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6.かえろう
しおりを挟む――こいつ、《触手》だ。
いや、それはわかりきった事実だ。
名乗られてもいないし「俺が触手だ」とも言われていないが、この状況下でこの男が触手だと思わない方がどうかしている。
そうではなく、ヒノキが感じたのは《人間》であっても、《言葉が話せても触手は触手だ》と言いたいのだ。
やることは大胆かつ強引だし、見た目も派手。
なのに、ヒノキの言葉や態度に対してものすごく敏感で、まるで嫌われるのを恐れているように気遣う。
そんな触手相手だから、無理やり犯されてもあのトイレに通いつめたのだと思う。
これが人間だったら、ヒノキは絶対にいかなった。
というか最初の時点で、しかるべき場所に通報している。しゃべらないからいいんだ、と思っていたけど、そうでもないらしい。
『やっぱり、ダメか……?』
明らかに沈んだ声で触手は呟く。
黙っていれば、海外雑誌の表紙を飾っていそうな色男なのに、今は殴られた子犬のようにしゅんと落ち込んでいたので、ヒノキは慌てて「違う違う!」と訂正した。
「ダメじゃない! 驚いたんだ!」
『……』
「その……なんていうか、人間になれるんだな……思ったより格好良くて、驚いた」
本当は思ったよりどころではないのだが。
先ほども言ったように、まず海外雑誌の表紙飾れるレベル。つまり、世界水準で見ても上位に食い込むレベルの顔面だ。
髪の色や、瞳の色がやや人間離れしてはいるが、そんなところも異世界ファンタジー系がバズりまくっている昨今の世の中では全然許容されそうだし、なにより、やっぱり顔がいい。
顔が良いとなんでも許されるというのが不思議だ。
いや、こいつの場合顔だけでなくてスタイルもいいが。
『――俺タチは、自在に姿カタチを変えられる。動物にも、人間二も。種族はある程度限られるガ……』
そこで、触手はいったん言葉を区切り、ヒノキをみた。
『――ヒノキ、は、人間がキライなのではなかったのか…?』
「え……」
なんてことだ。
バレていたのか……じゃない。
そんな風に、触手から見ても思われていたのか。
たしかに、人間か好きか嫌いかと言われれば、多感な年頃の自分としては答えに窮するのだが――だからと言って、《人外だから好きになる》という発想もおかしいな、と頭を抱えそうになっていると、触手がずずいとせまってきた。
『ダカラ、俺はニンゲンにだけはなりたくなかった』
「へ?」
『ヒノキに、キラわれたくなかった。だが、ズット一緒にいるたタメには、どうしてもニンゲンになりたかった』
「お、おまえ、それ………」
世間一般では《告白》って言うんだぞ!?
顔が赤くなるのを止められない。
触手はいたって真面目で、当り前のように言うがヒノキにとっては生れてはじめての告白に戸惑いを隠せない。
これならやらしさたっぷりに襲われた方がまだマシだよ!!
「ちょっと待て!」
唇が触れそうなほど近づいてから、ようやくヒノキが触手を制止する。
「こ、ここじゃなんだし、いったん帰ろう? それに、あの、俺達………」
二人とも全裸だし。
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