不遇幼女テイマーに召喚された古竜、未開の秘境で幼女のパパになる。

メルメア

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第7話 小王たち

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「いろいろと話したいことはあるのだが……」

 俺は足元の家に視線をやって言った。

「今はまだ真夜中。娘の安眠を保護しなければならない。エリンが目覚めるまで、余計なことはせずに待て」
「仰せのままに」

 森の動物たちは恭しく頭を下げ、その場にじっと座り込んだ。
 それを見届けて、俺は家の中に戻る。
 わずかに緊張は緩んだものの、彼らはじっと俺の命令通りに待機している。

「ん~」

 エリンは眠ったまま手をもぞもぞ動かし、しかめっ面を浮かべている。
 まさか俺を探しているのか。

「すまない。戻ったぞ」

 再びベッドに横たわると、エリンはぎゅっと俺に抱きついた。
 そしてまたすやすや眠り始める。
 俺はそっとその身体を抱いて、再び目を閉じる。
 そしてこの森と自らの関係を、必死にもやのかかった記憶をたどって考え始めた。
 しかしいくら思考を巡らせても、まるでそれらしい答えは出てこない。
 ただただ、時間だけが過ぎていく。
 うっすらと空が明るくなり始め、太陽が昇り、そして2時間くらい経った頃。
 エリンが静かに目を覚ました。

「んんっ……パパ、おはよぉ~」
「おはよう。よく眠れたか?」
「うん!」

 よく食べてよく寝たからか、昨日より顔の血色がだいぶ良い。
 それなりに体力も回復できたようだ。

「寝起きでも元気いっぱいだな」
「えへ~。パパといっしょに寝れたもん!」
「早速で悪いが、少し出かけられるか?」
「はーい」

 エリンはごしごし目をこすると、テンション高く跳ねるように動き出した。
 いつの間にか起き出していたモフリンが、その後に続く。
 元気に歩きだしたエリンだったが、勢いよく家のドアを開けたところで固まった。

「パパぁぁぁ!!!」

 まあ、ちょっと怖めな見た目の生物が取り囲んでるからな。
 恐怖を抱くのも無理はない。

「安心しろ」

 俺は、抱きついてきたエリンの頭を優しく撫でて言った。

「こいつらは悪いことはしない。もし攻撃してきても、俺が守ってやるから大丈夫だ」
「う、うん。そうだよね。パパがいるもんね」
「それによく見てみたら、かわいいのもいるだろ?」
「言われてみれば……そうかも」
「大丈夫だからな」

 ひとまずエリンが安心したところで、4体のリーダーが進み出てひれ伏した。

「ヴィヴァンヴェルド・ギルベッシヴィウス・レヴィエヴァスヴァンテ様」
「俺の名前ではあるが、いちいち長い名で呼ばれるのはうっとうしい。ギルで構わない」
「承知しました。ギル様、私は西の小王レオと申します」
「我は東の小王イグル。ギル様がいらっしゃるのを、首を長くして待っておりました」
「俺は南の小王ホスです。よろしくお願いします」
「アタシは北の小王スネク。ギル王、心の底から歓迎申し上げますわ」

 ライオンがレオ、ワシがイグル、馬がホス、大蛇がスネク。
 何となく覚えやすい名前だな。

「パパ、王様なの?」

 驚き目を丸くして見上げてくるエリンに、俺は軽く首を傾げた。

「さあな。俺は王になった覚えはないんだが」
「パパが王様なら、私は王女様だね! プリンセス!」
「まあ、そうなるな。紹介する。俺の娘、エリンだ」

 俺が紹介すると、小王たちはエリンに対しても敬意を示した。

「プリンセス・エリン。歓迎いたします」
「きゃー! パパ、パパ! プリンセスだよ! 私、お姫様になっちゃった!」
「そうだな、プリンセス」
「えへへへへー」

 とても王女には似つかわしくないだらしのない笑顔。
 プリンセスと言われたのが相当嬉しかったらしい。
 やはりこの年代だと、お姫様に憧れる子が多いんだろうか。

「お前たちは俺を待っていたと言うが……そうれはどういう意味だ?」
「はい。いろいろとお話しせねばならないことがございます。もし可能でしたら、場所を移動したいのですが……」
「構わない」
「ではこちらへ。プリンセス・エリン、私たち誰かの背中にお乗りになりますか? やや険しい道も歩きます」
「えっとぉ……」

 エリンは小王たちを順に見てから、最後に俺へと視線を向けた。
 そしてするすると体を登り、背面にまわって肩に掴まる。

「パパにする! いいでしょ?」
「……ああ。もちろんです、プリンセス」
「にぱー。さあ、しゅっぱーつ!」
「何だよその笑い方は」

 俺はエリンの体を固定すると、レオたちに続いて森を歩き始める。
 後半になるにつれて、言っていた通り道が険しくなっていった。
 ぬかるんでいたり、岩が多かったり、急な斜面になっていたり。
 エリンが1人で歩くのは、確かに少し厳しいかもしれない。
 当の本人は俺の背中の上で、森の景色に元気いっぱい目を輝かせているが。
 大半の森の住民たちがそれぞれの家というか巣に帰り、4体の小王と俺、そしてエリンとモフリンだけになった。
 そして30分くらい歩いた頃、森の中に突如として遺跡が現われた。
 非常に大きな遺跡。
 宮殿にも神殿にも見える。
 きっと建っていた当時は、かなり豪華な見た目をしていたことだろう。

「こちらへどうぞ。食事を取りながら、私たちの話を聞いていただければと思います」
「ご飯!」

“食事”のワードに敏感に反応して、背中のエリンが歓声を上げる。
 そうだよな。朝から何も食べていないもんな。
 お腹が空いて当たり前だ。

「フルーツがいい!」
「あら、プリンセス・エリンもフルーツがお好きなんですの? アタシもですわよ」
「わー! ヘビさん仲間!」
「うふふ、スネクですわ」
「スネクちゃん!」
「うふ、好きなようにお呼びくださいまし」

 スネクとすっかり打ち解けて会話するエリン。
 俺の胸の中には、素朴な疑問が生まれる。

「なあ、エリン」
「なに?」
「スネクは怖くないのか? 大きな蛇だぞ?」
「う~ん……パパが怖すぎて薄れる!」
「あっそうですか……」

 娘に“怖い”通り越して“怖すぎる”言われる父親。
 慌ててフォローするかのように、エリンがぎゅっとバックハグしてくれる。

「でもね、パパのこと大好きだよ。怖くない……こともないけど、普通のパパは怖くない!」
「どうもありがと」

 普通の状態が竜なんだが……というセリフは、胸の中にしまっておく。
 そのうち、竜の姿にも慣れてもらいたいものだが。

「素敵な親子ですこと」

 微笑まし気に舌をチロチロさせるスネクと一緒に、俺たちは遺跡の中へと入っていくのだった。
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