転生スキル【ぬいぐるみテイム】でふかふかもふもふエルフの森スローライフ!~双子幼女エルフと動くふかふかぬいぐるみとのんびり暮らす~

メルメア

文字の大きさ
7 / 35

第7話 ホットケーキと卵の殻と実験場

しおりを挟む
 本来、ホットケーキを焼く時に使う量よりも多く牛乳をゲットしてある。
 というのも、そもそも牛乳がない村にバターがあるはずがない。
 だからバターも作るのだ。
 小麦粉や卵などを混ぜ合わせて生地を作っておき、残っている牛乳を密閉容器に入れる。
 ここからすることはただひとつ。

「それそれそれそれそれぇ!」

 振る! 振る! 振る! 振る!
 ただひたすらにシェイクするのみ!
 やってることはシンプルでも、めっちゃくっちゃ腕力がいる。
 二の腕の痛み、そしてこいつは何やってるんだろうというリルの視線と戦いながら、必死に振り続けること10分。
 思っていた以上に早く、バターが出来上がった。
 二の腕が限界を迎えるが、あとひと踏ん張りだ。

「バターを溶かして、生地を……」

 家事のスキルだけは、同年代に比べて圧倒的に高い自信がある。
 好んでやっていたというより、やらざるを得ない環境だっただけではあるけど。
 でもそのおかげで、焦がすことなくホットケーキを人数分焼き上げた。
 皿に載せてから、最後にもう一度バター、そして砂糖。
 幸福のパンケーキ的な名前が付きそうな、ふわとろのパンケーキじゃない。
 オーソドックスなこれぞホットケーキってやつだ。
 うん、美味しそう。

「お待たせしました」

 俺はナイフとフォークを添えて、ひとりひとりの前にホットケーキを運ぶ。
 我ながら、焼き色がすごく良い。
 食欲がそそられる。

「これは何という料理なんだい?」
「ホットケーキです」
「ホットケーキ……すごく美味しそうだね」
「美味しいと思います」

 ちょどそこへ、コケ子とモー子に朝食を与え終わったミルが戻ってくる。
 途中からは笑い声が聞こえていたし、びっくりしたのは最初だけですっかり慣れたみたいだ。
 まあ、そもそもがモー子は大きいだけで怖い見た目してないもんな。

「おいしそうです!」

 パンケーキを見るなり、ミルは目を輝かせた。
 そして席に着く。
 これで全員集合だ。

「それではいただこう。いただきます」
「いただきます~」
「いっただっきま~す!」
「いただきます」
「どうぞ、召し上がってみてください」

 そう言いながら、自分も丁寧に切り分けて一口。
 うん、外はサクッとして中はしっとり。
 焼き加減は完璧だ。
 卵も牛乳も新鮮で、コクがあるけどしつこくない。
 上質なぬいぐるみ産の食材だ。
 そしてやっぱり、砂糖があるのとないのじゃ全然違うな。

「これは……美味しいね、メリナ」
「ええ~。すごく美味しいわ~」
「ケントさん! おいしいです!」
「良かったよ」

 みんな喜んでくれている。
 さてと、ホットケーキを作るきっかけになった張本人は……

「はぐっはぐっはぐっ……!」

 めっちゃ食ってた。
 普段から想像もつかないようなスピードで、ホットケーキに食らいついていた。
 俺の視線に気づき、口にホットケーキを詰めたままリルがこちらを見る。
 まるでリスだな。
 コジローが口にぱんぱんにドングリを詰めたら、あんな感じになるんだろう。
 残念ながらコジローは口からドングリ食べないけど。

「どうだ?」
「んっ……!」

 口をもぐもぐさせて何言ってるか分からないけど、グーサインを出してるし美味しいってことだな。
 逆にこの食いっぷりで不味いって言われたら、もう俺はリルを信じられなくなる。

「んぐっ……んぐっ……ごくん……。ケント」
「何だ?」
「さっきの、へんな、だえんけいのやつ」
「あーっと、卵か?」
「それ。あれのそとがわって、どうなった?」
「殻なら、捨てようと思ってまだキッチンにあるけど」
「ほしい」
「殻が?」
「うん」

 妙なものを欲しがるな。
 確かに卵を目にすることはなかっただろうから、珍しいものではあるだろうけど。

「何に使うんだ? おもちゃには向いてない気もするけど」
「じっけん」
「実験?」
「そう。あとでわたしのじっけん、てつだわせてあげる」
「……光栄です」

 まあ実験といっても、5歳の女の子がすることだ。
 おままごとみたいなものだろう。
 ……そう思っていたんだけど。



 ※ ※ ※ ※



「わたしのじっけんじょう、あんないしてあげる。ついてきて」
「分かった」

 朝食後の片付けも済ませて、俺たちは家をあとにした。
 相変わらず頭の上にプヨタローを乗せたリルと一緒に、村の中を歩いて行く。
 ミルはといえば、畑仕事の手伝いに行っているそうだ。偉い。

「ここ」

 リルが指し示したのは、他の家と同じような木組みの一軒家だった。
 ここが実験場らしい。

「普通の家じゃないのか?」
「いまは、あきや。だからわたしがつかってる」
「なるほど」

 家の中に入ると、いろいろなものがごちゃごちゃに置かれて雑然としていた。
 見覚えのあるものから、全くわけが分からないものまで多種多様だ。

「ちなみにリルは、ここで何の実験をしてるんだ?」
「いろいろ。でもいちばんは、しごとのきかいか」
「きかいか……機械化? 思ったよりすごそうだな?」
「ふふーん。わたし、みてのとおりすごい」

 どやぁと胸を張るリル。
 おままごとかと思っていたけど、本当にすごいのかもしれない。
 何か装置っぽいものもいくつかあるし。

「いや、見た目からは想像もつかないけど」
「ぬぬっ。まあいいや。さっきのざいりょう、ちょーだい」
「ああ、卵の殻な」

 卵の殻を手渡すと、リルは光に透かすなどして観察を始めた。

「もろい。そうちのパーツにはつかえなそう」
「ああ。すぐに割れちゃうからな」
「むむぅ……。たまごのから……たまごのから……。あれ……?」

 リルは何かを思いついたように、机の上に積まれた本を漁り始めた。
 実験場のテンプレみたく取っ散らかっているだけに、目的のものを探すには苦戦している。
 数分後、リルは一冊の書籍を引っ張り出した。
 ずいぶんと古い。
 表紙は茶色く変色していて、何か絵が描いてあるようだが判別できなくなっている。

「あった」
「その本と卵の殻が何か関係あるのか?」
「ケントがたまごっていったとき、なんかききおぼえあるとおもった。でも、ぜんぜんおもいだせなかった。けど、おもいだした」
「卵を知ってたのか?」
「なまえは、ね。でもみたことはなかった。ほら、ここ」

 リルは本のページをパラパラめくり、真ん中あたりを開いて見せてくれた。
 そこには卵の殻が肥料になると記されている。
 確かに、元の世界でも卵の殻って肥料として効果的って言われてたよな。

「たまごのから、ひりょうになる」
「うん、使えるかもしれない。だけど量の問題があるぞ? コケ子だって、無限に卵が産めるわけじゃないと思うし」
「じゃあ、もっとニワトリだせばいい」
「そしたら、そのニワトリたちのご飯がたくさん必要になる」
「むむっ」

 そう一筋縄ではいかないもんだよな。
 でもリルが本を読んだのは、ずいぶん前のことのはずだ。
 かなり奥の方にしまい込まれていたから。
 それでもピンポイントで覚えているなんて、この子の記憶力はすごい。
 本好きなだけあって、頭が良いんだろうな。

「たまごのから、ひりょうになる。でもそのためには、ニワトリがたくさんひつよう。ニワトリをたくさんだすと、エサがたくさんひつようになる……。ひりょうとしてのこうかしだいか……」
「ちなみにだけど、そんなに即効性のある肥料じゃないらしいぞ。じわじわタイプみたいだ」
「そうすると、はたけのトウモロコシをエサにまわして、すぐにさいさんはとれない」
「そうなるな」

 うーん。5歳児と会話してるとは思えない。
 リルは真剣に考えこんでから、卵の殻を一旦ビンにしまった。

「たまごはおもしろい。だから、できればりょうさんしたい。プランをねって、そんちょーにそうだん」
「オッケーだ。できることがあったら、手伝ってやってもいいぞ」
「うん。ケント、いがいとちしきある。みなおした。せいしきに、じょしゅとしてにんめいする」
「かしこまりました」

 ちょっとおどけて下手に出てみると、すかさずリルは目を光らせた。
 あーやばい。
 策にはまったな、これは。

「じゃあ、じょしゅにめいれい。わたしのかわりに、はたけしごと」
「えー」
「じょしゅ、さからわない」
「はぁ……はいはい」
「じゃあ、わたしはねる」
「さっき起きたばっかだろ!?」

 リルはもぞもぞと部屋の奥のベッドへ登ると、プヨタローを枕に寝始めた。
 すぐにすーすー寝息を立てている。
 寝落ちするの早ぁ。

「仕方ない」

 どのみち、村長にも村の仕事手伝うよう言われてるしな。
 働き者の妹さんと、お仕事しますかね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

異世界カフェ食堂で皿洗いをしますと思ったら日本料理を創造する力が与えられていた!(もふもふ聖獣猫のモフにゃーと楽しく日本料理を創造します)

なかじまあゆこ
ファンタジー
可愛いもふもふ達とアリナは異世界でスローライフをします。 異世界召喚された安莉奈は幼女の姿になっていた。神様に与えられた能力を使い眷属聖獣猫モフにゃーや魔獣のライオン魔獣鳥に魔獣の日焼けとお料理を創造します! 熊元安莉奈(くまもとありな)は黄色のバスに乗せられ異世界召喚された。 そして、なぜだか幼女の姿になっていた。しかも、日本の地球人だったことを忘れていたのだ。 優しいモリーナ夫妻に養子として引き取れた安莉奈はアリナになった。 モリーナ夫妻はカフェ食堂を経営していたが繁盛しておらず貧乏だった。料理が出来ないアリナはお皿洗いなどのお手伝いを小さな体ながらしていたのだけど。 神様から日本料理を創造する力が与えられていた! その力を使うと。 地球では辛い生活を送っていた安莉奈が異世界ではアリナとしてお父さんに激愛され幸せに生きている。 エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...