が得意」とか「文官からも好評」とかそういった点が良くわからなかった。
 直接ロキと話したことが未だない私は、彼がいったいどんな魔物であるのだろうかと想像を膨らませていく。

「まあ、会ってみたら分かるでしょうし、前評判は悪くないから大丈夫よね」

 私の何気ない一言に腕の中にいるワタアメも「もきゅ!」と肯定の一鳴きをあげる。
 私が何を考えているのかワタアメが分かっているのかどうかは知らないが、彼女の頭を撫でながら私は第二訓練場の門をくぐるのだった。
 
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