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3章 龍王国

第89話 上級への道

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「わかりました!謝ります、謝ればいいんですよね!?」

「そうじゃ!いたいけな美少女を身動きできなくした挙句見下すようにドヤ顔で勝利宣言しちゃってすみませんと言うのじゃ!」

「すみませんでしたー。勝っちゃってすみませんでしたー。あ、後二回も連続で勝っちゃってどうもすみませんでしたー!」

「むきゃーーー!!」

ナレアさんが両手を振りかぶって襲い掛かってくる。

「ケイ君とは思えないほど子供っぽい事やってるね。」

「そうか......俺には全く見えないがな......。」

「回復力向上は効いているんじゃないの?」

「かけてもらっているが......普段はそこまで強くかけてもらっていないからな......いや、目を開けられるようになってきたな......。」

「うーん、やっぱりすごい威力の光なんだね......回復力向上がかかっててもこんな長い間目が使えないんだね。」

「戦闘中にいきなりやられたら大抵は無力化できるだろうな。人以外に通じるかどうかはわからんが......。」

「そういえばレギにぃは何でナレアちゃんに勝てたの?」

「そうじゃ!なんで妾の攻撃を掴めたのじゃ!?」

俺の目の前でギャーギャー言っていたナレアさんの矛先がレギさんに向かう。
言い合っていた相手の気が逸れたからか熱がすっと下がる。
しかし......俺と全力で言い合っていたと思っていたけど、二人の会話もちゃんと聞こえていたんだな......。
今度はレギさんに向かって詰め寄るナレアさんの後ろ姿を見て何となく感心した。

「お、おぅ。まぁなんだ?勘だ。」

「......妾は誘導されたのじゃな......?」

先程までの態度が嘘のように考え込んだナレアさんがぽつりと呟く。

「誘導ってのは言い過ぎだ。体格差を考えれば徒手で狙ってくる場所は限られてくるだろ?膝や足の甲は防具で固めてあるし、あー金的もな?逆に上半身は今日は軽装だからな。武器を捨てて脇を締めて仰け反れば......。」

「......まっすぐ鳩尾を狙いたくなる、と。」

レギさんの動きによってほぼ選択肢がない状況だったってことだね。
誘導か......戦闘の流れは物凄い力押しって感じだったのに最後の攻防だけ凄く繊細だな......非常にレギさんらしいというか......。

「ふぅ......やはりダンジョン攻略者は一筋縄とはいかないのじゃ。」

「そもそもあの飛んでくる奴が効かなかったのはなんで?」

「む、そうじゃ。それもあったのじゃ、避けるそぶりも見せずにものともせずに突っ込んできて恐ろしかったのじゃ。」

「避けるもなにも......見えなかったからな。下手に避けようとすればいいように嵌められると思ってな。ケイが吹っ飛ばされていたが、割と問題なさそうにその後も動いていただろ?だから踏ん張ればいけるんじゃないかと思って正面から食らってみた。」

「食らってみたって......結構凄い衝撃だったと思いますけど。」

「耐えきれないほどじゃなかったからな......後は足を止めないように気合で突っ込んだ。」

「「......。」」

「う、うむ......そうじゃったか。」

俺とリィリさんが絶句して、ナレアさんはちょっと引いている。

「......僕より理不尽な感じじゃないですか?なんで詰め寄らないんですか?」

「お主も大概じゃからな?でも、レギ殿のは......何が起きたか理解できるからこそ......ちょっと怖いのじゃ。」

ちょっとじゃなくってかなり怖がられている様だ。

「でも慎重に動くのが信条のレギさんにしては随分と強引な戦い方でしたね?」

「模擬戦だからな。普段出来ないことを試すための場だろ?魔術師の見えない攻撃は食らったことなかったからな、経験として知っておきたかったんだ。」

「うーん、言ってることは理解出来ますが......。」

だからって食らいながら突撃は出来ない......。

「そもそも見えないんだから避けようがないだろ?下手に避けようとした方が危ないってもんだ。」

納得はし難いけど理解は出来る......かな?

「豪胆じゃのう。」

「経験は力だからな。機会がある時に試しておくべきだ。」

「なるほどのう......失礼なことを言って済まなかった。」

レギさんの話を聞いてナレアさんが謝る。

「なに、気にすることはない。やりすぎの自覚はあるからな。」

そう言ってレギさんはニッと笑う。

「いや、いい勉強をさせてもらったのじゃ。」

そう言ってナレアさんはレギさんに手を差し出して握手を交わす。
あれ?俺だけ握手してないような......。

「しかし、三人とも相当な腕前じゃな。予想以上じゃった。下級冒険者とは思えないのじゃ。」

「まぁケイは本当に冒険者になりたてだが、俺たちはちょっと理由があったからな。」

「ふむ、そうじゃったか。」

「そういえば、ナレアさんのランクは聞いていませんでしたね?」

遺跡好きな冒険者ってことくらいしか知らないな。

「む?そういえば言っておらんかったかの?妾は上級冒険者じゃ。」

上級冒険者......レギさんが言うにはかなりの化け物って話だったな......。
目を合わせないようにしようと思っていたけど、ちょっとイメージとは違ったな。

「上級だったのか。」

「すごいなー、上級冒険者の友達は初めてだよ!」

「ほほ、大したことはないのじゃ。遺跡の情報が多少手に入りやすいといった程度のものでしかないのう。」

「上級冒険者の方は初めて会いました。」

「そんなに珍しいものでもなかろう?」

「都市国家の方ではあまり見かけないからな。あっちは今攻略予定のダンジョンもないからランクの高い冒険者は少ないんだ。」

「ほう、そうじゃったのか。都市国家の辺りはあまり行ったことがなかったからのう。」

「そういえば上級冒険者に上がるにはどんな条件なんですか?」

中級に上がる条件は聞いたことがあったけど、上級は聞いたことがなかったな。

「ランクアップに興味があるのかの?」

「いえ、そういうわけじゃないんですけど。」

「ふむ、まぁ中級すら目指していない様じゃしのう。まぁよいのじゃ、上級に上がるには中級冒険者になって頑張ればよいのじゃ。あ、気付いたら中級から上級に上がるってパターンもあるのじゃ。」

なるほど、教える気が無いのはよく分かりました。
これは完全にさっきの仕返しだよね?

「ちなみに妾は気づいたら上級に上がっていたパターンじゃ。」

あ、これ本当に知らない可能性あるかな?

「他の冒険者がどうやって上がったかは知らんのう。明文化されておるわけじゃないしのう。」

「え?そうなんですか?」

「うむ。まぁ、ギルドが認めるような功績とかじゃろうな?妾の場合は遺跡関係じゃと思うのじゃ。」

「なるほど、そうだったんですね。」

仕返しとか邪推してすみません。

「うむ、まぁ疑う気持ちはわからんではないのじゃ。」

にやにやと意地の悪い笑みを浮かべるナレアさん。
......うん、バレてますね。

「あー、一通り手合わせも終わった事ですし昼食にでもしませんか?」

視線を逸らした先にはシャルから必死に逃げ回るグルフがいた。
うん、あっちは本当に休憩させてあげないとグルフがやばい。

「ふむ、まぁ良かろう。食事が終わったらフロートボードをしっかり見せてやろう。」

「それは楽しみです。」

「私も乗れるかな?」

「試してみるといいのじゃ。じゃが、結構難しいぞ?」

「面白そうですね、出来れば僕もお願いします。マナス、食事にするからシャル達を呼んできてくれるかな?」

いつものように肩に乗っていたマナスが飛び降りてシャル達の方に移動していく。
その後ろ姿......後ろかどうかわかんないけど......を見送ったナレアさんがぽつりと呟く。

「なんでスライムにそんな複雑な言葉が通じるんじゃ?っていうか呼んでくるってどうやって......?後、動きが早すぎるのじゃ......不思議過ぎて何処から突っ込めばいいのかわからんのじゃ。」

そういえば普通に送り出したけど、どうやるんだろう......?
とりあえず、ナレアさんに聞かれてもこっちも知りたいくらいですとしか言いようがないな......。

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