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しおりを挟む「レイさん、お待たせしてしまってすいません。今日はよろしくお願いします」
「待っていないから気にしないで。じゃあ、行こうか」
レイさんが優しく笑い、エスコートする。その辺を見ると、慣れているのだと感じる。
「どうかした、リーナ?」
「あ、いえ。レイさん、慣れてるなぁ、と思って」
私の返答にレイさんは目を丸くした。そんなに驚くようなことだっただろうか。
「そっか。そう見えるなら良かった、のかな?実を言うと、かなり緊張してたんだ。俺もこういうのは初めてだったからさ」
レイさんが、少し恥ずかしそうに笑った。それに引きずられるように、私も笑う。
そんなことが、貴族であった時にはなくて、新鮮に思えた。お父様やお母様には申し訳ないけれど、私は今の生活の方が断然好きだ。毎日が新鮮で、楽しい。
「少し、意外です」
「俺も人間だし、緊張くらいするからね?」
私の言葉が足りなかったのか、レイさんは勘違いしたようで、苦笑していた。
「あっ、いえ!レイさん、優しいじゃないですか。私にも親切にしてくれますし。だから、こうして案内するの慣れてるのかなって思っていたので」
「あぁ、そういうことね。リーナが思ってる程、俺は優しくも親切でもないけどね」
そういうことを自分から言うあたり、やはりレイさんは優しい人だと思うし、少なくともあのどこかの王子よりは断然マシだ。
「あ、そういえば行きたいところとかある?」
「えっと、じゃあお茶を売っているお店があれば行きたいです」
「お茶ね、了解。じゃあ、先に行こうか。ここから近いしね」
レイさんに案内された店は、こじんまりとした店だった。看板すら出ていないところだったし、よくレイさんはこの店を知っていたものだと関心すらする。しかも、揃えられているお茶を見れば、どれも一級品だ。平民が手の届くものではない。それに、店の中がお茶の香りでいっぱいだ。こんなにも多くのお茶があるのに、よく香りが喧嘩しないものだと思う。
「小僧、また来たのか。そっちの嬢ちゃんは?」
「久しぶり、シルじい。こっちはリーナ。今日は、リーナがお茶を探してるみたいだったからさ。リーナ、この頑固そうなのがここの店主でシルじいって呼ばれてる」
「シルドラだ。悪いが、嬢ちゃん。ここの茶はワシが認めた奴にしか売らん」
確かに、頑固そうだ。でも、それだけこの人がお茶を好きなのだということだろう。そして、この店のものが、自分の選んだお茶が一番であると信じているからこその言葉なのだと思う。だとするのなら、この店の看板が出ていなかったことにも納得できる。何故、レイさんがこの店に私を連れてきたのかは分からないけれど。
「が、まあ小僧が連れてきたなら大丈夫だろう。嬢ちゃん、何にする?」
「えっと、じゃあレーニット産のお茶はありますか?なければ、ミハーム産のお茶をください」
「ほう、レーニット産か。珍しいもんを探してるもんだ。他の店じゃ、中々置いてねぇだろ。ま、うちにはあるがな。ちょっと待ってろ」
シルドラさんは関心したような、それでいて驚いたような表情をしたが、すぐに自信に溢れた笑みを浮かべ、奥に入っていった。
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