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アイゼンヘイムへ
いつの時代でもいるんだね、暗君って
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「馬鹿げた話だ!王族でもなく、貴族ですらない!ましてや女子一人を差し出せと来たか!ワシに向かって!」
オットーは手紙を握りつぶし、机に叩きつける。彼の怪力を受けた机は無残にも粉砕され手紙や書類があちこちに飛び散る。大臣達がその光景に巻き込まれて悲鳴を上げるやら転げまわるやらで大変な騒ぎである。
「ぬっ!?」
握りつぶした手紙は怪力とその際にほとばしった魔力の残滓を受けて灰になるはずであったが驚いた事に皺すら残らず、緩やかに形を戻すと僅かに丸めた痕跡のみを残して机の残骸に落ちた。
「これは・・・、契約術式を組み込んで居るのか・・・潰せんではないか」
「契約となりますと双方の約定、その遵守を護る意思があった事が窺えますが・・・」
契約術を施していたなら物理的に破壊するのは不可能である。この際に限っては五属性の魔法なども『物理的』に含まれるのだ。
「くだらん!アホらしい!そもそもそんな約束をする馬鹿がどこに・・・」
そう思いつつイライラする感情をなんとか飲み込んでオットーは手紙を読み進める。
「なになに・・・『先代国王ゴトフリート・フォン・ガルデンヘイムとの約定によりエーリカ・フォン・ガルデンヘイムの再来たる淑女を故国の客将として招き、陛下の教育係として招く所存である』・・・クソ親父かぁぁぁぁぁ!!!!!」
怒号とともに行き場の無い二発目の拳骨が今度は部屋中に吹き荒れた。大臣達はもはや職務も投げ捨てて部屋から飛び出したが大半は間に合わず壁ごと吹き飛び、部屋の外に出た者もろとも飛んでいった。
「あのクソ親父!散々祖母様と祖父様に迷惑をかけておきながら今度は他人にまで迷惑をかけるのか!」
先代国王、オットーの父であるゴトフリートはガルデンヘイム始まって以来の凡愚な国王として有名であり婚約者である母を共にして試練に挑み、事もあろうに敗走した挙句彼女の手柄を譲ってもらう形で継承権を得た為妻に終生頭が上がらず、両親と妻との板ばさみに苦しむハメになったという。さらに残念なのは武芸どころか執政に置いても叱責をかろうじて免れるレベルの失点を連発し、祖父に容赦なく罵られる姿をオットーは見ていた。
オットーの名付けの際に会議に呼ばれすらしなかったのだから彼に対する期待の程が窺えるというもの。経済にはそれなりに知識があったものの生来の臆病な性格が災いしてか天災に備えるという名目で各地から多量の税を集めたため国庫は潤ったもののその為に重税に苦しむ領地が続出するという失態を犯した為堪忍袋の緒が切れた祖父から退位を迫られたという。
「あの馬鹿は死んだご先祖様の代わりに『試練の洞窟』で死ぬべきだった!」
オットーに王位と全権が渡った事を知った彼の祖父は安堵と共にそう呪詛を吐き、祖母エーリカが亡くなった一ヵ月後、オットーの即位式を見届けると静かに息を引き取ったという。
その後、ゴトフリートは讃えるほどの偉業もなく、友人もそんなに居なかったので前王妃となった妻に連れられて僻地に隠棲しているという。
「宝剣『モルゲントロート』をもてい!介錯してくれるわ!」
「陛下!落ち着いてくだされ!」
「やかましい!祖父様に代わってワシが彼奴めを魔物の餌にしてくれるわ!」
「あんなのでも御身の父ですよ!」
足や腰にすがり付いて止める大臣を引き摺りながらオットーは宝物庫へと歩みを進める。
「彼奴が溜め込んだ無駄金を寂れた領地が復興するように潤滑させるのに一体何年かかったと思っているのだ!あの時もワシが尻拭いした!あの時もだ!」
落第スレスレ、そして最期に落第したゴトフリートの跡を継いだオットーに待ち受けていたのは過酷な『後始末』だった。空手形に等しい約定なども多く、祖父母の奔走の挙句に得られた領土や宝物なども大半が散逸してしまっており、オットーはそれらを自身の力のみで取り戻さねばならなかった。幸いにしてオットーはそれが叶うだけの実力があり、跡継ぎ候補の二人の息子は才能に恵まれていた。
やっとこさ安心・・・そう思った矢先にこれである。彼の怒りも仕方ないのかもしれない。
「ぶっ殺してやるぅ!」
「なに物騒な事を言ってるの」
お坊ちゃん達を運んで帰宅した途端にこれである。始めて見たマジ切れ顔のお父さんである。
「おお、スカサハ殿、すまんな・・・見苦しい所を」
転がった大臣達が死屍累々といった有様で滅茶苦茶になった廊下に転がっている。
「いいよ、それより頭を冷やしたら事情を聞かせてくれる?差し支えない程度でいいから」
「事情は話す、そなたにも関係のある話になってしまった故にな」
非常に言い難そうだがお父さんはぽつりぽつりと事情を教えてくれた。
オットーは手紙を握りつぶし、机に叩きつける。彼の怪力を受けた机は無残にも粉砕され手紙や書類があちこちに飛び散る。大臣達がその光景に巻き込まれて悲鳴を上げるやら転げまわるやらで大変な騒ぎである。
「ぬっ!?」
握りつぶした手紙は怪力とその際にほとばしった魔力の残滓を受けて灰になるはずであったが驚いた事に皺すら残らず、緩やかに形を戻すと僅かに丸めた痕跡のみを残して机の残骸に落ちた。
「これは・・・、契約術式を組み込んで居るのか・・・潰せんではないか」
「契約となりますと双方の約定、その遵守を護る意思があった事が窺えますが・・・」
契約術を施していたなら物理的に破壊するのは不可能である。この際に限っては五属性の魔法なども『物理的』に含まれるのだ。
「くだらん!アホらしい!そもそもそんな約束をする馬鹿がどこに・・・」
そう思いつつイライラする感情をなんとか飲み込んでオットーは手紙を読み進める。
「なになに・・・『先代国王ゴトフリート・フォン・ガルデンヘイムとの約定によりエーリカ・フォン・ガルデンヘイムの再来たる淑女を故国の客将として招き、陛下の教育係として招く所存である』・・・クソ親父かぁぁぁぁぁ!!!!!」
怒号とともに行き場の無い二発目の拳骨が今度は部屋中に吹き荒れた。大臣達はもはや職務も投げ捨てて部屋から飛び出したが大半は間に合わず壁ごと吹き飛び、部屋の外に出た者もろとも飛んでいった。
「あのクソ親父!散々祖母様と祖父様に迷惑をかけておきながら今度は他人にまで迷惑をかけるのか!」
先代国王、オットーの父であるゴトフリートはガルデンヘイム始まって以来の凡愚な国王として有名であり婚約者である母を共にして試練に挑み、事もあろうに敗走した挙句彼女の手柄を譲ってもらう形で継承権を得た為妻に終生頭が上がらず、両親と妻との板ばさみに苦しむハメになったという。さらに残念なのは武芸どころか執政に置いても叱責をかろうじて免れるレベルの失点を連発し、祖父に容赦なく罵られる姿をオットーは見ていた。
オットーの名付けの際に会議に呼ばれすらしなかったのだから彼に対する期待の程が窺えるというもの。経済にはそれなりに知識があったものの生来の臆病な性格が災いしてか天災に備えるという名目で各地から多量の税を集めたため国庫は潤ったもののその為に重税に苦しむ領地が続出するという失態を犯した為堪忍袋の緒が切れた祖父から退位を迫られたという。
「あの馬鹿は死んだご先祖様の代わりに『試練の洞窟』で死ぬべきだった!」
オットーに王位と全権が渡った事を知った彼の祖父は安堵と共にそう呪詛を吐き、祖母エーリカが亡くなった一ヵ月後、オットーの即位式を見届けると静かに息を引き取ったという。
その後、ゴトフリートは讃えるほどの偉業もなく、友人もそんなに居なかったので前王妃となった妻に連れられて僻地に隠棲しているという。
「宝剣『モルゲントロート』をもてい!介錯してくれるわ!」
「陛下!落ち着いてくだされ!」
「やかましい!祖父様に代わってワシが彼奴めを魔物の餌にしてくれるわ!」
「あんなのでも御身の父ですよ!」
足や腰にすがり付いて止める大臣を引き摺りながらオットーは宝物庫へと歩みを進める。
「彼奴が溜め込んだ無駄金を寂れた領地が復興するように潤滑させるのに一体何年かかったと思っているのだ!あの時もワシが尻拭いした!あの時もだ!」
落第スレスレ、そして最期に落第したゴトフリートの跡を継いだオットーに待ち受けていたのは過酷な『後始末』だった。空手形に等しい約定なども多く、祖父母の奔走の挙句に得られた領土や宝物なども大半が散逸してしまっており、オットーはそれらを自身の力のみで取り戻さねばならなかった。幸いにしてオットーはそれが叶うだけの実力があり、跡継ぎ候補の二人の息子は才能に恵まれていた。
やっとこさ安心・・・そう思った矢先にこれである。彼の怒りも仕方ないのかもしれない。
「ぶっ殺してやるぅ!」
「なに物騒な事を言ってるの」
お坊ちゃん達を運んで帰宅した途端にこれである。始めて見たマジ切れ顔のお父さんである。
「おお、スカサハ殿、すまんな・・・見苦しい所を」
転がった大臣達が死屍累々といった有様で滅茶苦茶になった廊下に転がっている。
「いいよ、それより頭を冷やしたら事情を聞かせてくれる?差し支えない程度でいいから」
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