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2章 ダンジョン

第59話 苦労するのは誰

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「なるほど、食材調達の依頼ですね......。」

俺はレギさんとリィリさんをデートに送り出した後、冒険者ギルドに来ていた。

「難しいですか?」

「いえ、可能だとは思いますが......砂糖の調達と言う事でしたら商人ギルドの方に行った方がいいと思います。」

「なるほど、商人ギルドですか。」

「えぇ、向こうでしたら食材の仕入れルート等もしっかりしたものがありますし。在庫を調べてもらえます、また多少珍しい物でも取り寄せることが出来ると思いますよ。」

至れり尽くせりだな、これならすぐ手に入れられなくてもなんとかなりそうだ。
ただもし取り寄せになった場合、祭りまでに手に入れるのは難しいかもしれない......忙しい時期だろうし。
祭りが終わればこの街にいる必要はないし、ここのギルドに取り寄せてもらっても受け取れない......もしすぐ手に入らない場合は別の場所で取り寄せてもらった方がいいね。

「わかりました。ありがとうございます、商人ギルドの方に行ってみます。」

「ここからだと最寄りの商人ギルドは南門から続く大通りにある三階建ての建物になります。かなり大きな建物なので近くに行けばすぐにわかると思いますよ。」

「ありがとうございます、早速行ってみます。」

ギルドの受付の方にお礼を告げて俺は商人ギルドへ行ってみることにした。
冒険者ギルドを出て大通りに目をやると昨日よりもさらに人が増えているように感じる。

「祭りの本番までまだ三週間近くあるのに凄い人が集まってきてるなぁ。ダンジョン攻略が大事なのか、お祭りによる経済効果の賜物なのか......。」

『この先もどんどん人が増えて行くのでしょうか?』

確かに......三週間も先のお祭りに向けて現時点でここまで人が集まってきているのだからこれからも増えて行くんだろうな......。
当日身動き出来ないくらい人で溢れるんじゃ......。

「このままだと当日は物凄い人だかりになりそうだね......ダンジョンの攻略って珍しいのかな?攻略される度にこんなに人が集まっていたらえらいことだと思うけど。」

『ダンジョンは結構な数が存在するはずですからそこまで珍しい事には思えませんが......。』

「もしかしたらその辺の事情は少し違うのかもね。例えば......ダンジョンの発生間隔が昔より長くなっているとか?」

『なるほど、私の知っている知識と事情が異なっていることはあり得そうですね......。』

「まぁ単純に魔晶石による利権で盛り上がってるって可能性もあるけどね......。」

『あのダンジョンは他よりも魔晶石の純度が低いか数があまりとれないかもしれませんね。』

「そうなの?なんで?」

『ボスを倒した後に通常霧散して魔晶石になるはずだった魔力を吸収してしまいましたからね。ある程度は魔晶石もあるでしょうが......。』

「最後の一押しがない分ちょっと品質が落ちるって感じか。あまりこの辺の人たちには聞かせられない話だなぁ。」

シャルと話している間に商人ギルドと思しき建物に到着していた。
きっと商人ギルドの関係者は今頃魔晶石で儲ける算段をつけているはずだ。
その品質が低い可能性が高いとか......自殺者とかでないよね......?
とりあえずこの話は聞かなかったことにしよう。



View of リィリ

今日はレギにぃとデ、じゃなくて一日のんびりするレギにぃを監視することになった。
ま、まぁケイ君からの頼まれごとだし?
仕方ないよね......?

「この街に滞在するのは久しぶりだな。」

「私はダンジョンからの帰りを除けば試験の前に来た時が最後かなぁ。」

「俺もそうだ。あのダンジョンには近かったが......まぁ少し不便だったからな。」

なんとなくレギにぃが言いにくそうにしながら頭を掻いている。
このバツが悪かったり言いにくかったりするときに出る癖は変わらないね。

「そうそう、試験の前祝、ヘイルにぃが凄い酔っぱらって大変だったよね!」

「あぁ、あのバカ。酒に弱いくせにかぱかぱ呑むからよ。エリアに甘えてぶん殴られてたな。」

「あの時エリアねぇ顔真っ赤だったね。あれ多分二人きりの時あんな感じでいちゃいちゃしていたんじゃないかな?」

「二人きりの時だけにしておいてほしかったな。」

懐かしい思い出だ。
ダンジョンの薄暗い闇の中で思い出す時は懐かしさと同時に寂しさを覚えたけれど......今は暖かな気持ちで話せる。

「あの二人の様子で長年気付かなかったのが不思議で仕方ないよ。」

「なんでだろうな?」

レギにぃは笑っているが本当に不思議だ。
別に仲間の事に無関心というわけじゃない、寧ろ面倒見は良いほうで他人の事もよく考えて動く人だ。
なのに色恋沙汰に関してだけは絶望的なまでにダメだ。
自分の事であっても他人の事であっても全く気付く様子がない。

「まぁレギにぃだからって言っちゃえばそれまでなんだけどね......。」

「何か言ったか?」

「......うん、これからどうしよっか?」

「そうだな、昼飯まで適当に歩くか。夜はケイと合流して食うとして昼は適当に見つけた店に入ってみるか?」

「ハーネルさんに教えてもらった所じゃなくていいの?」

「自分の足で探すのもいいだろ?」

そう言ってニカっと笑うレギにぃ。
私の記憶よりも年齢は上がって頭もツルツルだけど......その笑顔は昔のまま......。

「......なんか悪意を感じるな。」

その頭部に対する警戒心というか第六感というか......鋭すぎないかしら......。

「私は魚料理が食べたいな。」

「魚か......よし、じゃぁそうするか。いい店があるといいな。」

「そうだね。でも少し時間をずらしたほうがいいかも......。」

「そうだな、早めに見つけて入っちまうか......しかし、いくらなんでもまだ結構祭りまで時間があるのに集まりすぎじゃないか?」

「何か理由があるのかな?」

考え込むように顎をさするレギにぃ。

「最近この辺りでダンジョンが攻略されたって話はなかったからな。大々的に触れ回ってるんじゃねぇか?後は......実質二つ分のダンジョンが解放された感じになるからとかか?」

「二つ分?」

「あぁ、あのダンジョンは二つのダンジョンが繋がっちまっただろ?試験用のダンジョンは早々に攻略されちまったが......もう一つのダンジョンがあるせいで魔晶石の採掘なんて出来なかったからな。商人たちからしたらずっとお預けされてる状態だったわけだ、それが攻略されて一気に二つ分のダンジョンが採掘できるようになったんだ。そりゃ気合入れて宣伝するだろうよ。」

「あぁ、なるほど。それで宣伝をあちこちでした結果、どんどん人が集まっているってことね。」

「人が集まれば金が動くからな、今この街は商人たちにとっては収穫期といったところだな。収穫した金を使って次は魔晶石の方に投資って感じか?」

「お祭りだと財布の紐も緩むからねぇ。そういえば、レギにぃは商売とかに手を出さなかったの?」

「商売?」

「ある程度稼いだ冒険者が店を出したりするのって常道じゃない?」

「あぁ、そういう事か。まぁ俺は所詮、下級冒険者だからな。店を構えるほど儲けちゃいねぇよ。」

「ふぅん?」

レギにぃは贅沢をあまりしない方だし、ケイ君も言っていたけど仕事をそれこそ休みなくやっているみたいだ。
下級冒険者であってもかなり貯えがあってもおかしくないと思うけど......。

「レギにぃは中級冒険者にならないの?」

「......どうするかな......?下級冒険者でも不便はしていないからな......何が何でもってことはないな。リィリはどうする?」

「私は......どうだろう?挑戦したい気もするけど、やっぱりレギにぃと一緒で何が何でもって気はしないかな?」

「まぁ、おいおい考えていくか。」

「そうだね......でも、レギにぃ今やりたいことがあるんじゃない?」

「......分かるか?」

「まぁね。いつ話をするの?」

「近いうちに......そうだな、祭りの後にでも話そうと思っている。」

「私も付き合っていいよね?」

「いいのか?」

「もちろん。私は、これから先もずっとレギにぃと一緒にいるつもりだしね。」

......あれ?
今なんか私、変なこと言わなかった?
ち、違う!
そういうアレじゃなくって!

「そうか......また、苦労かけるな。」

今まさに苦労してるわよ!
この先も物凄い苦労するってひしひしと伝わってくるわよ!
いや、さっきのは違うからいいんだけどね!?

「お、あの店なんかいいんじゃないか?行ってみようぜ。」

......なんか少しイラっとしてきたわ。

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