98 / 138
第五章 王宮の花
世継ぎの子
「……お前には、謝らなければならないことばかりだ」
走り続けたかのような息がやっと整うころ、後ろからぴたりと体を寄せたジハードが、鼻先をシェイドの髪に埋めて囁いた。
長く溺れた絶頂からまだ醒めやらぬシェイドは、陶酔に浸りながらその言葉を聞く。
「初めて会った時から、お前の意に沿わぬことばかりを強要してきた。それなのに、お前に愛されたいのだと言ったら、虫のいい話に聞こえるだろうな」
背後から回された手は、シェイドの身体をゆるゆると愛撫し続ける。下腹の熱がまた高まってくるのを感じながら、シェイドは小さく首を振った。
薬の効き目も少しは抜けてきているようで、まだまだ力は入らないが少しは動ける。
「愛、して……いま、す……」
縺れる舌を動かして、一語一語言葉を紡ぎ出す。
大切なことだからきちんと伝えたい。そう思うのに、悪戯なジハードの手が体の奥に燻る熱を煽るので、息が乱れて掻き消されてしまいそうになる。
「貴方、を……あぁ、愛して、います……ッ」
男の部分を掌に包み込まれて、シェイドは腰を揺らした。
収まりつつあった熱がまたぶり返してきた。
腰に当たるジハードの昂ぶりも同じように勢いを取り戻している。それを感じると、もう我慢ならなかった。
あれほど激しく愛でられたというのに、この肉体は怖ろしいほど貪欲で、満足というものを知らない。
果てて果てて気を失いそうだったのが嘘のように、ジハードの精を溜めた蜜壺がまた口を開いた。
もう一度味わいたい。
ジハードの情熱が自分に向けられていることを全身で感じ取りたい。
シェイドは恥じらいに血を上らせながら、腰をそっと後ろに突き出した。
柔らかい肉と肉の狭間に硬いジハードの牡が挟まり、硬くなった先端が入り口に触れる。
誘うように腰を動かすと、逞しい凶器の先が肉環に食い込んで、それだけで軽く達しそうだ。
ジハードの手に包まれた男の部分が欲望の強さを示して硬く凝った。
「シェイド……」
耳朶に唇をつけて、ジハードが名を呼んだ。
溢れるほどに精を吐き出したジハードも、まだ満足には遠かったようだ。上になった方の膝を曲げられ、腰を後ろに引かれる。
「……あ……ああぁ……」
逞しいジハードの牡が肉環を割って入ってきた。結合が深くなるように腰骨を掴んでグッと引き寄せられる。
太く長い肉棒に奥まで一気に貫かれて、シェイドは切ない善がり声を上げた。
体の中がジハードで一杯に満たされている。
息も詰まるほどの圧迫感さえ、ジハードの想いの大きさのように思えて堪らない心地になる。
シェイドを抱きすくめたジハードが後ろから囁いた。
「……一年、我慢してくれ。一年経って無理ならば、俺が何とかする」
「……え……ぁッ!?」
何の事を言っているのかと問いかけようとするより早く、シェイドを後ろから抱いたジハードが体を返した。
身の内深くを貫かれたまま、仰向けに寝たジハードの上に仰臥する形を取らされる。
その姿を恥じる暇もなく、寝台脇の小卓に伸びたジハードの手が呼び鈴を鳴らした。
「ジ、ハード……!」
侍従を呼べば、繋がっている姿を見られてしまう。
何もかもをあられもなく曝け出すような、こんな淫らな姿でいるところを。
咎めるように後ろを振り返ろうとしたシェイドは、寝室に入ってきた人物を見て、冷水を浴びせられたように息を呑んだ。
「フィオナ……」
入ってきたのは侍従ではなく、ジハードの奥侍女となった小柄な少女だった。
甘い夢から唐突に叩き起こされて、苦い現実がシェイドの目の前に迫ってきた。
王である以上、ジハードは後継者となる王子を得なければならない。
白桂宮に戻るための条件として、妾妃を迎えるようにと進言したのはシェイド自身であり、そのためにヴァルダンが送り込んできたのがこのフィオナだ。
シェイドも頭では分かっている。
唯一無二の存在だと誓い合っても、それは現実には叶わぬ願いだ。
ジハードは王で、そして自分は男なのだから。
けれど、こんな形で目の前に突き付けられたくはなかった。
フィオナを抱くのならば、せめて自分の知らないところで抱いてほしかった。
「王兄殿下……」
フィオナは戸惑いを見せながらも、寝台の方に近づいてくる。
ガウンを纏った彼女は、下に何も身に着けていないようで、襟の袷から柔らかそうな胸の膨らみが見えた。
シェイドの羞恥と困惑が混じり合った顔を見ると、彼女は意を決したように、二人が横たわる寝台の上にあがってきた。
「離して、ください……私は、出て、いきます……!」
フィオナが来たのなら自分は寝台を出ていく。ジハードが女を組み敷くところなど、見たくも聞きたくもない。
まだ自由にならない手足で腕の中から逃れようとするシェイドを、ジハードは後ろから拘束した。
「駄目だ、シェイド。このフィオナは俺ではなく、お前の奥侍女なのだからな」
背後からシェイドを捕らえたジハードが、苦渋に満ちた声で告げた。
耳を疑うような言葉が続く。
「ウェルディス直系の血をこの女の腹に残してもらうぞ、シェイド。子を孕めば俺の妾妃として迎え、生まれた子は俺の子として王位を継がせる。この国の王統はお前の子が継いでいくんだ」
神をも畏れぬジハードの言葉に、シェイドの喉が干上がった。
確かに、フィオナがジハードの子を孕むところは見たくないと思った。
自分以外の誰にも触れて欲しくないとも思っている。
けれど、こんなことは許容できない。
宮内府や民をも欺いて、国王以外の子に王位を継がせるなど。
それ以前に、女を抱くことなど自分にできるはずもない。
「……な、りませ……そんな、大それ、た……ッ」
「いいや。これが先王の長子として生まれたお前の、果たすべき役割だ」
ジハードの言葉を受けて、少女も幼さの残る顔を赤く染めながら頷いた。
まだあどけない少女だとばかり思っていたのに、まっすぐにシェイドを見つめる目は別人のような意志の強さを秘めていた。
「私は初めから、陛下ではなく王兄殿下にお仕えするために王宮へ来たのです。数ならぬ身ですが、殿下をお慕いしております。どうか私に貴き血のお情けを、そして金の髪を持つ健やかな男児をお授けくださいませ……」
「フィ、オナ!」
ガウンの裾を捌いて、少女がシェイドの身体を跨いだ。滑らかな白い素足がガウンの裾から零れ出る。
シェイドは竦み上がって、助けを求めるように背後の国王を振り返った。
どうしてサラトリアが地方領主の娘に過ぎないフィオナを王宮に送り込んできたのか、その本当の理由がやっとわかった。
健康な体も明るい性格も二の次だった。
白い肌に蜂蜜色の金髪、榛色の瞳を持つフィオナからは、北方人風の外見を持つ王子が生まれても不自然ではない。だから、彼女が選ばれた。
サラトリアとジハードは初めから彼女をシェイドに引き合わせるつもりでいたのだ。
口実を作っては頻繁に白桂宮に出入りさせ、シェイドと彼女が親密になるように計らった。
フィオナを前にした時のジハードが常に不機嫌そうだったのも道理だ。ジハードにとって、フィオナは愛妾ではなく恋敵だったのだから。
「だ、めです……ッ、こんなこ、と……!」
こんな企みに加担してはならない。王子の出自をすり替えるなど、もってのほかだ。
だが、頭でいくらそう思っても、昂ぶりは既に弾けそうなほどの熱を溜めている。
後孔にジハードの牡を呑み、屹立は萎えぬように手で嬲られていた。薬が残る体は怠く、ジハードの拘束を解いて逃げる余地はない。
温かい女の肉が包み込むように降りてきた。
「王兄殿下に、純潔を捧げます……ッ」
「…………ッ!」
呑まれていくシェイドの屹立を、ジハードは昏い瞳で見据えていた。
手足を押さえつけ、深々と収めた肉棒でシェイドの戸惑いと緊張を直に感じ取りながら、女に操を奪われる伴侶の姿を目に収める。
腹に溜めた怒りが大きすぎて、目を逸らすことさえできないのだと言わんばかりに。
一年を耐えよとジハードは言ったが、耐えるのはむしろ自分の方だろう。
女の味を知ったシェイドが、ジハードに抱かれることを拒むようになる可能性もある。
だが、それでもジハードはシェイドの子を得たいと願った。
王子でも王女でもいい。シェイドに面差しの似た明るい髪の子をこの腕に抱きあげたい。
そして自分が築き上げたすべてをその子に譲り渡すことで、シェイドへの贖罪としたいのだ、と。
「……俺自身が決めたこととはいえ、はらわたが煮え返りそうだ。せめて一日でも早く、王子をこの手に抱かせてくれ」
忌々しそうな声がシェイドの耳朶を犯す。
体を下ろしきって、苦し気な息を吐いたフィオナが、意を決したように体を動かし始めた。
「王兄殿下……貴方様のお子を」
「シェイド、お前の子をこの手に」
三人分の重みを受けて、寝台が密やかな軋みをあげた。肌を叩く音と粘るような水音がそれを掻き消す。
「……い、や……いやです……こんな、ッ、こんなこと……!」
拒絶の声は喘ぎに紛れ、やがて身も世もない啜り泣きへと変わっていく。
途切れ途切れの哀願も甘い悲鳴に。
――やがてそれは、掠れて尾を引く悦びの声へと変わっていった。
走り続けたかのような息がやっと整うころ、後ろからぴたりと体を寄せたジハードが、鼻先をシェイドの髪に埋めて囁いた。
長く溺れた絶頂からまだ醒めやらぬシェイドは、陶酔に浸りながらその言葉を聞く。
「初めて会った時から、お前の意に沿わぬことばかりを強要してきた。それなのに、お前に愛されたいのだと言ったら、虫のいい話に聞こえるだろうな」
背後から回された手は、シェイドの身体をゆるゆると愛撫し続ける。下腹の熱がまた高まってくるのを感じながら、シェイドは小さく首を振った。
薬の効き目も少しは抜けてきているようで、まだまだ力は入らないが少しは動ける。
「愛、して……いま、す……」
縺れる舌を動かして、一語一語言葉を紡ぎ出す。
大切なことだからきちんと伝えたい。そう思うのに、悪戯なジハードの手が体の奥に燻る熱を煽るので、息が乱れて掻き消されてしまいそうになる。
「貴方、を……あぁ、愛して、います……ッ」
男の部分を掌に包み込まれて、シェイドは腰を揺らした。
収まりつつあった熱がまたぶり返してきた。
腰に当たるジハードの昂ぶりも同じように勢いを取り戻している。それを感じると、もう我慢ならなかった。
あれほど激しく愛でられたというのに、この肉体は怖ろしいほど貪欲で、満足というものを知らない。
果てて果てて気を失いそうだったのが嘘のように、ジハードの精を溜めた蜜壺がまた口を開いた。
もう一度味わいたい。
ジハードの情熱が自分に向けられていることを全身で感じ取りたい。
シェイドは恥じらいに血を上らせながら、腰をそっと後ろに突き出した。
柔らかい肉と肉の狭間に硬いジハードの牡が挟まり、硬くなった先端が入り口に触れる。
誘うように腰を動かすと、逞しい凶器の先が肉環に食い込んで、それだけで軽く達しそうだ。
ジハードの手に包まれた男の部分が欲望の強さを示して硬く凝った。
「シェイド……」
耳朶に唇をつけて、ジハードが名を呼んだ。
溢れるほどに精を吐き出したジハードも、まだ満足には遠かったようだ。上になった方の膝を曲げられ、腰を後ろに引かれる。
「……あ……ああぁ……」
逞しいジハードの牡が肉環を割って入ってきた。結合が深くなるように腰骨を掴んでグッと引き寄せられる。
太く長い肉棒に奥まで一気に貫かれて、シェイドは切ない善がり声を上げた。
体の中がジハードで一杯に満たされている。
息も詰まるほどの圧迫感さえ、ジハードの想いの大きさのように思えて堪らない心地になる。
シェイドを抱きすくめたジハードが後ろから囁いた。
「……一年、我慢してくれ。一年経って無理ならば、俺が何とかする」
「……え……ぁッ!?」
何の事を言っているのかと問いかけようとするより早く、シェイドを後ろから抱いたジハードが体を返した。
身の内深くを貫かれたまま、仰向けに寝たジハードの上に仰臥する形を取らされる。
その姿を恥じる暇もなく、寝台脇の小卓に伸びたジハードの手が呼び鈴を鳴らした。
「ジ、ハード……!」
侍従を呼べば、繋がっている姿を見られてしまう。
何もかもをあられもなく曝け出すような、こんな淫らな姿でいるところを。
咎めるように後ろを振り返ろうとしたシェイドは、寝室に入ってきた人物を見て、冷水を浴びせられたように息を呑んだ。
「フィオナ……」
入ってきたのは侍従ではなく、ジハードの奥侍女となった小柄な少女だった。
甘い夢から唐突に叩き起こされて、苦い現実がシェイドの目の前に迫ってきた。
王である以上、ジハードは後継者となる王子を得なければならない。
白桂宮に戻るための条件として、妾妃を迎えるようにと進言したのはシェイド自身であり、そのためにヴァルダンが送り込んできたのがこのフィオナだ。
シェイドも頭では分かっている。
唯一無二の存在だと誓い合っても、それは現実には叶わぬ願いだ。
ジハードは王で、そして自分は男なのだから。
けれど、こんな形で目の前に突き付けられたくはなかった。
フィオナを抱くのならば、せめて自分の知らないところで抱いてほしかった。
「王兄殿下……」
フィオナは戸惑いを見せながらも、寝台の方に近づいてくる。
ガウンを纏った彼女は、下に何も身に着けていないようで、襟の袷から柔らかそうな胸の膨らみが見えた。
シェイドの羞恥と困惑が混じり合った顔を見ると、彼女は意を決したように、二人が横たわる寝台の上にあがってきた。
「離して、ください……私は、出て、いきます……!」
フィオナが来たのなら自分は寝台を出ていく。ジハードが女を組み敷くところなど、見たくも聞きたくもない。
まだ自由にならない手足で腕の中から逃れようとするシェイドを、ジハードは後ろから拘束した。
「駄目だ、シェイド。このフィオナは俺ではなく、お前の奥侍女なのだからな」
背後からシェイドを捕らえたジハードが、苦渋に満ちた声で告げた。
耳を疑うような言葉が続く。
「ウェルディス直系の血をこの女の腹に残してもらうぞ、シェイド。子を孕めば俺の妾妃として迎え、生まれた子は俺の子として王位を継がせる。この国の王統はお前の子が継いでいくんだ」
神をも畏れぬジハードの言葉に、シェイドの喉が干上がった。
確かに、フィオナがジハードの子を孕むところは見たくないと思った。
自分以外の誰にも触れて欲しくないとも思っている。
けれど、こんなことは許容できない。
宮内府や民をも欺いて、国王以外の子に王位を継がせるなど。
それ以前に、女を抱くことなど自分にできるはずもない。
「……な、りませ……そんな、大それ、た……ッ」
「いいや。これが先王の長子として生まれたお前の、果たすべき役割だ」
ジハードの言葉を受けて、少女も幼さの残る顔を赤く染めながら頷いた。
まだあどけない少女だとばかり思っていたのに、まっすぐにシェイドを見つめる目は別人のような意志の強さを秘めていた。
「私は初めから、陛下ではなく王兄殿下にお仕えするために王宮へ来たのです。数ならぬ身ですが、殿下をお慕いしております。どうか私に貴き血のお情けを、そして金の髪を持つ健やかな男児をお授けくださいませ……」
「フィ、オナ!」
ガウンの裾を捌いて、少女がシェイドの身体を跨いだ。滑らかな白い素足がガウンの裾から零れ出る。
シェイドは竦み上がって、助けを求めるように背後の国王を振り返った。
どうしてサラトリアが地方領主の娘に過ぎないフィオナを王宮に送り込んできたのか、その本当の理由がやっとわかった。
健康な体も明るい性格も二の次だった。
白い肌に蜂蜜色の金髪、榛色の瞳を持つフィオナからは、北方人風の外見を持つ王子が生まれても不自然ではない。だから、彼女が選ばれた。
サラトリアとジハードは初めから彼女をシェイドに引き合わせるつもりでいたのだ。
口実を作っては頻繁に白桂宮に出入りさせ、シェイドと彼女が親密になるように計らった。
フィオナを前にした時のジハードが常に不機嫌そうだったのも道理だ。ジハードにとって、フィオナは愛妾ではなく恋敵だったのだから。
「だ、めです……ッ、こんなこ、と……!」
こんな企みに加担してはならない。王子の出自をすり替えるなど、もってのほかだ。
だが、頭でいくらそう思っても、昂ぶりは既に弾けそうなほどの熱を溜めている。
後孔にジハードの牡を呑み、屹立は萎えぬように手で嬲られていた。薬が残る体は怠く、ジハードの拘束を解いて逃げる余地はない。
温かい女の肉が包み込むように降りてきた。
「王兄殿下に、純潔を捧げます……ッ」
「…………ッ!」
呑まれていくシェイドの屹立を、ジハードは昏い瞳で見据えていた。
手足を押さえつけ、深々と収めた肉棒でシェイドの戸惑いと緊張を直に感じ取りながら、女に操を奪われる伴侶の姿を目に収める。
腹に溜めた怒りが大きすぎて、目を逸らすことさえできないのだと言わんばかりに。
一年を耐えよとジハードは言ったが、耐えるのはむしろ自分の方だろう。
女の味を知ったシェイドが、ジハードに抱かれることを拒むようになる可能性もある。
だが、それでもジハードはシェイドの子を得たいと願った。
王子でも王女でもいい。シェイドに面差しの似た明るい髪の子をこの腕に抱きあげたい。
そして自分が築き上げたすべてをその子に譲り渡すことで、シェイドへの贖罪としたいのだ、と。
「……俺自身が決めたこととはいえ、はらわたが煮え返りそうだ。せめて一日でも早く、王子をこの手に抱かせてくれ」
忌々しそうな声がシェイドの耳朶を犯す。
体を下ろしきって、苦し気な息を吐いたフィオナが、意を決したように体を動かし始めた。
「王兄殿下……貴方様のお子を」
「シェイド、お前の子をこの手に」
三人分の重みを受けて、寝台が密やかな軋みをあげた。肌を叩く音と粘るような水音がそれを掻き消す。
「……い、や……いやです……こんな、ッ、こんなこと……!」
拒絶の声は喘ぎに紛れ、やがて身も世もない啜り泣きへと変わっていく。
途切れ途切れの哀願も甘い悲鳴に。
――やがてそれは、掠れて尾を引く悦びの声へと変わっていった。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。