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3章 龍王国

第75話 テストをすれば問題がみえてくる

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夜になってから用意してもらった宿に行ったのだが、その宿を経営していたのは俺が最初に助けた親子とその旦那さんだった。
騎士の方々も宿に泊まる物だと思っていたのだが、人数が多いので家に戻れない人たちと一緒に仮設テントで過ごすとの事だった。
村長さんが是非ワイアード様だけでもと家に招待しているのをワイアードさんが固辞していたのが印象的だった。
家を失った人たちが仮設テントで過ごしているのを尻目に宿に泊まるのはちょっと心苦しかったのだが、村長さんだけではなく村の方々からも是非ゆっくり休んで欲しいと言われ、お言葉に甘えさせてもらう事にしたのだ。
宿に到着すると厨房から飛び出て来た旦那さんに泣きながら感謝され、今は食べられない量と種類の料理を次から次へと出してもらっている。
食べても食べても次の料理が追加されていく。
どれもとても美味しいけど際限なく料理が追加されていく......。
わんこそばみたいなノリでばんばん料理が追加されていく......。
因みに食べるのをやめた......諦めた俺の膝には昼間助けた子が座っていて、その子はシャルを抱えていた。
シャルが非常に申し訳なさそうにしているが、まぁ身体強化の効果もあって子供一人にシャルの体重を足してもほぼ重さは感じない。

「リィリ、そんなに食べて大丈夫か?腹壊さねぇか?」

「ん?大丈夫だよ。折角美味しい料理を作ってくれているんだからこっちは美味しく頂かないとね!」

「......会話が成立しねぇ。」

レギさんはいつも通り上品な仕草で食事をしていたがリィリさんの食事量に若干引き気味だ。
リィリさんも非常に丁寧な食事スタイルだが、休みなく目の前にある料理が胃袋へと消えていく。
口に入れた瞬間魔力になって吸収されたりしてないよね......?
そんな失礼なことを考えていたのだが、レギさんも何か言いたそうな表情をしているのが見えた。

「喜んでもらえてとても嬉しいですけど、そろそろ止めないと明日の朝の材料まで使い切りそうね......。」

奥さんが嬉しそうではある物の困ったような笑みを浮かべながら料理の追加を運んでくる。
味に興味があるので新しい料理がきたら一口は貰うのだが、それももう限界。
厨房の方からはまだ料理をしているような音がしているが......流石に奥さんがそろそろ止めるようだ。
奥さんが厨房に入ってすぐ何か軽いもので何かを何かを叩くような音と悲鳴が聞こえた。

「さて、ケイ。色々言いたいことがあるが......。」

奥さんが厨房に行ったのを見届けるとレギさんが説教モードに入った......。
うん、やっぱりあるよね......お説教タイム。

「シャルも一緒だったからと言われてしまえばそれまでになるが、あまり一人で飛び出すな。一人でやれることには限界がある。特に今回の魔物の様な純粋な力だけじゃなく搦め手を持った相手は一人では手も足も出ないこともある。」

「はい、すみません......。」

「それに、前の話覚えているよな?」

ちらりと厨房の方を見ながらレギさんが言葉を濁らせる。

「はい、覚えています。」

レギさんは一度頷くと言葉を続ける。

「ならわかっているとは思うが、気を付けろ。緊急事態だったのは分かるが、やりすぎないように注意するんだ。」

「はい、気を付けます。」

「あぁ、頼む。特に今は騎士団もいるしな、行動には細心の注意を払ってくれ。」

「わかりました。」

状況も状況だったしそこまでこっぴどく怒られたわけではないけれど......色々と釘を挿された。
今回の件は色々と反省しなければらならない点が多い......。
少しして、膝の上で楽しそうにしていた子が舟を漕ぎだしたので今日は解散となった。



部屋に戻っていつものように魔道具作成の練習を始める。
今日までに五枚程魔術式を複製することが出来た。
まだ魔晶石に転写したことはないのだがそろそろ試してみてもいいかもしれない。
転写用の道具を準備して魔晶石と羊皮紙をセットする。
後は魔道具を起動すれば魔晶石に魔術式が転写されるわけだけど......この先の作業は自分でやったことがなかったから少し緊張するな。

「さて、じゃぁ転写してみるか......うまくいくといいけど......。」

緊張を紛らわすように呟きながら魔道具を起動する。
羊皮紙が燃え上がり魔術式が魔晶石へと転写されていく。
程なくして羊皮紙は完全に燃え尽き、魔晶石内部には鈍く光る魔術式が浮いている。
視力を強化して魔晶石内部の魔道式を見てみるが......デリータさんがサンプルとしてくれた魔晶石とはちょっと違うような......。
光り方が歪というか......失敗してる感じがびんびんするね。

「失敗してから気付いたけど。成功した場合は起動すれば魔術式が消えるけど、失敗した場合起動したらマズいよな......何が起こるか分からないし......。」

今回の場合は明らかになんかおかしいから起動するまでもないけど、ぱっと見分からない魔術式の場合どうしたものか......。
鑑定用の魔道具とかないのかなぁ?
あぁ、デリータさんに相談したい......。
とりあえず次の街に行ったら相談出来そうな場所を探す......いや、その前にレギさんに聞いてみるか。

「うーん、この失敗した魔道具どうしようかな......?起動したら爆発するかもしれないからその辺に捨てることも出来ないよなぁ......。」

手の中で失敗作を転がしているとマナスが俺の手に飛び乗ってきた。

「どうしたの?マナス。」

手の中でぷるぷる震えていたマナスが俺の手から飛びのくとそこにあった魔晶石が無くなっていた。

「あれ?マナス、魔晶石食べちゃったの?」

マナスをよく見ると体の中に魔晶石があるのが分かる。
まぁ、マナスは何でも食べるみたいだし問題ないと思うけど......あげようとしたご飯以外をマナスが食べるのは珍しい......というか初めてだな。
何となくマナスの事を撫でる。

『よろしかったのですか?折角ケイ様が手ずから作ったものを。』

「うん、大丈夫だよ。今回のは明らかな失敗作だからね。でもマナス、魔道具を食べて大丈夫かな?」

マナスを撫でるのをやめてじっと見つめるとマナスが魔晶石をぽんっと吐き出した。

「あれ?食べたわけじゃないのかな?」

マナスが肯定のジャンプをする。
吐き出された魔晶石を見ると先ほどまであった魔術式が消えている。

「あれ?元の魔晶石に戻っている?マナス、これ何したの?」

マナスは小さく何度か弾み体を伸ばして魔道具をぽんぽんと叩く。

「失敗作の魔術式を消してくれたのは分かるけど......どうやって?」

『......どうやら魔晶石内の魔力を一度全て吸収、その後魔力を元に戻したようです。』

なるほど......一度魔晶石内部の魔力を空にして魔術式を消した後、魔力を戻したのか......なるほど......なるほど?

「マナスそんなことが出来るの?」

いや、出来ているんだからこの質問は間抜け過ぎるな......。

『マナスは魔力の吸収が出来ますので、その辺は問題なかったようです。』

「なるほど......ありがとう、マナス。これからも手伝ってもらえるかな?まだまだ失敗しそうだしさ。」

マナスは任せておけと言わんばかりに机の上で大きく弾んだ。
よし、これで練習にかかるコストは時間と羊皮紙、インク代だけでいけるな。
とりあえず今書き終わっている分を転写してみるか......?
いや、先に転写した魔術式が狙い通りの効果を発揮するかどうかを確認する方法があるか調べてからにしよう......。
何かデリータさんに連絡を取る方法があればいいのだけど......手紙とかじゃかなり長い事同じ場所に留まらないと返事が受け取れないしな......。
......ファラの配下のネズミ君に配達してもらえないかな......?
いや、ファラならともかく流石に普通のネズミ君達じゃ外を旅するのは無理があるか......。
これも相談してみるか......。
もしネズミ君達が配達してくれるなら......チューメールと言ったところかな。

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