84 / 91
第77話 模擬戦の結果
しおりを挟む「くっ、結局俺たちの負けっすね……」
大戦期を生きた3人とロキの模擬戦は、結局ロキ達の負けという結果で終わった。
とはいえ、ラティスとロキが観客達に与えた衝撃という意味では、彼らも負けていない。
むしろ、戦闘の様子を見ていた観客達は皆「軍医さんの新作魔法ってやばくない……?」とロキ達の判定勝ちくらいに思っているのであった。
「とんでもない試合だったわねぇ……」
私は呆れ混じりに、試合を見終わっての感想を膝に抱えるワタアメへこぼしていた。
周囲で野次馬している兵士たちも模擬戦の終わりと同時に沸き立つ。
彼らも漸く模擬戦中のピリピリとした空気感から解放され、溜まっていた感情があふれ出したのだろう。
こんな凄まじい試合を見せられたら、武人でない私ですら興奮せざるを得なかった。
試合の流れを雑に要約すると「ロキが一人で頑張った」というものである。
ラティスの新作魔法が恐らく「身体強化」に分類される魔法であり、それを一身に受けたロキが猛者二人を相手取るという構図であった。
魔王軍の中でもそこそこ強いロキではあるが、オーキンスやドレイクといった大戦期の猛者に比べると下っ端としてカウントされる。
私に戦闘能力の高低はいまいちわからないけれども、猛者二人が全力で攻め続けても突破できない防御力を作れる魔法というのがとんでもないことだけは分かる。
ただ、魔法発動中にラティスが動けなくなるという弱点はあるが、それでも今回の模擬戦の結果を見るに「新作魔法」とやらは随分と凶悪な仕上がりであった。
「ぁぁ……全身が軋む……」
試合が終わり、ラティスの強化魔法が切れたロキは訓練場の中央に横たわって呻いている。
そんな彼を見た私は「代償が大きすぎる」というロキの言葉を思い出すのであった。
----
会場を興奮で沸かせた模擬戦は無事に終わり、野次馬兵士たちもトボトボと解散して持ち場へと戻っていった。
そして、訓練場には私たち4人とドレイク、人狼隊の部下たちというメンバーだけが残る。
「というわけで、さっき俺にかかっていた「強化魔法」を姫さんにかけます」
ラティスによって無理やり回復させられたロキが、申し訳なさそうな様子で私に言う。
先ほどの光景を見た後でのロキの宣告は、私に絶大なる恐怖感を与えるのだった。
あの強化魔法の原理は、自身の肉体エネルギーを消耗する代わりにラティスの魔力を使うといった仕組みになっているらしい。
つまり、ラティスが乾電池のような役割を果たし、ロキは本来の数倍の出力を常に維持し続けられるというチート技であったというわけだ。
「これなら寝なくても死なないし、短期間で強くなれるよ魔王妃様、やったね!」
これから始まる地獄の訓練を想像する私を見て、ニコニコと楽しそうに喋るラティス。
そもそも私が弱っち過ぎて、多少の訓練ではどうにもならないと判断したラティスはある作戦を考えていたのだ。
その究極の訓練方法というのが「24時間戦う」という恐ろしい方法である。
どうやら、魔王軍に労働基準法など存在せず、魔王妃である私に人権など存在しない模様であった。
「ちょっとまって!その方法には欠陥があるわよ!!」
このままだと全身を酷使されて廃人になってしまうと、かつてないほどの危機感を覚えた私はラティスの作戦に指摘するのだった。
彼の言う「24時間戦う」作戦というのには重大な欠点があるのである。
少し考えればわかることなのだが、私が24時間動き続けるということは、術者であるラティスも同様に24時間絶え間なく魔法をかけ続ける必要があるのだ。
それに加えて、術中は動けないラティスの代わりに私を訓練づける教師役も必要である。
つまり、そもそもこの訓練法の設定に無理があるのだ。
私は「これ無理よ!!」と必死のアピールを見せる。
「いや、ラティさんなら大丈夫ですよ姫さん。教師役も俺と料理長が交代でやるんでなんとかなります」
私の提案を無慈悲にも却下し、ラティスなら一週間くらい魔法を使い続けても大丈夫だというロキ。
彼の言い分を聞いていたドレイク隊長も「訓練の合間に我も協力できるぞ」と楽しそうにしている。
そんなドレイクとオーキンスは「アルテミシア殿との戦闘訓練も久しぶりだなあ!」と思い出話で盛り上がっていた。
ああ、これはもう逃れられない……。
「それじゃあ魔王妃様、早速訓練を始めてみようか」
こうして、魔王妃の訓練が漸くはじまるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー
高井繭来
恋愛
ルーシュ・サウザント・ドラゴニアは公爵家の第8子だった。
武で名をはせたドラゴニア家には上に7人の姉。
待望の男児が生まれなかったドラゴニア公爵はルーシュを男児として育てる。
男として育てられたルーシュは剣と魔法の才能を発揮し12歳にして国家聖騎士団の一員となり功績を積むが、父より届いた手紙で全てを失う。
『待望の男児が生まれたから明日から女として生きろ』
こうしてルーシュは神殿仕えの身となって聖女の侍女となった。
ウザい聖女に絡まれながらもルーシュは今日も侍女としても務めを果たす。
侍女として働く一方で魔獣の王都侵入を防いだり、曲者の親友が家出してきたせいで何故か大帝国の王子に見初められたりと第2の人生は波乱万丈だった。
※聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~とリンクしています。
※ちょっぴり題名変えました。
カテゴリ【恋愛】に変えました。
ファンタジーだけど恋愛が中心になってきてしまったので(;^ω^)
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる