あなたはいつも独りぼっち。

adama

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プロローグ

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よく晴れた4月のある日。

俺、難波 健人はガタガタと音を立てるタクシーの、小刻みに揺れる車窓をぼーっと眺めて、
入学式より1週間遅れて、私立 立修高校に通い始めることとなった。

正直、立修高校に入学できるとは思わなかった。

自分の学力は自分が一番よくわかっている。

サッカーばかりしていた俺は、『勉強できるよね』なんて言われたことは1度もなかった。

中学生最後の試合、いわゆる引退試合を終えた後に通い始めた塾でたまたま目にした、立修高校のポスターに目を奪われて、『ここに通いたい!』と思ってからは死に物狂いで勉強に取り組んだ。

進学校と言われている立修高校に難波健人が通うことになるなんて、俺を長らく知っている人からすればビッグサプライズだっただろう。

・・・とにかく、そんな風にして期待に期待を重ねて待ちわびた高校生活が遅れることになった俺の心情は少し複雑なわけで。

正直、人付き合いは苦手じゃない。むしろ得意だし、コミュ力は平均以上はあるのかな、という自信と、

高1の入学から1週間遅れるのはデケェよ・・・もうグループとか出来上がって馴染めねーんじゃないの? なんていう不安が入り混じって、あまり経験することのない気持ちになっている。



「お兄さん、脚、平気かい?」

それまで沈黙を守り続けていた運転手のおじさんが首を捻り、ギブスで覆われた俺の右足をチラッと見た。

「あぁ、全然大丈夫ですよ! 運転手さんが安全運転してくれてるんで!」

「ハハハ、お兄さんイケメンだから最初は意地悪してやろうと思ってたんだけどねぇ」

「えっ!? 勘弁してくださいよ~!」

こんな風にいい感じのラリーをクラスでもできればいいなぁ、なんて考えつつ運転手さんと談笑する。

俺の入学が1週間遅れた原因はまさにこの右足の骨折のせいなのだ。
高校入学を前日に控えた日の朝、バスに乗って友達と遊びの待ち合わせの場所に向かおうとしていたら、
そのバスが運悪く事故って、右足を骨折する事態にまで陥ってしまったのだ。

・・・この話は思い出したら暗くなっちゃうからやめよう。
今思い出すことじゃねーや。


「あ、着いたよー!」

運転手さんとのお話が、彼の高校時代のモテモテ武勇伝に差し掛かり始めた頃、立修高校に着いた。

「お話楽しかったです! ありがとうございましたー!」

運転手さんにペコリと頭を下げ、タクシーを降りる。
慣れていない松葉杖でバランスをとることに苦戦し、少し体が左に寄るが持ち直してしっかりと立つ。

眼前に広がるのは、あれほど憧れた立修高校。

天気のいい春の日。桜も満開。

これからの俺の高校生活を占うみたいだ、なんて思いながら、校門をゆっくりくぐった。
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