幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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番外編7 人狼ロキとラティスの打ち合わせ

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 俺は第2部隊の人狼小部隊を率いる小隊長のロキ。
 この度の大戦準備期に「大役」を仰せつかうこととなった。
 俺が請け負った魔王軍の命運を分けるほどの大仕事とは「魔王妃の訓練」である。
 そんなに大した仕事ではないように思えるかもしれないが、魔王軍という生命体の性質的に考えると「重大」な任務なのである。
 魔王と魔王妃で一対の『魔王軍』はどちらか片方でも欠けてはいけない。
 だから、俺に与えられた役割ってのは魔王軍存続にそのまま直結するわけだ。

「しかし、あのチビッこい姫さんが大戦期を戦い抜けるようにするって……」

 これまた、とんでもない無理難題をあたえられたものである。
 ロキのイメージでは、今期の魔王妃は「小さい子供」であり「戦乙女」といった印象は微塵もなかった。
 魔王妃歓迎の儀では「邪悪な魔力」を噴出させていたが、あれは「アルテミシア」の魔力が漏れ出していただけだ。
 だから、魔王妃自体は碌に戦闘能力をもたない「入れ物」のようなものだと考えているわけである。
 しかし、先日の「山越え遠征」を指揮したり「文官の仕事」をこなしたりする様を見るに「知能は申し分ない」ようだ。
 加えて下々の魔物達まで届く「細やかな気配り」は確かに魔王妃の器ではあるとロキも認めていた。

「とはいえねえ、戦闘能力は別だからねえ……」

 なんならみんなで魔王妃様を護衛し続ける方が楽なのではと思うくらいに、ロキは頭を悩ませるのであった。


----

 大戦準備期で調査任務に出かけている部下たちが欠けているとはいえ、残った人員で日々の訓練をこなしていたロキ。
 そんなロキは隊員の怪我治療のための薬剤などを求めに、医務室のラティスの元を訪れていた。

「はあ……」
 
 もともと知能が高く、あれこれと考えて悩みを抱えることの多いロキがため息を吐いた。
 そんなロキをよく見ているラティスは「今度はどうしたんだいロキ君」と優しく問いかける。
 男二人の空間であっても、お兄さんのような雰囲気は変わらないラティス。
 
「姫さんの訓練って具体的に何をやればいいんですかねぇ……」

 ロキとしても「近接戦闘」と「魔力操作」の2点が重要かつ必須な能力であることは理解している。
 だが、これはもともとある程度の「戦闘能力」があっての話であることも分かっていた。
 いくら接近戦のトレーニングをしたりコツを教えたとしても、本人の腕力が足りていなければどうにもならないからである。
 たとえるなら、武道を嗜む人間が百獣の王ライオンに勝てるかと言われるとかなり怪しい。
 武道とかそれ以前の問題なのである。
 かといって、コツコツと訓練を積み重ねている時間もないのだ。
 しかし、ロキの悩みに対してラティスはなんでもないといった様子でこたえるのだった。

「魔王妃様にはあるじゃない、とんでもない武器が」

 ラティスはメルヴィナの中に潜む「アルテミシア」を最大限生かせばいいと答える。
 ロキもメルヴィナがアルテミシアであることは知っていたし、先日の報告会で邪神教の四天王の一角を圧倒したという話も聞いている。
 だから、それを生かすための「体力増強」と「魔力操作精度の向上」がやるべきことだということも理解している。
 そしてロキがそれを分かっていることもラティスはもちろん知っている。

「俺としてはどっちにも成果が直結する『歩行術』の訓練をメインにやろうと考えてるんですがねえ……」

 もともと高知能で効率的に部隊を強化する能力が評価されているロキは、ここでも短時間で最高の成果を上げるべく策を練っていた。
 だが、如何せん時間が足りなすぎるのでこうして悩んでいるのである。

「ふうむ、ロキ君らしく100点満点の解答だね」

 いつもの賢い人狼に対して笑顔で褒めるラティスであった。
 だが、表情を真面目なものに一変させたラティスは「でも、100点じゃたりないもんね」と少し考える素振りを見せる。
 そして、壁にかかった自分の予定表みたいなものを少し見たラティスは「よし、俺も協力するわ」と手を合わせた。
 そんなラティスを見たロキは「えっ?」と一瞬困惑するのだが、悪い顔をしたラティスを見て何か察する。


「あるじゃないの、訓練の時間を何倍にも増やす禁じ手が」


 ロキはその時、大戦期の記録に残る「24時間戦い続けた」という言葉を思い出して嫌な汗が出るのだった。
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