上 下
54 / 282
集落をつくろうの章

フィゼラー大森林開拓計画!

しおりを挟む
その昔、神は何も無いこのただ広いだけのこの世界に生命を創造することにした。しかしながら神は生命を作ることが出来てもそれ以外のものを作るのは苦手だった。
そこで登場したのが何を隠そう、この世界の原初の精霊の頂点にして生物の頂点であるドラゴンである。火・水・風・土のドラゴン達が世界を創造するのを助けたのだと言う。
 火のドラゴンが太陽となって空を照らし、水のドラゴンが火のドラゴンの力を使って恵みの雨を齎し、風のドラゴンがその雨とそれによって生まれた植物の種を運び、土のドラゴンが大地を耕して植物と生まれた生命を育んだ。
その中で火のドラゴンは最も力強く、勇敢であった為四元素のドラゴン達の王として君臨することとなった。これが原初の王と呼ばれる所以である。
やがて幾多の年月の果てに水のドラゴンが死んで海が、風のドラゴンが死ぬ事でこの世界に大小さまざまな風が生まれた。土のドラゴンは長生きしたがやがて死ぬと大きな大陸となった。しかし火のドラゴンは何時まで経っても死ぬことはなく、彼等を忘れないように時折海を混ぜて津波や渦を作り、風を撫でて嵐や竜巻を。大地を蹴って地震や火山の噴火を起こした。
やがて孤独と悲しみから頻度を上げて暴れ続けた火のドラゴンを慰める為に神は長命の性質を持つエルフ達と力は無いが同胞であるドラゴン達を作って悲しみを和らげたという。
そういった理由からか真偽は定かではないがドラゴンや力の強いエルフかダークエルフが死ぬと災害が起こるといわれている。

ほうほう、つまり火を操るドラゴンの中で俺は神話に出てくるドラゴンに瓜二つと言う事か・・・でも俺ってただの龍じゃなかったのか?!
そういえば俺は元々神様の力でドラゴンになったのだったか・・・とんでもない力を授かった物だ。
 蘇る記憶の中から当てはめて見ると白と黒の龍はそれなりに高位のドラゴンだったようだ。ざっくりと分けるとまず頂点に立つのは神話に語られる四元素のドラゴン。次に精霊の力を多く取り込んだ色つきのドラゴン達。そして底辺に存在するドラゴンの末裔達。底辺まで来ると知能を持たない大きなトカゲレベルの者も多いが彼等ならば軍隊ならばどうにか出来るようだ。
しかし、知能を有するレベルのドラゴンとなるとそうは行かない。個体数こそ少ないものの膂力、魔力共にまさしく人間の手に負えないものとなっており、長命故の知識の豊富さなども考慮すると強い上に賢いというチート性能なのだ。

わーい、神話の生物になっちまった。

 絶賛土下座中の彼女達を他所に現実逃避を重ねていたが俺は意を決して彼女達に語り掛ける。

 『お前達の祖先達が流した血と涙をすぐに忘れろとは言わぬ、だが国を失い、仕えるべきドラゴン達まで失せた今、再び手を取り合うべきではないか?』
 「・・・ですが、今更何をすればいいのか・・・」

そう言うと俺は胸を張って答えてやった。

 『簡単なこと、此処に国を作るのだ。ダークエルフとエルフ達の住む亜人達の・・・いや龍の使徒達の国を!』
 「ええっ?!」
 『お前達は何ゆえにこの世界に生を受けたかを考えよ、そしてこれよりは私を見よ。私がお前達の前にある限りエルフとダークエルフが割れることはありえん』
 「おお・・・」

 驚いた表情を見せていたダークエルフ達にも徐々に期待に満ちた表情になり、やがて敵意は完全に消えた。

 「それじゃあ今からお前達を解放するが・・・先立ってお前達に同胞達への伝達を頼みたい」
 「了解しました・・・ですが今目の前で起こったことがまだ信じられません・・・まさか原初の王たる火龍様が私達の目の前にいるなんて・・・」
 「証を見せようか・・・アウロラ、どこだ?』
 『はい、存じております旦那様、もうじきにそちらへ参りますね』

 待つこと一時間ほど。解いた縄を片し、食料を新鮮な物に交換してダークエルフ達に配る。総勢30人ほどに膨れ上がっていたが全員の自殺用の呪印を破壊しておいたので人数も減っていないし、長年流浪の生活を送っていたからか野宿程度で体調を崩している者もいない。

 「旦那様、参上しました」

アウロラが合流できたので此処で改めて彼女の立ち位置を説明する。
 皆が一様に羨ましそうに腹と首にある龍のタトゥを見ていたが概ね納得してくれたし、エルフとダークエルフの一族から一人ずつ嫁を娶る予定だと言うことも伝える。
ダークエルフの代表は計画に一番に賛同したと言うことでアウロラを、エルフ代表は決まっていないが追々決めていこうと思う。立場的に必要になるなら政略結婚もやむを得ないだろうが。
カルネ達に他のダークエルフ達への伝達を任せ、俺達は再びこの場に二人だけ残った。

 「旦那様、私達はこれからなにを?」
 「これからは開拓だ。俺はこの一帯を切り開いて国を建てるためにな」

フィゼラー大森林の木は建材としても非常に高価で、産業として売り込むのに適している。売りつける先も目星がついているのでまずはここらを人が住める状態にするのが肝要である。

 『えっさ、ほいさ』

ドラゴンに変身して木を引っこ抜いては一箇所に集め、森をどんどんと切り開いていく。変身すれば高くても肩くらいの木なので膂力とあわせて簡単に引っこ抜いていける。まさか神話の生物がこんなところで樵の真似事をしているなどとは思わないだろうが流石に体の大きさのお陰かどんどんと森は切り拓かれていく。
その後にアウロラに捕虜を詰め込んでいたドーム型の牢屋を改造して炭焼き釜を作らせる。牢の外郭と床は土の魔法で地面を固めており手はおろかピッケルで叩いてもビクともしない釜になっているのだ。
 基本的に薪の利用が主なこの世界では炭の利用は確実にヒットするはずだ。
 煙が少ないし火力も上がるので便利だしな。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

イメプ設定集 - オトナのたのしいごっこ遊び

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:8

残業シンデレラに、王子様の溺愛を

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,029pt お気に入り:331

異世界で至った男は帰還したがファンタジーに巻き込まれていく

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:327pt お気に入り:4

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,566pt お気に入り:2,188

処理中です...