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集落をつくろうの章
孤児院のお話 その2
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子供達に囲まれて俺は昔の記憶を呼び起こしながら自分が小さい頃にやっていた遊びを教えていく。
「よーし、じゃあ始めるぞー」
一列に並んだ子供達に合図をすると皆が頷いてスタートを待ち始める。
「だーるまさんが・・・ころんだ!」
皆が駆け出した瞬間を見計らって振り返ってやると何人かがふらついて踏鞴を踏む。
「そことそこが動いたぞ、一番後ろからやり直しだ」
「わー、むずかしー」
「こんどこそ!」
指摘してやると動いた子供達は一番後ろのスタートラインからやり直しになるルールにして達磨さんが転んだを始める。こんな遊びが無かったのか皆楽しそうに付き合ってくれる。
「ん?今動いたかな?」
「うごいてないよー」
わざとらしく凝視してやると何人かがクスクス笑いながら必死に動かないように我慢している。
「よーし、じゃあ二回目!だーるまさんが転んだ!」
今度はすぐに振り返る。すると今度はさらに沢山の子供が引っ掛かった。
「はやすぎだよー!」
「わっはっは、これが戦略と言うものだ!」
大人気ないだと?知るか!遊びに貴賎上下は無いのだ。
「あー疲れたな・・・」
昼休憩を挟んで一日様々な遊びで子供達の相手をしたが概ね好評だった。彼女達はこれからどうやって生きていくのか、少なくともこの孤児院に居る内は俺やヒューイの力で生活させてやる事はできる。
(俺がこんな頃は未来の事をどう考えていたか・・・)
子供の頃は些細な事で万能感に浸り、まだ溢れていた自然の中でまるで王様にでもなったように駆け回り自分と同じ何も知らぬ子供達を従えて馬鹿なことばかりやっていた。
やがて体が大きくなると皆がそれぞれの道を歩み始め、徐々に甘えを捨てて一人前になるべく努力していくことになり、皆は一人前になっていったが俺はひたすら自分のなけなしの力と虚栄心に執り付かれ、年月と共に師を失い、友を失い、若さを失い・・・結局俺が最後に得た物はまやかしの栄誉と孤独だけだった。
(彼女達にだけはそんな人生を歩んでは欲しくないものだ・・・)
あの時、助け出した少女が見つめる瞳に映った俺の姿が全てを物語っている。
ありえない奇跡にめぐり合い、再び機会を得た奇跡を決して逃すなと語りかけてくるようだった。
「お兄さん、どうしたの?」
「・・・ちょっと考え事をしてたのさ、どうかしたか?」
「ううん、なんだかお兄さんがつらそうな顔してたから」
子供の鋭さというのは大人になり失ってしまったどこか神秘的ななにかだ。彼女やほんの小さな子供のこういった一面を見るたびに俺は大人になった事が果たして正しいのかとさえ思えてくる。
「そうか、心配かけちゃったな」
「とーぜんだからいいの、お兄さんもこのおうちの家族なんだから」
「そうか、ありがとうよ・・・きっと将来良い嫁さんになれるぜ」
「ふふん、それもとーぜんなの!院長先生とべんきょーしてりっぱなれでぃーになるんだから」
子供の将来への希望と目標を目指す姿に思わず笑みがこぼれる。俺がこの笑顔の一部になれているのだろうか。そう考えるだけで暖かい何かが心の内から溢れてくるようで・・・。
「ふふっ、そうかそうか・・・なら、一人前になったらお兄さんが口説いてやろうか?」
「あら、わたしはやすくないわよ!」
お互いに顔を見合わせて大きな声で笑う。これだけでもう何とでもなる。
どうだっていい、これだけで頑張れる。俺は一人じゃない。
「随分とはしゃいだみたいね」
夜、ちびっ子たちは皆楽しい夢を見る時間。大人の俺達はこれからの為に色々と話し合わないといけない。
「ああ、何事も全力でやらんと気がすまなくてな」
「アンタがそう言うと洒落にならないから・・・マフィアに喧嘩売って、ダークエルフの喧嘩買って、騎士団の団長脅して協力させるんだからアンタの全力は何処までいけるのかわかんないわ、挙句の果てにモンスターの軍団を潰してエルフとダークエルフ達の和解ですって?アンタは何処までやらかしたいのかしら」
「そうだなぁ・・・世界でも救ってみようか?」
そう言うとヒューイは付き合いきれないと言いたげに会話を切り上げ、大人の嗜みである酒瓶を傾ける。
「あーもう、馬鹿!本題に入るわよ、商人なんだけど食料品と衣料品や布を扱ってるコに渡りがついたわ」
「お、流石だね、それでどんくらいの流通に耐えられる?」
「そうね、ゲイズバー商会っていうリットリオで本拠を構える店があるんだけど其処なら売るだけじゃなくて配達や行商も行ってるからサマルでも顔が利くんじゃないかしら?」
「ゲイズバー商会ね・・・えっと、たしか婦人服のゲイズバーとか聞いた気がするがもしかしてそれか?」
そういえば故郷で革新的デザインのゲイズバー!知らなきゃ遅れてるわよ!ってゴツイおっさんが売り歩いてた気がするが・・・。あれかよ。
「マフィア壊滅に伴って商売がやりやすくなったって喜んでたわ」
「情けは人のためならずってやつだな」
マフィアが居たら商売がしにくいってことは真っ当な商売屋ってことだろう。それならこれからお得意先として贔屓にするのも悪くないか。
「よーし、じゃあ始めるぞー」
一列に並んだ子供達に合図をすると皆が頷いてスタートを待ち始める。
「だーるまさんが・・・ころんだ!」
皆が駆け出した瞬間を見計らって振り返ってやると何人かがふらついて踏鞴を踏む。
「そことそこが動いたぞ、一番後ろからやり直しだ」
「わー、むずかしー」
「こんどこそ!」
指摘してやると動いた子供達は一番後ろのスタートラインからやり直しになるルールにして達磨さんが転んだを始める。こんな遊びが無かったのか皆楽しそうに付き合ってくれる。
「ん?今動いたかな?」
「うごいてないよー」
わざとらしく凝視してやると何人かがクスクス笑いながら必死に動かないように我慢している。
「よーし、じゃあ二回目!だーるまさんが転んだ!」
今度はすぐに振り返る。すると今度はさらに沢山の子供が引っ掛かった。
「はやすぎだよー!」
「わっはっは、これが戦略と言うものだ!」
大人気ないだと?知るか!遊びに貴賎上下は無いのだ。
「あー疲れたな・・・」
昼休憩を挟んで一日様々な遊びで子供達の相手をしたが概ね好評だった。彼女達はこれからどうやって生きていくのか、少なくともこの孤児院に居る内は俺やヒューイの力で生活させてやる事はできる。
(俺がこんな頃は未来の事をどう考えていたか・・・)
子供の頃は些細な事で万能感に浸り、まだ溢れていた自然の中でまるで王様にでもなったように駆け回り自分と同じ何も知らぬ子供達を従えて馬鹿なことばかりやっていた。
やがて体が大きくなると皆がそれぞれの道を歩み始め、徐々に甘えを捨てて一人前になるべく努力していくことになり、皆は一人前になっていったが俺はひたすら自分のなけなしの力と虚栄心に執り付かれ、年月と共に師を失い、友を失い、若さを失い・・・結局俺が最後に得た物はまやかしの栄誉と孤独だけだった。
(彼女達にだけはそんな人生を歩んでは欲しくないものだ・・・)
あの時、助け出した少女が見つめる瞳に映った俺の姿が全てを物語っている。
ありえない奇跡にめぐり合い、再び機会を得た奇跡を決して逃すなと語りかけてくるようだった。
「お兄さん、どうしたの?」
「・・・ちょっと考え事をしてたのさ、どうかしたか?」
「ううん、なんだかお兄さんがつらそうな顔してたから」
子供の鋭さというのは大人になり失ってしまったどこか神秘的ななにかだ。彼女やほんの小さな子供のこういった一面を見るたびに俺は大人になった事が果たして正しいのかとさえ思えてくる。
「そうか、心配かけちゃったな」
「とーぜんだからいいの、お兄さんもこのおうちの家族なんだから」
「そうか、ありがとうよ・・・きっと将来良い嫁さんになれるぜ」
「ふふん、それもとーぜんなの!院長先生とべんきょーしてりっぱなれでぃーになるんだから」
子供の将来への希望と目標を目指す姿に思わず笑みがこぼれる。俺がこの笑顔の一部になれているのだろうか。そう考えるだけで暖かい何かが心の内から溢れてくるようで・・・。
「ふふっ、そうかそうか・・・なら、一人前になったらお兄さんが口説いてやろうか?」
「あら、わたしはやすくないわよ!」
お互いに顔を見合わせて大きな声で笑う。これだけでもう何とでもなる。
どうだっていい、これだけで頑張れる。俺は一人じゃない。
「随分とはしゃいだみたいね」
夜、ちびっ子たちは皆楽しい夢を見る時間。大人の俺達はこれからの為に色々と話し合わないといけない。
「ああ、何事も全力でやらんと気がすまなくてな」
「アンタがそう言うと洒落にならないから・・・マフィアに喧嘩売って、ダークエルフの喧嘩買って、騎士団の団長脅して協力させるんだからアンタの全力は何処までいけるのかわかんないわ、挙句の果てにモンスターの軍団を潰してエルフとダークエルフ達の和解ですって?アンタは何処までやらかしたいのかしら」
「そうだなぁ・・・世界でも救ってみようか?」
そう言うとヒューイは付き合いきれないと言いたげに会話を切り上げ、大人の嗜みである酒瓶を傾ける。
「あーもう、馬鹿!本題に入るわよ、商人なんだけど食料品と衣料品や布を扱ってるコに渡りがついたわ」
「お、流石だね、それでどんくらいの流通に耐えられる?」
「そうね、ゲイズバー商会っていうリットリオで本拠を構える店があるんだけど其処なら売るだけじゃなくて配達や行商も行ってるからサマルでも顔が利くんじゃないかしら?」
「ゲイズバー商会ね・・・えっと、たしか婦人服のゲイズバーとか聞いた気がするがもしかしてそれか?」
そういえば故郷で革新的デザインのゲイズバー!知らなきゃ遅れてるわよ!ってゴツイおっさんが売り歩いてた気がするが・・・。あれかよ。
「マフィア壊滅に伴って商売がやりやすくなったって喜んでたわ」
「情けは人のためならずってやつだな」
マフィアが居たら商売がしにくいってことは真っ当な商売屋ってことだろう。それならこれからお得意先として贔屓にするのも悪くないか。
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