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第8話 予言
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「まずはこの森について、簡単にご説明しましょう」
食事を取りながら、おもむろにレオが口を開く。
エリンは無我夢中でフルーツをむしゃむしゃ食べていて、まるで話を聞くつもりはないらしい。
まあ、重要なところだけあとでかいつまんで教えればいいか。
それにしても、この娘の食欲旺盛っぷりは見ていて気持ちが良い。
「この土地の一つの特徴は、他にはない固有の動植物が生息していることです。例えばちょうど召し上がっているフルーツも、あるいは我々のように一定以上の知能を持つ獣も、他の土地には存在しません。また環境や地形も、他と比べればかなり歪と言えます」
「それは俺も感じていた。この森はどうも様子が違う」
「ええ。ここは人間や竜のような、高位の種族から隔絶されてきた土地なのです。そのおかげで、こうして独自の発展を遂げてきました」
言ってみれば秘境ってわけだ。
あるいは猛毒のフルーツに底なし沼、行く手を阻む険しい道を考えれば、魔境と言ってもいいかもしれない。
「森は東西南北4つのエリアに分けられていて、それぞれに小王がいます。それが私たちです。ライオン、ワシ、馬、蛇。この4族が、代々その座を受け継いでいます。こうして会話をしている時点で、私たちが他の獣と違うことはお分かりだと思いますが。人間界では、私たちを特別なモンスター扱いしてネームドと呼んでいるらしいですね」
「ふむ。ここは人間界から隔絶されているのではないのか?」
「今まではそうでした。ですが、最近は人間族の侵入が頻発しています。もちろん、私たちも彼らが友好的であれば特に追い払ったりはしません。しかし、人間族はこの森の歴史や環境が破壊される開拓を行おうとするので、私たちは非常に懸念しているところです」
確かにエリンがここに捨てられたということは、人間が森の存在を認知していることの証拠だな。
それにこの森が特別な場所であることは、少し歩いてみれば簡単に理解できる。
人間でなくても、例えば竜であっても関心を持つこと間違いなしだ。
「ここに資源が豊富にあり、それが有用なものであることは分かっています。ですから公平な取引ならば、私たちも外からの者を拒んだりはしません。しかし強引にこの森を奪い取ろうとするのなら……」
レオはじめ、小王たちの目が鋭く険しくなった。
ピリピリとした緊迫感を感じて、思わずエリンも食事の手を止める。
しかし数秒後、小王たちが緊張を解き場の空気が柔らかくなった。
「ひとまず、これが簡単な森の概要です」
「むしゃむしゃむしゃむしゃ」
「我らが住むこの地は特別な場所で、人間の侵入や強引な開拓という危機に瀕しているとご理解いただければよい」
「むしゃむしゃむしゃむしゃ」
「俺らも手は打っているんですが、なかなか難しいんすよねぇ……」
「むしゃむしゃむしゃむしゃ」
「ふふっ。それにしてもプリンセス・エリン、よくお食べになるわね」
「うん! むしゃむしゃむしゃむしゃ」
一瞬手は止まったが、緊張が解けた瞬間にこの食いっぷり。
その切り替えの早さはもはや才能だぞ、我が娘。
「森のことは、ざっとだが理解した。でもまだ、俺が王となる理由が分からない」
「実は森には、とある予言があるのです」
「予言?」
「はい。イグル、あれを」
「了解っす」
イグルはひとつ頷くと、バサバサ羽ばたいて部屋を後にした。
そして数分後、ずいぶんと古い冊子を足で掴んで戻ってくる。
「これは何だ?」
「はるか昔に書かれた予言の書っす。まあ、ほとんどのページが破れちゃってて、ほとんどの内容は理解できないんすけどね」
「でも、ひとつだけぼんやりと解読できる予言がありますのよ」
イグルがペラペラとページをめくり、最後の方を開く。
そこには見たことのない文字と、かなり抽象的な絵が描かれていた。
これは……竜か?
それに人間とウサギと……いや、分からないな。
強引にこじつければ、何となくそう見えなくもないが。
「何て書いてあるんだ?」
「正確なことは分かりません。この文字はこの森ではるか昔に使われていたもので、今はもう失われています。ですが、この部分だけはわずかに解読することができました」
レオが鋭い爪で挿絵を指差して言う。
「これは竜とうさぎ、それに人間を表現していると、私たちは考えています」
ふむ。
ここは俺の解釈と一致しているな。
強引なこじつけではあったが、どうやら合っていたようだ。
「ここに記されている文字を解読してみると、こんな感じの文章になるのです。意訳ですから、当時の文章そのままとはいきませんが……」
少し間をおいて、レオは俺の目をまっすぐに見つめ口を開いた。
「『この森に未曽有の危機の足音が迫る時、竜の王が現われる。竜の王は森と幼い少女を守り、自らの因縁に立ち向かう』と」
王かどうかはともかく、俺が竜であることに間違いはない。
そしてエリンという幼い少女もいる。
なるほど。予言の状況と一致していると考えても、おかしくはない状況だ。
「竜族の力《覇竜眼》については、聞いたことがございました。我らとて、小王として己に実力があると自負はしております。ですがあなた様は、それをはるかに上回って来られた」
「ギル様こそ、竜の王に間違いありませんわ」
小王たちは真剣に俺のことを見つめる。
正直言って、俺は竜の中では強い部類とは言えないはずだ。
果たしてどうしたものか。
俺が戸惑っていると、イグルがエリンの隣にいるモフリンを翼で指し示す。
「ちなみになんすけど、この予言を書いたのはモフリンの祖先なんすよ」
「え……?」
「実はここにも深い歴史があるとかないとか……」
ふむ。
もう少しだけ、真面目な話が続きそうだな。
食事を取りながら、おもむろにレオが口を開く。
エリンは無我夢中でフルーツをむしゃむしゃ食べていて、まるで話を聞くつもりはないらしい。
まあ、重要なところだけあとでかいつまんで教えればいいか。
それにしても、この娘の食欲旺盛っぷりは見ていて気持ちが良い。
「この土地の一つの特徴は、他にはない固有の動植物が生息していることです。例えばちょうど召し上がっているフルーツも、あるいは我々のように一定以上の知能を持つ獣も、他の土地には存在しません。また環境や地形も、他と比べればかなり歪と言えます」
「それは俺も感じていた。この森はどうも様子が違う」
「ええ。ここは人間や竜のような、高位の種族から隔絶されてきた土地なのです。そのおかげで、こうして独自の発展を遂げてきました」
言ってみれば秘境ってわけだ。
あるいは猛毒のフルーツに底なし沼、行く手を阻む険しい道を考えれば、魔境と言ってもいいかもしれない。
「森は東西南北4つのエリアに分けられていて、それぞれに小王がいます。それが私たちです。ライオン、ワシ、馬、蛇。この4族が、代々その座を受け継いでいます。こうして会話をしている時点で、私たちが他の獣と違うことはお分かりだと思いますが。人間界では、私たちを特別なモンスター扱いしてネームドと呼んでいるらしいですね」
「ふむ。ここは人間界から隔絶されているのではないのか?」
「今まではそうでした。ですが、最近は人間族の侵入が頻発しています。もちろん、私たちも彼らが友好的であれば特に追い払ったりはしません。しかし、人間族はこの森の歴史や環境が破壊される開拓を行おうとするので、私たちは非常に懸念しているところです」
確かにエリンがここに捨てられたということは、人間が森の存在を認知していることの証拠だな。
それにこの森が特別な場所であることは、少し歩いてみれば簡単に理解できる。
人間でなくても、例えば竜であっても関心を持つこと間違いなしだ。
「ここに資源が豊富にあり、それが有用なものであることは分かっています。ですから公平な取引ならば、私たちも外からの者を拒んだりはしません。しかし強引にこの森を奪い取ろうとするのなら……」
レオはじめ、小王たちの目が鋭く険しくなった。
ピリピリとした緊迫感を感じて、思わずエリンも食事の手を止める。
しかし数秒後、小王たちが緊張を解き場の空気が柔らかくなった。
「ひとまず、これが簡単な森の概要です」
「むしゃむしゃむしゃむしゃ」
「我らが住むこの地は特別な場所で、人間の侵入や強引な開拓という危機に瀕しているとご理解いただければよい」
「むしゃむしゃむしゃむしゃ」
「俺らも手は打っているんですが、なかなか難しいんすよねぇ……」
「むしゃむしゃむしゃむしゃ」
「ふふっ。それにしてもプリンセス・エリン、よくお食べになるわね」
「うん! むしゃむしゃむしゃむしゃ」
一瞬手は止まったが、緊張が解けた瞬間にこの食いっぷり。
その切り替えの早さはもはや才能だぞ、我が娘。
「森のことは、ざっとだが理解した。でもまだ、俺が王となる理由が分からない」
「実は森には、とある予言があるのです」
「予言?」
「はい。イグル、あれを」
「了解っす」
イグルはひとつ頷くと、バサバサ羽ばたいて部屋を後にした。
そして数分後、ずいぶんと古い冊子を足で掴んで戻ってくる。
「これは何だ?」
「はるか昔に書かれた予言の書っす。まあ、ほとんどのページが破れちゃってて、ほとんどの内容は理解できないんすけどね」
「でも、ひとつだけぼんやりと解読できる予言がありますのよ」
イグルがペラペラとページをめくり、最後の方を開く。
そこには見たことのない文字と、かなり抽象的な絵が描かれていた。
これは……竜か?
それに人間とウサギと……いや、分からないな。
強引にこじつければ、何となくそう見えなくもないが。
「何て書いてあるんだ?」
「正確なことは分かりません。この文字はこの森ではるか昔に使われていたもので、今はもう失われています。ですが、この部分だけはわずかに解読することができました」
レオが鋭い爪で挿絵を指差して言う。
「これは竜とうさぎ、それに人間を表現していると、私たちは考えています」
ふむ。
ここは俺の解釈と一致しているな。
強引なこじつけではあったが、どうやら合っていたようだ。
「ここに記されている文字を解読してみると、こんな感じの文章になるのです。意訳ですから、当時の文章そのままとはいきませんが……」
少し間をおいて、レオは俺の目をまっすぐに見つめ口を開いた。
「『この森に未曽有の危機の足音が迫る時、竜の王が現われる。竜の王は森と幼い少女を守り、自らの因縁に立ち向かう』と」
王かどうかはともかく、俺が竜であることに間違いはない。
そしてエリンという幼い少女もいる。
なるほど。予言の状況と一致していると考えても、おかしくはない状況だ。
「竜族の力《覇竜眼》については、聞いたことがございました。我らとて、小王として己に実力があると自負はしております。ですがあなた様は、それをはるかに上回って来られた」
「ギル様こそ、竜の王に間違いありませんわ」
小王たちは真剣に俺のことを見つめる。
正直言って、俺は竜の中では強い部類とは言えないはずだ。
果たしてどうしたものか。
俺が戸惑っていると、イグルがエリンの隣にいるモフリンを翼で指し示す。
「ちなみになんすけど、この予言を書いたのはモフリンの祖先なんすよ」
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ふむ。
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