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第1話 アニ、追い出される
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僕の名前はアニ。ヴァレイユ家の次男だ。
ヴァレイユ家は代々、数多くの高名な魔術師や騎士を輩出しているこの国有数の名門貴族である。
この国では、十二歳になった時に神殿で神から様々な魔法を授かる決まりになっている。
ヴァレイユ家の人間が授かる魔法は、どれも優秀なものばかりだ。
だけど、数多くの強力な光属性魔法を与えられた兄のデルフォスと違い、僕には何の魔法も神から与えられなかった。
以来、僕はこの屋敷で使用人からも後ろ指を指され、最底辺の人間として扱われているのである。
*
「出て行けアニ。貴様はもうこの家の人間ではない」
僕を書斎に呼び出した父の第一声がそれだった。
「な、何言ってるんだよ父さん!」
当然、僕は父に抗議する。
「聞こえなかったか? 無能なお前はもうこの家に必要ないと言っているんだ」
「それは……今初めて言った……」
「無駄口を叩くな! 何の魔法も持たない貴様のような人間の面倒を、今まで見てやっただけありがたいと思え!!!」
「そんな…………」
「……まったく、やはり私と血の繋がっていない下等な人間はだめだな」
その時、父はぼそりと聞き捨てならないことを呟いた。
「ま、待ってよ父さん! 父さんと血が繋がってないって、どういうこと?!」
「――別にどうということはない。貴様はデルフォスが良い魔法を授かれなかった時の保険のために引き取った養子だ。だが、デルフォスは何の問題もなく優秀な魔法を授かった。対して、貴様はどうだ? 魔法すら使えないような役立たずはこの家に必要ない」
――なるほど、そもそも僕は家の人間とすら見なされていなかったということか。
その時、初めてこの家での自分の扱いに納得がいった。
父にとって、今の僕は邪魔なうえに利用価値のない部外者なのである。
「今すぐ出て行け。そして、二度と私のことを父と呼ぶな。私はグレッグ様だ」
もはや父ではないその人は、冷淡な口調で僕に言った。
「……わかった」
大嫌いな父親ではあったけど、面と向かってそんなことを言われてしまうと正直こたえる。
僕は半ば放心状態で父――グレッグの絶縁宣言を受け入れた。
一刻も早くこの場から離れたかった僕は、グレッグに背を向け、部屋の扉へ駆け寄る。
「待て」
「…………まだ、何か?」
しかし、部屋の扉に手をかけたその時、グレッグに呼び止められた。
「貴様のようなゴミを今まで世話してやった私に、感謝の言葉の一つも無いのか?」
ふざけた言い分だが、一理もないわけではない。
「……今まで、お世話になりました」
仕方なく、僕はそう言って深々と頭を下げた。
「それだけか? ……どうやら貴様は、妹達のことが可愛くないようだな」
「………………!?」
僕にはデルフォス――兄さんの他に、妹が三人居る。
まだ魔法は授かっていないが、僕や兄さんより遥かに魔力をコントロールする才能がある、優秀な妹たちだ。
これから授かる魔法次第では、兄さんを超えることもあるかもしれないと、僕は密かに思っている。
「ど、どうしてそこで関係ない妹たちの話が出てくるんですか!?」
「関係がない? 否、奴らは崇高なるヴァレイユ家の人間でありながら、貴様のような無能と仲良くする、誇りを持たない不届き者どもだ。……貴様の態度次第では、俺の怒りの矛先が奴らに向くやもしれんぞ?」
「……………っ!」
「元より、奴らはこれから互いに蹴落とし合うことになるというのに仲が良すぎる。適切な教育が必要だと考えていたところだ」
それは、妹達を人質にとった明確な脅しだった。
優秀な跡継ぎさえ居れば後はどうでも良いと考えているこの人だったら、どんなことでもやりかねない。
「僕に……どうして欲しいんですか? どうすれば妹たちに手を出さないと約束してくれますか?」
「人聞きの悪いことを言うな。私は奴らの保護者だぞ? ……まあいい、頭を床につけて『今まで私のような下民のクズを育ててくださりありがとうございました』だ。ちゃんと一言一句間違えずに言え」
「…………っ!」
俺はグレッグの指示に従い、その場で跪いた。
「…………今まで、私のような下民のクズを育ててくださりありがとうございました」
「ふん、まあいいだろう。――目障りだ、もう出て行け」
これで妹たちに被害が及ばないのであれば、安いものだ。
僕はすぐに立ち上がると、グレッグの方を一瞥することなくその場から立ち去った。
ヴァレイユ家は代々、数多くの高名な魔術師や騎士を輩出しているこの国有数の名門貴族である。
この国では、十二歳になった時に神殿で神から様々な魔法を授かる決まりになっている。
ヴァレイユ家の人間が授かる魔法は、どれも優秀なものばかりだ。
だけど、数多くの強力な光属性魔法を与えられた兄のデルフォスと違い、僕には何の魔法も神から与えられなかった。
以来、僕はこの屋敷で使用人からも後ろ指を指され、最底辺の人間として扱われているのである。
*
「出て行けアニ。貴様はもうこの家の人間ではない」
僕を書斎に呼び出した父の第一声がそれだった。
「な、何言ってるんだよ父さん!」
当然、僕は父に抗議する。
「聞こえなかったか? 無能なお前はもうこの家に必要ないと言っているんだ」
「それは……今初めて言った……」
「無駄口を叩くな! 何の魔法も持たない貴様のような人間の面倒を、今まで見てやっただけありがたいと思え!!!」
「そんな…………」
「……まったく、やはり私と血の繋がっていない下等な人間はだめだな」
その時、父はぼそりと聞き捨てならないことを呟いた。
「ま、待ってよ父さん! 父さんと血が繋がってないって、どういうこと?!」
「――別にどうということはない。貴様はデルフォスが良い魔法を授かれなかった時の保険のために引き取った養子だ。だが、デルフォスは何の問題もなく優秀な魔法を授かった。対して、貴様はどうだ? 魔法すら使えないような役立たずはこの家に必要ない」
――なるほど、そもそも僕は家の人間とすら見なされていなかったということか。
その時、初めてこの家での自分の扱いに納得がいった。
父にとって、今の僕は邪魔なうえに利用価値のない部外者なのである。
「今すぐ出て行け。そして、二度と私のことを父と呼ぶな。私はグレッグ様だ」
もはや父ではないその人は、冷淡な口調で僕に言った。
「……わかった」
大嫌いな父親ではあったけど、面と向かってそんなことを言われてしまうと正直こたえる。
僕は半ば放心状態で父――グレッグの絶縁宣言を受け入れた。
一刻も早くこの場から離れたかった僕は、グレッグに背を向け、部屋の扉へ駆け寄る。
「待て」
「…………まだ、何か?」
しかし、部屋の扉に手をかけたその時、グレッグに呼び止められた。
「貴様のようなゴミを今まで世話してやった私に、感謝の言葉の一つも無いのか?」
ふざけた言い分だが、一理もないわけではない。
「……今まで、お世話になりました」
仕方なく、僕はそう言って深々と頭を下げた。
「それだけか? ……どうやら貴様は、妹達のことが可愛くないようだな」
「………………!?」
僕にはデルフォス――兄さんの他に、妹が三人居る。
まだ魔法は授かっていないが、僕や兄さんより遥かに魔力をコントロールする才能がある、優秀な妹たちだ。
これから授かる魔法次第では、兄さんを超えることもあるかもしれないと、僕は密かに思っている。
「ど、どうしてそこで関係ない妹たちの話が出てくるんですか!?」
「関係がない? 否、奴らは崇高なるヴァレイユ家の人間でありながら、貴様のような無能と仲良くする、誇りを持たない不届き者どもだ。……貴様の態度次第では、俺の怒りの矛先が奴らに向くやもしれんぞ?」
「……………っ!」
「元より、奴らはこれから互いに蹴落とし合うことになるというのに仲が良すぎる。適切な教育が必要だと考えていたところだ」
それは、妹達を人質にとった明確な脅しだった。
優秀な跡継ぎさえ居れば後はどうでも良いと考えているこの人だったら、どんなことでもやりかねない。
「僕に……どうして欲しいんですか? どうすれば妹たちに手を出さないと約束してくれますか?」
「人聞きの悪いことを言うな。私は奴らの保護者だぞ? ……まあいい、頭を床につけて『今まで私のような下民のクズを育ててくださりありがとうございました』だ。ちゃんと一言一句間違えずに言え」
「…………っ!」
俺はグレッグの指示に従い、その場で跪いた。
「…………今まで、私のような下民のクズを育ててくださりありがとうございました」
「ふん、まあいいだろう。――目障りだ、もう出て行け」
これで妹たちに被害が及ばないのであれば、安いものだ。
僕はすぐに立ち上がると、グレッグの方を一瞥することなくその場から立ち去った。
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