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アイゼンヘイムへ
途上で
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時に低空を、時に高高度を飛びまわりながら私はルーンちゃんの背に乗って向かう。
紫電閃ほどではないが彼女の飛行スピードも結構な物であっと言う間にアイゼンヘイムらしき都市が見えてくる。
『主様、見えてきました』
「うん、そのようだね。我らの戦場はあそこだ、愚か者のの末路はどれだけ滑稽なのだろうね」
『過ぎた野心の代償は破滅である・・・と、五龍様も仰っていましたね』
「そうだよ、知らないとは言え彼らは龍の尾を踏んだ。師匠たる地龍様のおわす神殿を畏敬も何も無い連中が踏み荒らそうとしているんだから・・・どうなるべきか、わかるでしょう?」
『追い散らし、撃破しましょう』
「ぬるいな、天罰が必要だよ・・・圧倒的な力でもたらされる天罰が」
知らない内に笑みがこぼれる。体を駆け巡る興奮に瞳孔がきゅっと締まり、辺りがより鮮明に映った。素晴らしい場所に向かうような気持ちが溢れてしょうがない。
『・・・まるで火龍様のような事を仰るのですね』
「火龍師匠・・・?」
『今までの貴女ならば誰かを傷つける事を楽しむような事は言わなかったでしょう。どうなさったのです?』
「えっ・・・私が・・・?楽しむ・・・?何を・・・?」
私はルーンちゃんの言葉にキュッと胃が締まるような感覚に切り替わった。え?なに、私は何を言ったの?
「私は・・・?戦うの・・・今から・・・でも、その、楽しくなんか・・・えっ?」
『主様?』
『ルーン!余計な真似を!』
眩暈を覚えた私の頭に火龍師匠の声が響いた。それと同時に火花のような光が私の視界を埋め尽くしていく。
「我が・・・師様・・・」
『主様!お気を確かに・・・!』
『退け!小娘が!』
弾かれるように私とルーンちゃんの体が離れていく。空中に放り出された体に普段では考えられないような力が集まるのを感じる。
火だ、それも大きな、それでいて、ただの火じゃない。火龍師匠が使う、根源の火だ。
『英雄となるは今ぞ、邪魔立ては許さぬ』
『ならばそれは貴様の手によってではなく姫君の手と意思によって為されるべきだ』
『地龍!』
火龍師匠の力をかき消すように現れたのは五龍の中で最も頑強で、最も慈愛に満ちた存在。地龍師匠だ。
『この地は我が本体の鎮座する場ぞ、いかに貴様とて我が力を押しのける事は敵うまい』
『ぐぬっ・・・』
『姫君の心を護るべくして動いたのだろうが・・・姫君を殺戮者に変える事だけは許さぬ!失せよ!火龍!』
『ひ、姫君・・・ちっ、わかった・・・此度は譲るが・・・』
『くどい!』
火の属性が完全に弾き出され、地属性の魔力が私の体に満ちていく。穏やかで、さながら大地に抱きとめられるような膨大な魔力だ。
『姫君、これよりは我が大地の領域ぞ。安心するがいい』
「し、師匠・・・私は・・・?」
『主殿!』
『ルーン、良くぞ主人の心を護った、従者の鑑であるぞ』
『地龍様!良かった・・・』
空中に放り出されていた私の体をルーンちゃんが再びキャッチしてくれた。
『火龍には我らがキツく申し付けておく、ゆえに安心せい』
「火龍師匠は・・・私に何を?」
『精神をリンクさせて姫君の心を強化しようとしたようだが・・・そうなれば火龍の心と同化してしまいかねない危険なものであった。一方通行ゆえにその危険性が高まっておったわ』
地龍師匠の魔力が私の中で揺れる。強い憤りの感情が感じられるほどに強く揺れている。
「そうだったんだ・・・怖かった・・・けど、私の為だって言うなら・・・許してあげようかな」
『主様!何を・・・貴女は自身の心を無くすところだったという事ですよ?』
「でも戦うって事はとっても恐い事だから・・・それから護ってくれる積りだったんでしょう?」
『それはそうですが・・・!』
『よせ、ルーン。もうよいわ、彼女の心は取り戻された・・・この言葉を聞けばわかろう。だがこの状態では戦など臨むべくも無い、休ませてやるがよい』
ルーンちゃんは渋々頷くと私を抱えたまま地面へと降り立つ。地龍師匠の加護は地面に降り立つと同時に強くなり、私の体をしっかりと支えてくれる。それでも足元が覚束ないのでルーンちゃんに寄りかかった体勢になる。
「ルーンちゃん、ありがとう・・・お陰で助かったよ」
『良いのです、貴女が無事なら・・・私はこれほどの喜びはありません」
人間の形態に戻って私を支えてくれるルーンちゃん。しかし火龍師匠と地龍師匠の力が体内でせめぎ合った事が想像以上に体力を使ったらしい、肩を貸してもらいながらやっとこさ私は大きな木の洞に体を収める。
「ここなら雨露も凌げます、私は薪と食事を用意しますので」
「わかった」
私は委細全てをルーンちゃんに任せ横になると洞の中の暖かさにまどろむ。
『火龍、何か申し開きはあるか?』
『左様、返答如何では貴様とて容赦せぬぞ』
『独占を画策するとは下策も下策、地龍の慈悲に、なにより姫君の慈悲に感謝するのだな』
試練の洞窟に集まった石像の目が再び怪しく輝く。地龍の石像に光は灯っていなかったが彼らにとってそれはたいした事ではなかった。
『しかし・・・戦ともなれば姫君に対する心労はどうなる?戦は姫君には辛かろう?』
しょんぼりした様子の火龍に残った三龍も少しばかり考え込む。
『しかしそれとこれは全くの別物、貴様の危険な行為を看過する事はできぬ』
『左様、いかに己の属性が飯炊きにしか使われておらぬからと逸った貴様が悪い』
『ぐぬぬ・・・』
『それに対策ならば地龍に任せれば良かろう』
『雷龍の言う通りだ、地龍は貴様に劣らぬ戦の神としての側面を持っておるではないか』
地は全ての生き物を受け止める。しかし一度怒ればその力は凄まじく、鳴動する大地はあらゆる物を粉砕し、裂けた地はあらゆる物を飲み込み、山を生み出し、果ては海さえも生み出す脅威の力を持つ。
『全てを産み、全てを喰らう破壊と再生の神、そう呼ばれる地龍ならばよきに計らおう』
水龍の言葉にも不満げな火龍であったがやがて諦めたように黙り込んだ。
紫電閃ほどではないが彼女の飛行スピードも結構な物であっと言う間にアイゼンヘイムらしき都市が見えてくる。
『主様、見えてきました』
「うん、そのようだね。我らの戦場はあそこだ、愚か者のの末路はどれだけ滑稽なのだろうね」
『過ぎた野心の代償は破滅である・・・と、五龍様も仰っていましたね』
「そうだよ、知らないとは言え彼らは龍の尾を踏んだ。師匠たる地龍様のおわす神殿を畏敬も何も無い連中が踏み荒らそうとしているんだから・・・どうなるべきか、わかるでしょう?」
『追い散らし、撃破しましょう』
「ぬるいな、天罰が必要だよ・・・圧倒的な力でもたらされる天罰が」
知らない内に笑みがこぼれる。体を駆け巡る興奮に瞳孔がきゅっと締まり、辺りがより鮮明に映った。素晴らしい場所に向かうような気持ちが溢れてしょうがない。
『・・・まるで火龍様のような事を仰るのですね』
「火龍師匠・・・?」
『今までの貴女ならば誰かを傷つける事を楽しむような事は言わなかったでしょう。どうなさったのです?』
「えっ・・・私が・・・?楽しむ・・・?何を・・・?」
私はルーンちゃんの言葉にキュッと胃が締まるような感覚に切り替わった。え?なに、私は何を言ったの?
「私は・・・?戦うの・・・今から・・・でも、その、楽しくなんか・・・えっ?」
『主様?』
『ルーン!余計な真似を!』
眩暈を覚えた私の頭に火龍師匠の声が響いた。それと同時に火花のような光が私の視界を埋め尽くしていく。
「我が・・・師様・・・」
『主様!お気を確かに・・・!』
『退け!小娘が!』
弾かれるように私とルーンちゃんの体が離れていく。空中に放り出された体に普段では考えられないような力が集まるのを感じる。
火だ、それも大きな、それでいて、ただの火じゃない。火龍師匠が使う、根源の火だ。
『英雄となるは今ぞ、邪魔立ては許さぬ』
『ならばそれは貴様の手によってではなく姫君の手と意思によって為されるべきだ』
『地龍!』
火龍師匠の力をかき消すように現れたのは五龍の中で最も頑強で、最も慈愛に満ちた存在。地龍師匠だ。
『この地は我が本体の鎮座する場ぞ、いかに貴様とて我が力を押しのける事は敵うまい』
『ぐぬっ・・・』
『姫君の心を護るべくして動いたのだろうが・・・姫君を殺戮者に変える事だけは許さぬ!失せよ!火龍!』
『ひ、姫君・・・ちっ、わかった・・・此度は譲るが・・・』
『くどい!』
火の属性が完全に弾き出され、地属性の魔力が私の体に満ちていく。穏やかで、さながら大地に抱きとめられるような膨大な魔力だ。
『姫君、これよりは我が大地の領域ぞ。安心するがいい』
「し、師匠・・・私は・・・?」
『主殿!』
『ルーン、良くぞ主人の心を護った、従者の鑑であるぞ』
『地龍様!良かった・・・』
空中に放り出されていた私の体をルーンちゃんが再びキャッチしてくれた。
『火龍には我らがキツく申し付けておく、ゆえに安心せい』
「火龍師匠は・・・私に何を?」
『精神をリンクさせて姫君の心を強化しようとしたようだが・・・そうなれば火龍の心と同化してしまいかねない危険なものであった。一方通行ゆえにその危険性が高まっておったわ』
地龍師匠の魔力が私の中で揺れる。強い憤りの感情が感じられるほどに強く揺れている。
「そうだったんだ・・・怖かった・・・けど、私の為だって言うなら・・・許してあげようかな」
『主様!何を・・・貴女は自身の心を無くすところだったという事ですよ?』
「でも戦うって事はとっても恐い事だから・・・それから護ってくれる積りだったんでしょう?」
『それはそうですが・・・!』
『よせ、ルーン。もうよいわ、彼女の心は取り戻された・・・この言葉を聞けばわかろう。だがこの状態では戦など臨むべくも無い、休ませてやるがよい』
ルーンちゃんは渋々頷くと私を抱えたまま地面へと降り立つ。地龍師匠の加護は地面に降り立つと同時に強くなり、私の体をしっかりと支えてくれる。それでも足元が覚束ないのでルーンちゃんに寄りかかった体勢になる。
「ルーンちゃん、ありがとう・・・お陰で助かったよ」
『良いのです、貴女が無事なら・・・私はこれほどの喜びはありません」
人間の形態に戻って私を支えてくれるルーンちゃん。しかし火龍師匠と地龍師匠の力が体内でせめぎ合った事が想像以上に体力を使ったらしい、肩を貸してもらいながらやっとこさ私は大きな木の洞に体を収める。
「ここなら雨露も凌げます、私は薪と食事を用意しますので」
「わかった」
私は委細全てをルーンちゃんに任せ横になると洞の中の暖かさにまどろむ。
『火龍、何か申し開きはあるか?』
『左様、返答如何では貴様とて容赦せぬぞ』
『独占を画策するとは下策も下策、地龍の慈悲に、なにより姫君の慈悲に感謝するのだな』
試練の洞窟に集まった石像の目が再び怪しく輝く。地龍の石像に光は灯っていなかったが彼らにとってそれはたいした事ではなかった。
『しかし・・・戦ともなれば姫君に対する心労はどうなる?戦は姫君には辛かろう?』
しょんぼりした様子の火龍に残った三龍も少しばかり考え込む。
『しかしそれとこれは全くの別物、貴様の危険な行為を看過する事はできぬ』
『左様、いかに己の属性が飯炊きにしか使われておらぬからと逸った貴様が悪い』
『ぐぬぬ・・・』
『それに対策ならば地龍に任せれば良かろう』
『雷龍の言う通りだ、地龍は貴様に劣らぬ戦の神としての側面を持っておるではないか』
地は全ての生き物を受け止める。しかし一度怒ればその力は凄まじく、鳴動する大地はあらゆる物を粉砕し、裂けた地はあらゆる物を飲み込み、山を生み出し、果ては海さえも生み出す脅威の力を持つ。
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