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第7話 お兄ちゃんに甘える妹(年上)
しおりを挟む「あ、あのっ! 部屋が準備できてないなら適当なところで寝るから……!」
「体に悪いからだめでーす! お兄ちゃんは今から私と寝るのーっ!」
食事を終えた後、フィルを背後からがっちりと押さえ込み逃げられないようにするメノ。
「でもさー、部屋なんて準備すればすぐにできると思うけどー? フィルだって寝るときくらいは一人に――」
「ん? どうしたのライカ? あんまり変なこと言うと明日からご飯の量減らすけど?」
「……。フィル、おやすみー」
フィルを助けようとしたライカは、あっさりと返り討ちにされる。
「そんな……!」
「ほら、こっちだよお兄ちゃん!」
かくして、フィルは半ば強引に妹の部屋へと連れ込まれることとなったのだった。
部屋へ入って早々にフィルの前で躊躇なく服を脱ぎ、まるで子供が着るような可愛らしいモコモコのパジャマに着替えたメノ。
彼女はそのまま、妹の奇行に怯え部屋の隅で縮こまっているフィルへ近づき――
「お兄ちゃん! 膝枕してーっ!」
「へ……?」
さも当然のようにそんな要求をした。
「だってお兄ちゃん、昔はよくやってくれたよねっ?!」
「い、一回もやった記憶ないけど……」
「えー、そんなことないよ!」
「……………………」
どうやら、メノは寂しさのあまりお兄ちゃんとの架空の思い出を創り上げてしまったらしい。
「……わかったよ。昔みたいに……してあげる」
考えた末、フィルは妹の悲しい妄想に合わせてあげることにした。
「やったーっ! お兄ちゃんありがとうっ!」
大喜びするメノにぎゅっと抱きしめられるフィルだったが、その心の中は妹の精神が完全に手遅れな状態になるまで独りにしてしまったことに対する申し訳なさと罪悪感でいっぱいである。
「こっち……来て」
ベッドの上に腰かけ、メノを手招きするフィル。
「えへへ……お兄ちゃんの太もも……柔らかいなぁ……!」
一方、メノは一切の躊躇なくそこへ飛び込む。
「これ、くすぐったいんだけど……」
「お肌もこんなにすべすべで……綺麗で……おいしそう……」
うっとりとした様子でいたいけな少年の太ももに頬ずりし、いやらしい手つきで触る成人女性。
その光景はこの上なく犯罪的であった。
というか犯罪であった。
「ぐへっ、うへへぇ……!」
「あ、あんまり変なことするなら……やめるからねっ!」
「お兄ちゃんは優しいから、私にそんな残酷なコトしないもん……!」
「……いや、別に残酷ではないと思うよ?」
至極当然のツッコミを入れるフィル。
「だって……ずっと寂しかったんだもん……。今日くらいは、いっぱいお兄ちゃんに甘えてもいいでしょ……?」
「そう言われると何も言い返せない……!」
「……わがままな妹でごめんね、お兄ちゃん」
うずくまりながら話すメノは、まるで大きな赤ん坊のようであった。
「そうだね。メノは……小さい時の方がしっかりしてたかも」
「い、今の私は……ダメな子……?」
不安そうな声で問いかけてくるメノ。
「ううん、違うよ。――メノはずっとこうして甘えたかったのに、我慢ばっかさせちゃってたんだなって……反省したんだ」
「お兄ちゃん……!」
「お父さんもお母さんもいないんだから……誰かに甘えたかったよね。……師匠はあんな感じだからちょっと難しいし」
フィルは大きくなってしまった妹の頭をなでながら、優しい声で言った。
「ママ……!」
「違うから」
メノの呟きを即座に否定するフィル。男の子として、母親扱いされるのは流石に許容できないのだ。
「――もちろん。僕よりお姉さんになったんだから、もうちょっとしっかりして欲しいなとも思うけどね」
「だっ、ダメなメノでごめんねママぁ……っ!」
「その呼び方は本当にやめて」
フィルはメノの頭をぺちんと優しく叩いた。
「あうっ」
小さく悲鳴を上げる目のだったが、その表情は何故か嬉しそうである。
少年に頭をはたかれて喜ぶ成人女性の姿がそこにはあった。
「……ところで、師匠って今どうしてるの?」
話の流れで師匠について触れたので、少しだけ気になって問いかけるフィル。
「――あ、忘れてた」
「え……?」
「師匠……最近ずっと部屋に引きこもってたから……つい」
「嘘でしょ……?」
どうやら、師匠はパーティハウスに居るのにも関わらず皆から放置されていたらしい。
「師匠……相変わらず影が薄いんだ……」
「あ、明日……会わせてあげるから。師匠もきっと喜ぶよっ!」
「……うん」
フィルはいたたまれない気持ちになるのだった。
*
それからしばらく膝枕をし続け、足がしびれて来たころ――
「……あのね、お兄ちゃん」
うとうとしていたメノが唐突にフィルのことを呼んだ。
「どうしたの?」
「……私こそ、お兄ちゃんにばっかり無理させて……ごめんね……。お兄ちゃんだって本当は……誰かに甘えたかったよね……」
「べ、別に……そんなことないよ」
フィルは少しだけどきっとしながらも、妹の言葉を否定する。
「それにお兄ちゃんは……私の病気を治すために冒険者になったんだから……私が殺したようなものだと思う……」
「……そんなわけないでしょ。メノの考えすぎだよ」
一息おいて、フィルは更にこう続けた。
「確かに、僕が冒険者になったのはメノの病気を治すためだったけど……もともと憧れてたからって理由もあるし……」
「でも……」
「――それに、僕はこうしてみんなが生き返らせてくれたんだから、もうその話はお終いだよ」
「……うん、わかった。変なこと言ってごめんね、お兄ちゃん……」
メノは言いながら頭を持ち上げ起き上がる。――そしてフィルの隣にそっと腰かけた。
「あれ、もういいの?」
「うん。――今度は私がお兄ちゃんを甘やかす番。……膝枕でも、何でもしてあげるから……いっぱい甘えて……!」
両手を広げ、フィルを受け入れる態勢になるメノ。
「私が……フィルのお姉さんになってあげる!」
「僕はそういうことするの普通に恥ずかしいから遠慮しておっ――」
「はいはい」
妹の提案を普通に断ったフィルだったが、無理やり胸にうずめられ黙らされた。
「お兄ちゃんはまだ子供なんだから、素直にメノお姉さんに甘えればいいの。わかるかな?」
「む、むーっ!」
「あはは、なんて言ってるのか分からないや。お兄ちゃんかわいい……」
「ぐむ……!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、成長した妹に力で完全敗北してしまったフィル。
「大好きだよ、お兄ちゃん……これからもずーーーっと……」
妹に抱き枕にされた状態でそう囁かれ、甘い匂いと柔らかさにつつまれながら眠りに落ちるのだった。
「お兄ちゃんがその気になったら……いつでも来ていいんだからね……っ」
――フィルの受難の日々は続く。
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