転生スキル【ぬいぐるみテイム】でふかふかもふもふエルフの森スローライフ!~双子幼女エルフと動くふかふかぬいぐるみとのんびり暮らす~

メルメア

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第16話 白い花の怖さと名馬の名前と嬉しくない情報

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「うーす」

 雑な挨拶と共に研究所に入ると、リルは珍しく起きていた。
 目の前には、あの白い花が入った瓶が置かれている。
 机の上のそれと、リルは真剣な顔でにらめっこしていた。

「あ、ケント」
「珍しいな。起きてたのか」
「むむっ。まるで、わたしがずーっとねてるみたい」
「ずーっと寝てるだろ。でもちょうど良かった。その花について聞きたいんだ」

 俺はリルの目の前にある瓶を指差す。
 そういえば、シェグさんのような鍛えられたハンターでさえ、あれだけ体調が悪くなったのに、こんな至近距離でリルは平気なんだろうか。

「調子、悪くならないのか?」
「このびん、ハイエルフのじゅつでふーいんされてる。だから、へいき」
「なるほど。エリサが封印したってわけだ」
「そう」
「その花を見てることからすると、今日あったことは聞いたみたいだな」
「うん。パパをまもってくれてありがと、ケント」

 安堵したような微笑みを浮かべるリル。
 やっぱり家族が無事って、すごい嬉しいことなんだな。

「でも、昨日話したほど上手くは行かなかったわ」
「いきていくのって、そーいうもん。うまくいってばっかじゃない」
「お前、本当に5歳児だよな? 実は1500歳のロリババアだったりしないよな?」
「ろりばばー?」
「いや、何でもない」

 リルは完全にきょとんとしてしまう。
 俺は一つ咳払いすると、話題を変えた。

「その花、エルフにとっては毒なんだよな?」
「そう。このはな、すごくこわい。はきけ、めまい、からだのふるえ、ずつう、ふくつう、げんかく、げんちょうなどのしょうじょうがでる」
「恐ろしいな」
「でも、もっとこわいのは、きんだんしょうじょう」
「あんな苦しくなるのに、禁断症状?」
「うん」

 リルは一つ頷くと、瓶の横にあった薄い本を広げる。
 ぱらぱらとめくると、とあるページを見せてきた。

「えーとなになに? 『短い期間で何度もこの花の香りをかぐと、中毒になり、定期的にこの花の香りをかがなくては気が済まなくなります。もちろん、体には悪影響です。中毒を克服しないと、最悪の場合、死に至ります』。めちゃくちゃ怖いじゃん、なにこれ」

 言ってみれば、危ない薬みたいなものなんだな。
 だから、村長も急いで手当てするように言っていたわけだ。

「こわい。しかも、ちゅうどくをこくふくするの、かんたんじゃない。エリサは、こうかてきなくすり、つくろうとがんばってた」
「なるほど……。きれいな花に見えて、こんなに怖いものだったとは」

 昨日、何気なく手に取って、ましてや瓶を開けようとしていたことを考えると震える。
 エリサの封印が無かったら、リルの健康を害してしまっていたかもしれない。

「これでもう、エルフはどうくつにちかづけない」
「確かにそうなるな」
「モンスターのきょてん、ケントひとりでつぶさなきゃいけない」
「……いや、うすうすそんな気はしてたんだけどさ。そりゃ、俺以外にあの洞窟に入れる人いないし。でもひとりってのは……」
「だいじょーぶ。ぬいぐるみがいる」
「うーん……」

 村長からは、じゃんじゃんぬいぐるみを出していいみたいな雰囲気を感じた。
 でもさすがに限度ってもんがあるしな。
 かなり強いクマゴローであの感じだと、猛獣があと4、5体はほしい。
 ただ問題は、猛獣はめちゃくちゃ食うってことだ。
 改めて、村長に相談しなくちゃいけないな。

「ハンターたちの治療が一段落したら、村長のところに言って改めて作戦を立てるよ。まさか、モンスターを野放しってわけにはいかないし」
「うん。それがいい」
「さてと……リル、ちょっと手伝ってくれるか?」
「ぬぬっ。まさか、ろうどう?」
「少しは働け。ほら、行くぞ」
「ぬあ~」

 情けない声を上げるリルを連れ出し、ニンジンを取りに村の倉庫へ向かう。
 まあ確かに、相当な数の食料が備蓄されてるよな。
 豊かな村であることは間違いない。

「ニンジンを運ぶぞ」
「ニンジン? クマゴローのエサ?」
「そう。あとは新入りがな」
「またふえたの」
「仕方なかったんだ」

 ニンジンを大きな袋に詰めて、2人で協力して運ぶ。
 結構な量だけど、今日の功労者への報酬だ。
 大きい目で見てほしい。

「おーい」

 少し離れた場所から呼びかけると、ウマたちは一斉に走ってきた。
 普通はパッカパッカと蹄の音がするもんだけど、クマゴローと同じように全くの無音。
 さすが、ぬいぐるみ。

「ふえてる。すごいふえてる」
「このウマたちが、すごいスピードで走って、シェグさんたちを連れ帰ってきてくれたんだ」
「おおっ。ありがとう、きみたち」
「「「「「ひひ~ん」」」」」

 俺たちは、袋の中のニンジンを地面へと出す。
 お腹が減っていたようで、ウマたちは一斉に食べ始めた。
 ニンジンがひゅんひゅん無くなっていく。
 そりゃ、登場していきなりあれだけ全力疾走させられたら、お腹も空くよな。

「このウマたちにも、名前を付けるの?」
「まあ、付けてあげないとかわいそうだしな。さすがに最初のうちは、名札が無いと分からなくなりそうだけど」

 大活躍の名馬たちだ。
 ふさわしい名前を付けてあげたい。
 俺は食事を取るウマたちを、一頭一頭じっくり観察した。

「よし、決まった」
「どんなのにしたの?」
「右の白いやつから順にオクリギャップ、ウマートファルコン、ハニーブライアン、デーブインパクト、ジャスダウェーイ、プエナピスタ、エアークルーヴ、トウトイテイオー、メグロマックイーン、クリーンクラス」
「ふーん。へんなの」

 まあ、そりゃ分からんよなぁ。
 このネタ、競馬とか某ウ●娘とかやってない人には伝わらないって。
 ましてや異世界エルフに分かるわけがない。

「おぼえづらい。なふだ、ひつよう」
「ああ。付けてあげよう。それにしても、ウマにウシにニワトリ……。牧場みたいだな」
「ぼくじょー?」
「ああ、牧場ってのは、こういうウマとかウシとかいっぱいいるところなんだ。ウマに乗って遊んだり、牛乳しぼり体験ができたりするところもあれば、それこそ牛乳とか卵とかを作って売ってるところもあるんだぞ」
「ぼくじょー、すごい! ぼくじょー、つくりたい!」
「まあこれも、要はエサの問題だな。卵とか牛乳とか、食料として還元される部分はあるわけだし。量産すれば、それこそ卵の殻も肥料に使える」
「ぼくじょー、そんちょーにていあんする。ニワトリだけじゃなく、いろんなどうぶつふえたら、たのしいし」

 ぬいぐるみの牧場か。
 なかなかにメルヘンだな。
 でもどうせやるなら、思い切って大規模に展開した方がいいのかもしれない。
 村の全体の牛乳や卵を賄うくらいの勢いでやれば、意外と副産物も含めて採算は合ってくるかも。
 そういえば、牛糞も肥料として使えるんだよなぁ。
 ぬいぐるみたちは排泄しないから、この副産物はゲットできないけど。

「まあ、とりあえずモンスター問題を解決しないとな。そうしないと、牧場を作っても動物たちが安心できない」
「うん。ケント、がんばれ」
「丸投げなんだよなぁ……」

 でも、丸投げになって仕方ない状況なんだよな。
 早いところモンスターを倒して、平和な暮らしを取り戻したいところだ。
 狂暴な奴らと戦うよりも、リルにツッコミを入れたりミルと働いたりしながら、のんびりまったり暮らす方が性に合っている。

「おっ、ケントくん。それにリルとおウマさんたちも」
「パパ! もうだいじょーぶなの?」

 通りがかったのは、シェグさんだった。
 まだ顔色はそんなに良くないが、足取りは段違いにしっかりしている。
 さすが、日ごろ鍛えてるだけあるな。
 回復力が違う。

「まだ少しふらっとするけど、大丈夫だ。心配かけたな」

 シェグさんは優しく愛娘の頭を撫でると、こちらに向き直った。

「僕たちは、あの洞窟に近づけない。だからケントくんに何とかしてもらうしかなんだ。すまない」
「仕方ないです。プランを立てて、やってみます」
「よろしく頼むよ。それと、ひとつだけ情報を。あんまり明るい話じゃないんだけどね」
「何です?」
「おそらく、モンスターはあの10体が全てじゃない。洞窟のあの空間にあった足跡などから推察して、おそらく20~30はいると思う」
「……それは、明るい話じゃないですね」

 でもあれだけ調子が悪いなかで、瞬時にそんな観察をしていたのか。
 この人……じゃなくてエルフ、すごいな。
 聴覚にしても嗅覚にしても、エルフは段違いに感覚が優れているようだ。

「でも、必要な情報です。ありがとうございます」
「お礼を言うのはこっちの方さ。僕にできることがあれば、何でもするから言ってほしい」
「はい。力が必要な時は、遠慮なく頼らせてもらいます」
「ああ、そうしてくれ」

 さーてと。
 何とも嬉しくない情報が出たところで、モンスターたちへのリベンジに向けて計画を練りますかね。
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