9 / 172
プロローグ
闇に転じて光りを掴む!
しおりを挟む
ルナは家に帰る最中、何度も合格証明を取り出しては確認しながら歩いていた。
「魔法、使えるんだ・・・」
風、火、水、土、出力できるだけでもこれだけある。悪魔といえば人間からすれば無限に近い魔力を有する存在だ。どれだけの魔法がつかえるようになるのだろう。
希望が蘇って、全てが上手く行くような気持ちになる。
父親の名誉もきっと守られるだろう。魔力を偽装したなんて馬鹿げた事はこの魔力を見れば皆が間違いだと笑うだろうし。
「ただいまぁ」
笑顔で帰宅したルナを両親は驚きとともに出迎えた。つい先日まで塞ぎ込んでいたのだから仕方ないのだが、それ以上に娘が試験の合格証明を持ってきたのだからさらにである。
「合格した!」
「お、おーー!良かったじゃないか!」
暗い雰囲気から一転して、二人は手を取り合って飛び跳ねている。
「よかったわねえ」
「うん!」
「ホントに!」
母も二人が跳ねているのを見て思わず笑みが零れる。
エルドに掛けられた疑惑もこれで晴れるだろう。ルナが倒れた事と魔力を詐称したことが結びつかなくなったのだから。
ましてや言い出しっぺは何かと疑惑の多いガスタンである。それに対して疑惑を向けられたのは真面目一徹のエルドなのだ。
信用の観点から見てもお話にならないだろう。
「いやぁ、良かった良かった・・・ん?」
エルドは安堵して胸を撫で下ろした。その時にふと、ルナの胸元にあるペンダントが見えた。
「これはどうした?」
「これ、あ、うん。ルルイエ先生がくれたの!」
「ルルイエ先生が?」
エルドは娘の言葉に不思議そうな顔をした。
ルナが付けているのは日光教のシンボルだ。エルドは魔法を規制する組織に身を置いていただけに魔法や魔力のコントロールに使われるタリスマンやアミュレットの類にはそれなりに知識がある。
(魔法使いが教会からタリスマンを・・・?)
この世界の巨大宗教である日光教は遍く人に信仰されているが、かなり身近に例外がある。それが魔法使いである。
正確には「熟練した」魔法使いであるが、彼らの中には教義における禁術を学ぶ為に破門されているものもいる。魔法局が設立されたのも元々は日光教の管理から外れた魔法使いの管理と監視が目的であるが、彼等の探究心は困り物である。
そんな中で自分達が見知っただけでも卓越した魔法技術を見せた彼女が日光教と関係があるとは思えなかった。
(彼女が・・・どういうことだろうか)
エルドは少し訝しんだがそれを振り払うような出来事が。
ビュオッ!
風が吹き込んでくる。何事かと身構えた三人の視線の先には一枚の封筒が。ひらひらと舞うそれはルナの手に収まる。
「ルルイエ先生からだ・・・ええと」
封筒を開いて中身を見ると今回の試験の合格を祝う文言が書かれている。そして後半にはこう書かれていた。
「――という訳で、しばらくは自分の魔力を注意深く見てください。貴女の体調によくない変化があるとことだからね。それと、日光教の聖人、エトナーに面通ししてもらってくださいな。あの人、めんどくさがりだけど、見る目は確か。困ったときは大いに助けになってくれるはずよ」
夕食後、ルナがルルイエから託された封筒を開いたとき、そこには綺麗な手書きの文字でそう書かれていた。
「・・・エトナー?」
娘が首を傾げながら読み上げた名に、エルドの手がぴたりと止まる。
「その名前・・・どこで聞いた?」
「先生からの手紙に。『面通ししてきて』って」
エルドは眉をひそめ、深く息をついた。
「聖人エトナー・・・日光教の高位聖職者のひとりだ。かの教団創設期から今なお現役と言われている……真偽不明の、伝説的な存在だ。不死身だの、神の寵児だの、ぐうたらだの、酒浸りだの――真逆の噂ばかりが飛び交っている。だが、共通して言えるのは――」
「・・・言えるのは?」
「『会うと厄介』ということだ」
「うわぁ・・・」
思わず顔をしかめるルナ。しかし、エルドの心には少し安堵が広がっていた。
これほどの大物が関与しているというのなら、あのペンダントの不自然な反応も、娘の異常な回復力も、ある程度は筋が通る。
(ルルイエ先生が、エトナーを頼るほどなら……この件は、本当に教会の大局に関わる何かかもしれないな)
娘の力は偶然ではなく、意図的に導かれたもの――そう考えることで、彼の疑念は一時的に霧散していく。
ルナは手紙の続きを読む。
「『場所は修道会の裏手にある古い礼拝堂よ。
たぶん彼女、掃除もせずにごろ寝してると思うけど……中身は保証するわ。
あと、間違ってもお酒を差し入れに持っていかないように。話が進まなくなるから』・・・か。すごい人、なのかなあ?」
「さあな。私は会ったことがない。が――彼女に会った者は、決まってこう言うらしい」
「なんて?」
エルドは肩をすくめ、ため息まじりに答えた。
「“もう二度と関わりたくない”」
「うわぁあ・・・」
本格的にルナの表情が青ざめるのだった。
「魔法、使えるんだ・・・」
風、火、水、土、出力できるだけでもこれだけある。悪魔といえば人間からすれば無限に近い魔力を有する存在だ。どれだけの魔法がつかえるようになるのだろう。
希望が蘇って、全てが上手く行くような気持ちになる。
父親の名誉もきっと守られるだろう。魔力を偽装したなんて馬鹿げた事はこの魔力を見れば皆が間違いだと笑うだろうし。
「ただいまぁ」
笑顔で帰宅したルナを両親は驚きとともに出迎えた。つい先日まで塞ぎ込んでいたのだから仕方ないのだが、それ以上に娘が試験の合格証明を持ってきたのだからさらにである。
「合格した!」
「お、おーー!良かったじゃないか!」
暗い雰囲気から一転して、二人は手を取り合って飛び跳ねている。
「よかったわねえ」
「うん!」
「ホントに!」
母も二人が跳ねているのを見て思わず笑みが零れる。
エルドに掛けられた疑惑もこれで晴れるだろう。ルナが倒れた事と魔力を詐称したことが結びつかなくなったのだから。
ましてや言い出しっぺは何かと疑惑の多いガスタンである。それに対して疑惑を向けられたのは真面目一徹のエルドなのだ。
信用の観点から見てもお話にならないだろう。
「いやぁ、良かった良かった・・・ん?」
エルドは安堵して胸を撫で下ろした。その時にふと、ルナの胸元にあるペンダントが見えた。
「これはどうした?」
「これ、あ、うん。ルルイエ先生がくれたの!」
「ルルイエ先生が?」
エルドは娘の言葉に不思議そうな顔をした。
ルナが付けているのは日光教のシンボルだ。エルドは魔法を規制する組織に身を置いていただけに魔法や魔力のコントロールに使われるタリスマンやアミュレットの類にはそれなりに知識がある。
(魔法使いが教会からタリスマンを・・・?)
この世界の巨大宗教である日光教は遍く人に信仰されているが、かなり身近に例外がある。それが魔法使いである。
正確には「熟練した」魔法使いであるが、彼らの中には教義における禁術を学ぶ為に破門されているものもいる。魔法局が設立されたのも元々は日光教の管理から外れた魔法使いの管理と監視が目的であるが、彼等の探究心は困り物である。
そんな中で自分達が見知っただけでも卓越した魔法技術を見せた彼女が日光教と関係があるとは思えなかった。
(彼女が・・・どういうことだろうか)
エルドは少し訝しんだがそれを振り払うような出来事が。
ビュオッ!
風が吹き込んでくる。何事かと身構えた三人の視線の先には一枚の封筒が。ひらひらと舞うそれはルナの手に収まる。
「ルルイエ先生からだ・・・ええと」
封筒を開いて中身を見ると今回の試験の合格を祝う文言が書かれている。そして後半にはこう書かれていた。
「――という訳で、しばらくは自分の魔力を注意深く見てください。貴女の体調によくない変化があるとことだからね。それと、日光教の聖人、エトナーに面通ししてもらってくださいな。あの人、めんどくさがりだけど、見る目は確か。困ったときは大いに助けになってくれるはずよ」
夕食後、ルナがルルイエから託された封筒を開いたとき、そこには綺麗な手書きの文字でそう書かれていた。
「・・・エトナー?」
娘が首を傾げながら読み上げた名に、エルドの手がぴたりと止まる。
「その名前・・・どこで聞いた?」
「先生からの手紙に。『面通ししてきて』って」
エルドは眉をひそめ、深く息をついた。
「聖人エトナー・・・日光教の高位聖職者のひとりだ。かの教団創設期から今なお現役と言われている……真偽不明の、伝説的な存在だ。不死身だの、神の寵児だの、ぐうたらだの、酒浸りだの――真逆の噂ばかりが飛び交っている。だが、共通して言えるのは――」
「・・・言えるのは?」
「『会うと厄介』ということだ」
「うわぁ・・・」
思わず顔をしかめるルナ。しかし、エルドの心には少し安堵が広がっていた。
これほどの大物が関与しているというのなら、あのペンダントの不自然な反応も、娘の異常な回復力も、ある程度は筋が通る。
(ルルイエ先生が、エトナーを頼るほどなら……この件は、本当に教会の大局に関わる何かかもしれないな)
娘の力は偶然ではなく、意図的に導かれたもの――そう考えることで、彼の疑念は一時的に霧散していく。
ルナは手紙の続きを読む。
「『場所は修道会の裏手にある古い礼拝堂よ。
たぶん彼女、掃除もせずにごろ寝してると思うけど……中身は保証するわ。
あと、間違ってもお酒を差し入れに持っていかないように。話が進まなくなるから』・・・か。すごい人、なのかなあ?」
「さあな。私は会ったことがない。が――彼女に会った者は、決まってこう言うらしい」
「なんて?」
エルドは肩をすくめ、ため息まじりに答えた。
「“もう二度と関わりたくない”」
「うわぁあ・・・」
本格的にルナの表情が青ざめるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる