狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片

文字の大きさ
77 / 528
3章 龍王国

第76話 恐らく見習い

しおりを挟む


翌朝、宿の食堂で魔術式を調べるような魔道具があるかレギさんに聞いてみた。

「いや、わからねぇな......そういう物があったとしても専門家じゃないと使わないだろうしな。」

「やはりそういうものですか......次の街に行ったらその手の店で相談してみるしかないですね。」

「それがいいだろうな。ただ、デリータみたいなのは期待するなよ?あいつの知識量や能力はそこら辺の魔術師とはレベルが違うからな。」

「なるほど、分かりました。後、街であまりいい情報が得られなかった時はデリータさんに連絡を取りたいのですが......何かいい方法ってありますか?」

「......それは難しいな。この距離だと手紙の返事が来るまで一月じゃ済まないかもしれないな......シャルに走ってもらった方がいいんじゃないか?」

『私一人で走るなら一日で往復できるとは思います。返事を受け取ることを考えれば二日程でしょうか......ですが......。』

一人なら一日で往復......まぁ確かにここに来るまで俺たちを乗せた状態で合計二十時間も走ってないからな......一人なら余裕なんだろうな。
まぁでも......。

「うん、ありがとう、シャル。大丈夫、分かってるよ。」

一日二日とは言え、シャルが俺から離れるようなことは望まないだろう。
少し不安そうな目をしていたシャルを撫でると安心したように強張っていた体の力が抜けるのを感じた。

「シャルと二人で戻ったとしても三、四日で戻って来れそうかな?」

『そうですね、そのくらいあれば十分かと。』

「往復四日って早すぎるだろ。って、そうか俺達も移動時間だけで考えればここまで二日もかかってないのか?」

「恐らく半日と少しってところですかね。移動している時間だけで言うなら。」

「走っている時は速度に目を白黒させていてちゃんと理解できていなかったが、振り返ってみるとかなり短い時間でここまできていたんだな。」

レギさんがしみじみと呟いている。

「馬車だとあの山越えは出来ないし、半月くらい掛けてもここにまで来られないかもね。」

リィリさんは馬車と比較して考えているようだ。
馬車移動でここまで......耐えられないかもしれないな......。

「山越えだけ歩きですればなんとか半月で来られるんじゃないですかね?確か前の街から歩きで三日ほどでこの村まで来られたはずですし。まぁ、計算上はですけど......。」

「そうだね......馬車移動だと長時間の移動はかなり疲れるし、もっとゆっくりになるかも......。」

肉体的より精神的にくるものがあるんだよな......馬車移動って。

「ファラの配下のネズミ君に手紙を運んでもらうっててもあるんですけど......。」

「ネズミにこの距離はどうなんだろうな?」

「今度聞いてみます。」

「たどり着いたはいいが、デリータに解剖されたりしてな。」

いくら何でもそんなことはしないと思うけど......肩に乗っているマナスが細かくぷるぷる震えている......解剖......しないですよね?

「手紙を届けてくれた相手を解剖って相当ヤバい感じですよ......。」

「デリータならやりかねないと思わせるだけの何かをあいつは持ってるな。」

嫌な信頼の仕方していますね......。
軽く辺りを見回したレギさんが言葉を続ける。
いくらデリータさんでもここにはいないと思いますよ?

「まぁそれはいいだろう。ところで、昨日の騎士様の話、どう思った?」

あぁ、デリータさんを警戒したわけじゃないのか......。

「何となくですけど、魔物について思うところがある様な気がしましたね。」

ワイアードさん達の話......というか雰囲気かな?
この村が襲われたことというよりも魔物自体に注意を向けている様な気がする。
もちろん、被害にあったこの村の為に色々としてくれてもいるのだけれど。

「魔物の種類や数を気にしているように感じたな......まぁこれからこの村を守りながら山の方に向かって開拓を進めていくらしいからそれは当然の事の様な気もするんだが......何となく気になってな。」

「なるほど......また何か気付いたことがあったら言いますね。」

「まぁ、自分から振っておいてなんだが、少し気になった程度だからな。そんなに気にしなくていいぞ?それはそうと、これからどうする?」

「そうですね......もう少し落ち着くまで村の人達の手伝いでもしようかと思っていましたけど......。」

「騎士団の人達がテキパキと作業してくれているからね。私達は必要ないかも?」

レギさんが今後について意見を求めて来たので俺の考えを話すと続きをリィリさんが拾っていく。
まぁみんな考えてることは一緒ってことだね。

「よし、じゃぁ村長に挨拶に行ってから出発するか。次の目的地は龍王国の街になるはずだ。そこに行けば龍王国内の情報も集められるだろう。」

「了解です。」

色々と気になる事もあったが俺達は早々に村を出ることにした。



「そうですか、レギ殿達は出立されるのですか。この度は本当にありがとうございました。」

村長さんに挨拶も終わり村を出ようとしたところ、入り口付近で他の騎士の方々に指示を出していたワイアードさんが声をかけてきた。

「昨日も言いましたが、当然のことをしたまでです。いつも力なき民の為に戦っておられる騎士様達のようには出来ませんので、こういう時位は役に立ちたかったのですよ。」

「そう言っていただけると、私達も気が引き締まる思いです。もし旅の途中で王都へと向かうことがあったら、是非我が家を訪ねて来てください。歓迎させていただきます。」

「ありがとうございます。機会がありましたら是非。」

「お待ちしております。お二方もお気をつけて、旅の安全を祈っております。」

「ありがとうございます。」

「ワイアード様もご健勝のことお祈りいたします。」

こうして俺たちは村を後にした。
一応この村も龍王国の領内ってことにはなっていたけど、俺達的には次の街から本格的な龍王国って感じだ。
龍王国......応龍様がいる国。
どうやって会えばいいのか、今の所皆目見当もつかないけれど......何かいい方法がみつかるといいなぁ



View of ワイアード

三人の冒険者が村を発った。
実際に戦うところを目にしたわけではないが中々腕の立つ者たちだったと思う。
スラッジリザードを九匹、見たところ目立った怪我をすることなく退治しているようだった。
リーダーであろうレギ殿。
こういっては何だが、見た目とは裏腹に物腰は丁寧で非常に理知的な人だった。
物腰は柔らかであったがその雰囲気から歴戦の戦士であることが伺えた。
とてもではないが下級冒険者と言われて納得できるものではない。
だが身分を偽る様なタイプでもなさそうだったので恐らく真実なのだろう。
そして横にいた女性、名前は確か......そう、リィリ殿だ。
見た目はまだあどけなさの残る少女といった感じであったがその所作には隙がなく、うちの団員では不意をついたとしても彼女に傷一つ負わせることは出来ないのではないだろうか?
そう思わせるだけの雰囲気を持った少女だった。
最後の一人、少年と青年の間といった年ごろだろうか。
あまり見慣れない顔立ちであったので定かではないが......ケイ殿だったか?
彼だけ防具を全く装備していなかったし武器も腰に差した短剣だけのようだった。
魔道具も身に着けていなかったところを見ると......彼は荷物持ちだろうか?
体も細くあまり鍛えているようには見えなかったが体幹はしっかりしているように見えた。
もしかすると見習いとして鍛えている最中なのかもしれないな。
あの二人に鍛えられているのならば彼もいずれは強くなるのかもしれない。
そう言えば彼について何か報告が上がっていたような......?
まぁ、それはともかく出来ればもう少し彼等との交流は深めておきたかった。
今現在、シンエセラ龍王国で発生している問題を考えれば優秀な冒険者との繋がりは喉から手が出るほどに欲しい。
騎士の中には冒険者を軽視する者達も少なくはない。
だが彼ら程幅広い知識を有し、臨機応変に立ち回れるものは騎士の中でも一握りだろう。
だからこそ彼らとは対等に縁を結ぶべきだと思う。
彼らは国に仕えているわけではない。
国の一大事であっても居を変えるだけだろう。
しかしそこに縁があれば話は別だ。
金銭と命を天秤にかけるという話がないとは言わない。
だが優秀な冒険者であれば、そこまでの危険を冒すことなく金銭を得る手段はいくらでもある。
だからこそ金ではなく縁をもって、共に戦ってくれるように働きかけるしかないのだ。
打算的と言われるだろう、己の為に冒険者を利用していると後ろ指をさされるだろう。
だが、たとえ私の名が地に落ちようとも私は国を、そこに暮らす人々を守りたいのだ。
その為ならば私はどのような誹りを受けても構わない。
全てはシンエセラ龍王国の為に......。

しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。 頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。 「うおおおおお!!??」 慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。 基本出来上がり投稿となります!

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。

彩世幻夜
ファンタジー
2019年ファンタジー小説大賞 190位! 読者の皆様、ありがとうございました! 婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。 実力不足と勇者パーティーを追放された魔物使いだったり。 鑑定で無職判定され村を追放された村人の少年が優秀な剣士だったり。 巻き込まれ召喚され捨てられたヒカルはそんな追放メンツとひょんな事からパーティー組み、チート街道まっしぐら。まずはお約束通りざまあを目指しましょう! ※4/30(火) 本編完結。 ※6/7(金) 外伝完結。 ※9/1(日)番外編 完結 小説大賞参加中

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

処理中です...