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――誰もいない夜の公園で花火を一緒に楽しんだ。花火を観ると、もう夏も終わりかと感じた。彼女が手に持っている線香花火が小さく燃えていた。パチパチと燃えている音が切ない。そんな音を聞きながら、俺は考えていた。
今日は色々なことがあったが、結局そのおかげで俺は自分自身を見つめ直すことができた。何より自分にとって彼女の存在がどれだけ大事かに気づかされた。仕事を本当に優先していたら、彼女との大切な時間さえも見失いかけていた。ふとした瞬間に幸せを感じる喜びを思い出させてくれたのは、紛れもなく目の前の彼女だった。
千里の笑顔に癒されると俺は隣で微笑んだ。彼女は線香花火を手に持ちながら綺麗と呟いた。小さく燃えていた火花はどこか儚げで、だけど綺麗で、線香花火は人の一生を表しているとどこかで聞いた事がある。まさにその通りなのかもしれない。人は生まれてからがむしゃらに生きて、いつか終わりが来る。その儚さがこの線香花火のようなのかもしれない。だけどその時、大切な人や、愛しい人が隣にいてくれたら、それ以上に幸せな一生なのかもしれない――。
隣で微笑んでいる彼女に見とれると、不意にキスをした。千里はキスされると頬を赤く染めながら目の前で照れていた。
「なに、急に……?」
千里は照れた様子で聞き返してきた。俺は自分には彼女しかいないと感じると自然に言葉が出た。
「千里、俺と結婚しよう?」
「え…――?」
「俺、解ったんだよ。俺には世界中の誰よりも、千里しかいないんだ。こんなダメな奴を好きでいてくれるお前に俺は心から惚れたんだ。だからずっと傍にいて欲しい。ダメか?」
「晃彦……!」
千里は急に結婚しようと言われると、驚いた表情だった。だけど俺は真剣だった。戸惑っているのは解っていたけど言うなら今しかないと感じた。真剣に話すと千里は小さく頷いて答えた。
「もう…しょうがないなぁ。いいよ、晃彦と結婚してあげる」
「本当に…――?」
不安になって再度聞き返すと、千里は真っ直ぐな瞳で返事をした。
「お願いします……!」
千里が照れた顔で返事をすると、思わず彼女を抱き締めた。ありがとうと言って抱きしめると、千里は腕の中で黙って頷いた。その瞬間、俺は世界で誰よりも幸せ者だと感じた。そして、目の前に居る彼女のことが愛しくて堪らなかった。
――毎年、夏が来ると思い出す。あの日、彼女に結婚しようと言ったプロポーズのことを。
たまに些細な事で夫婦喧嘩もするけど、千里はその度にしょうがないなと言ってくれる。その口癖が俺は今も好きだ。あの日の夏は、俺に忘れかけていたものを思い出させてくれたのかも知れない。
おわり。
今日は色々なことがあったが、結局そのおかげで俺は自分自身を見つめ直すことができた。何より自分にとって彼女の存在がどれだけ大事かに気づかされた。仕事を本当に優先していたら、彼女との大切な時間さえも見失いかけていた。ふとした瞬間に幸せを感じる喜びを思い出させてくれたのは、紛れもなく目の前の彼女だった。
千里の笑顔に癒されると俺は隣で微笑んだ。彼女は線香花火を手に持ちながら綺麗と呟いた。小さく燃えていた火花はどこか儚げで、だけど綺麗で、線香花火は人の一生を表しているとどこかで聞いた事がある。まさにその通りなのかもしれない。人は生まれてからがむしゃらに生きて、いつか終わりが来る。その儚さがこの線香花火のようなのかもしれない。だけどその時、大切な人や、愛しい人が隣にいてくれたら、それ以上に幸せな一生なのかもしれない――。
隣で微笑んでいる彼女に見とれると、不意にキスをした。千里はキスされると頬を赤く染めながら目の前で照れていた。
「なに、急に……?」
千里は照れた様子で聞き返してきた。俺は自分には彼女しかいないと感じると自然に言葉が出た。
「千里、俺と結婚しよう?」
「え…――?」
「俺、解ったんだよ。俺には世界中の誰よりも、千里しかいないんだ。こんなダメな奴を好きでいてくれるお前に俺は心から惚れたんだ。だからずっと傍にいて欲しい。ダメか?」
「晃彦……!」
千里は急に結婚しようと言われると、驚いた表情だった。だけど俺は真剣だった。戸惑っているのは解っていたけど言うなら今しかないと感じた。真剣に話すと千里は小さく頷いて答えた。
「もう…しょうがないなぁ。いいよ、晃彦と結婚してあげる」
「本当に…――?」
不安になって再度聞き返すと、千里は真っ直ぐな瞳で返事をした。
「お願いします……!」
千里が照れた顔で返事をすると、思わず彼女を抱き締めた。ありがとうと言って抱きしめると、千里は腕の中で黙って頷いた。その瞬間、俺は世界で誰よりも幸せ者だと感じた。そして、目の前に居る彼女のことが愛しくて堪らなかった。
――毎年、夏が来ると思い出す。あの日、彼女に結婚しようと言ったプロポーズのことを。
たまに些細な事で夫婦喧嘩もするけど、千里はその度にしょうがないなと言ってくれる。その口癖が俺は今も好きだ。あの日の夏は、俺に忘れかけていたものを思い出させてくれたのかも知れない。
おわり。
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