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1章 初級冒険者

第21話 初めての仕事は......

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レギさんの受けた依頼の内容自体は単純なものだった。
とある商店の倉庫の護衛だ。
しかし、レギさんが念押ししていたように問題がある。
日程が今日の夜から5日間。
今日の今日って、緊急にもほどがあるよね......。
しかも相場に比べて依頼料が少ないらしい。
緊急の依頼にもかかわらず依頼料が少ない、これは確かに受けてくれる人を探すのは大変だろう。
受付のおねーさんはレギさんに依頼を受けてほしい感を凄い出していたし、厄介な依頼はレギさんに、的な感じなんだろうか?

「依頼料の事はよく分からないですけど、確かに大変そうな依頼ですね。」

「報酬に関しては申し訳ないと思ってるが、手伝ってくれると助かる。」

レギさんにはとてもお世話になっているから手伝うことは何も問題ない。
寧ろ積極的にやってみたいと思う。

「受けるのは別に構わないっスけど、これって初級用の依頼じゃないっスよね?俺たちが受けていいんスか?」

確かに信頼が大事そうな倉庫の護衛なんてのは初級冒険者には回ってこなさそうな仕事だ。

「あぁ、依頼自体は下級以上向けの依頼だな。まぁ依頼を受けるのは俺だからそこは大丈夫なんだが、いくらなんでも5日間眠らないってのはな......?」

「まぁ普通に無理ですよね。」

「だろ?すぐに誘えそうなやつらは今はいない、というか報酬が低すぎて下級冒険者を複数誘うのは無理だ。」

「なんでそんなに依頼料が低いんスかねー?」

「ギルドを通してる以上依頼料の相談もしてるはずだからな、なんか理由があるんだろうが......流石にそこはわかんねぇなぁ。」

少しきな臭い感じなのかな?
レギさんからの誘いじゃなかったら間違いなく避ける類の依頼だな。
でも何となく、レギさんには心当たりがある様な感じがするんだよね......。

「うーん、分かったっス。この際報酬に関しては気にしないで行くっス。レギさんには色々お世話になってるっスから、返せるときに恩は返しておくっス。」

「僕も同感です。まだ仕事をやったことない新人ですが、お手伝いさせてください。」

「すまねぇなぁ、だがありがたく頼らせてもらうぜ。じゃぁこれから依頼人の所で打ち合わせだ、基本的に俺がやりとりはするが何か疑問があったら遠慮なく口を挟んでくれ。」

「了解です。」

「あぁ、そうだ。俺の受けた依頼の手伝いって形ではあるが、ちゃんとランクアップに必要な依頼数に含まれるからそこは安心してくれ。」

「それは良かったっス。経験的にも初級なのに警備系の仕事受けられるのはラッキーっス!」

クルストさんは結構真面目だな。
さっきも全力で初心者脅しの仕事やってたし......あの仕事って俺もやらないといけないのかな......?
全力でお断りしたい......。

「相変わらずだな。よし、じゃぁ依頼人の所に行くとするか。」

これが初めての依頼か、倉庫の護衛、なんとも地味でいい感じじゃないか。

『これが初めての仕事ですね!私も全力でお手伝いさせていただきます!』

肩に掴まった状態でやる気を出すシャル。
反対側の肩ではマナスが震えている、こっちもやる気を出してるってことかな?
武者震い?

「頼りきりは良くないと思うけど......でも、うん、頼りにしてるよ。二人とも。」

小声で二人に返事をしながら軽く撫でる。
さぁ気合入れていこう!



「いや、本当に申し訳ない。慌てて依頼を出させたものでその辺の確認を怠っておりました。」

「いえ、我々も少しおかしいとは思っていましたので、これで色々と納得出来ました。」

あれから依頼主である商店に行き依頼内容について確認をしたところ、あっさりと依頼内容について不備があったことが分かった。
ギルドから受けた仕事の内容は5日間の倉庫の警備だったのだが、話を聞いてみると5日間の倉庫の夜間警備だったのだ。
普段警備をしている人が怪我でしばらく動けなくなったため急遽人員補充できるまでの間、埋め合わせの為に雇われたというわけだ。
夜間のみの5日であれば、緊急の依頼という点も含めても金額的にはかなり割のいい仕事であったということだ、一人で受ければ、だけど。

「確かに5日間ずっと警備という事であれば複数人で来るのは当然ですな。いや、最初御三方とお会いした時はいったいどれほどの警備体制を敷いてくれるものかと驚きました。」

「はっはっは、確かに物々しすぎましたな!依頼内容については問題ありません、この条件で受けさせていただきます。ただ申し訳ないのですが少しお願いしたいことがありまして。」

「お聞きしましょう。」

「こちらの二人はまだ冒険者としては新人なのですが、私も含め三人でこの依頼を受けさせていただいてもよろしいでしょうか?もちろん、警備は毎日私が主導でやらせていただき、彼らの監督もしっかりいたします。」

「ふむ、私としては構いませんが......それですと報酬の方が割に合わないのではないですか?」

「元々ギルドで確認した内容で納得してここに来ておりますのでそちらは問題ありません。彼らに経験を積む機会を与えてもらってもいいでしょうか?責任は私が持ちますので。」

「えぇ、先ほども言いましたが私としては構いません。ですが契約内容について私共の方に不手際があったのは事実ですので、報酬は少し増額させて頂きたいと思います。さすがに3倍というわけにはいきませんが......。」

「3倍は......押し売りが過ぎますね。しかしよろしいのですか?」

「えぇ、未来ある若者に投資するのは悪くありません。今後もいいお付き合いをさせてもらいたいですし、それと私共の店を御贔屓にして下さるととても嬉しいですな。」

「私たちの懐事情ではここでの買い物は少々厳しいものがありますが、機会がありましたら是非利用させていただきますよ。報酬についてはお言葉に甘えさせていただきたいと思います。では一度引き上げさせてもらい、準備をしてから倉庫警備に向かわせていただきたいと思います。」

「えぇ、倉庫に置いてあるのは店の在庫のみで飛びぬけて高価なものは置いていませんが、何卒、宜しくお願いします。」

何か疑問があったら口を挟んでくれと言われたものの、レギさんが綺麗に交渉を済ませてしまった。
はっきり言って口を挟む隙も無ければ疑問なんか全部レギさんが潰していた。
なるほど、こういう交渉事も冒険者には必要ということか......。
部屋を出ていくレギさんの後ろ姿が輝いて見える。

「......。」

何故か振り返ったレギさんにじろっと睨まれた。
......繊細過ぎやしませんかね?



「とりあえず飯でも食いながら打合せをするか。」

依頼主の店を出たところでレギさんが声をかけてくる。
確かにそろそろ昼時だし丁度いいかもしれない。

「それがいいっス。でも5日間あまり休めない感じかと思っていたっスけど、一気に楽になったっスねー。」

「油断は出来ないですけど、確かに精神的にはかなり楽になりましたね。」

「そうだな、だがあの店は結構な高級店だ。在庫置き場とは言え結構高額なものも多い、気は抜きすぎるなよ?」

「「分かりました(っス)」」

気を抜きかけた所をレギさんに釘をさされる。
確かに護衛や警備なんて仕事は気を抜いた時こそ危ないのだろう、油断しないようにと頭で考えるだけじゃなく自然と警戒状態を維持できるようにしないとな。

「そういえばレギさん、依頼人に話を聞く前から何か依頼内容について気付いてたことあったんじゃないですか?」

「お?にーちゃん気付いてたのか?」

「依頼内容については商売をしている人が依頼人のわりにおかしいとは思っていましたけど、それよりもギルドで少しレギさんの様子が何かおかしい気がしたので。」

「ほぅ。」

「もしかしたら依頼を受けるときのテストケースとして丁度いい教材になると思って受けてくれたのかなぁと。まぁこれは依頼人の所で話を聞いてから思ったことですけど。ギルドで感じたのはちょっとした違和感だけです。」

「なるほどな、そういうちょっとした違和感を感じられるってのは良い能力だ、大事に伸ばしていけ。勘を伸ばして経験を積めばそれは確度の高い予測ってやつになる、危険を避けるには大事な能力だ。」

「わかりました、頑張ってみます。」

「俺は全然気づかなかったっスけど、頑張ってみるっス!ところで飯はどこに行くっスか?早くいかないとそろそろ混みだす頃合いっスよ。」

「そうだな、俺はなんとなく魚が食いてぇんだが、お前等はなんか食いたいもんあるか?」

「僕は魚でいいですよ。この街に来てまだ一度も食べていませんし。」

「俺もそれでいいっスよ。」

「じゃぁ少し離れた場所になるがいい店がある。そこで打合せをしながら飯にしよう。」

そう言うとレギさんが歩き出す。
魚料理か、刺身とかってこの世界はあるのだろうか?
レギさんおすすめの店だから味は期待できる、楽しみにしておこう。

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