4 / 83
第4話 お兄ちゃんサプライズ大作戦1
しおりを挟む「ふんふーん♪ ふんふふんふふーん♪ どの服を着ようかしら~♪」
ヴァレイユ家の長女、メイベルは今日という日を心待ちにしていた。
何故なら今日はお兄ちゃんであるアニの誕生日だからだ。
既に他の妹たち――ソフィアやエリーとパーティについての話し合いは済ませている。
後は夕方までに皆で準備を済ませ、お兄ちゃんを部屋まで呼びに行くだけだ。
どうせお兄ちゃんは自分の誕生日のことなんて忘れてるだろうから、驚く顔が見ものである。
可愛い妹たちに祝われて、大号泣すること間違いなしだ。
「ふふふ、ふふふふふっ!」
メイベルは一人で勝手に妄想してほくそ笑んむ。
二つに結んだ赤い髪が、愉しげに揺れていた。
――その時、コンコンと部屋の扉がノックされる。
メイベルは慌ててファッションショーをやめ、散らかしていた服をクローゼットに押し込む。
「こほん……入って良いわよ」
そして、澄ました声で扉に向かってそう言った。
するとゆっくりと扉が開き、部屋の中にソフィアとエリーが入って来る。
眠たげな目で自分の髪をいじっている銀髪の少女のがソフィア、上目遣いで申し訳なさそうにメイベルのことを見ている金髪の少女がエリーだ。
「まったく、二人とも遅いわね。もうすぐお昼になっちゃうじゃない!」
二人のことを一瞥した後、メイベルは呆れた様子で言った。
「え、えへへ、寝坊しちゃったー! ごめん……!」
舌を出し、おどけた様子で謝るエリー。
「まったく、ごめんじゃないわよ! お兄ちゃんのことどうでもいいと思ってるわけ?」
「そんなことないもん!! おにーちゃんに渡す手紙を書いてたら、寝るのが遅くなっちゃったの!!!」
エリーはそう言って頰を膨らませる。
「…………まあ、いいわ。あんたが寝坊するのは珍しいし、許してあげる」
「ひぇぇ……今日はメイベルが優しいよぉ……!」
「――だけどソフィア、あんたはダメよ。あれほど言ったのに寝坊したわね!」
そう言って、メイベルは腕を組みながらソフィアの方を見た。
「……違う。今日は寝坊したわけじゃない」
「じゃあ何なのよ!」
「さっきまでおにーさまが書斎で話していたから……気になって盗み聞きしてた」
「パパと?」
「ええ……そう……」
「あんたねぇ…………そういう面白そうなことする時はわたしも呼びなさいよ!」
「メイベルは……騒がしいからダメ……」
「なにそれどういう意味よッ!」
「……おこりんぼ」
「ムキーッ!!!!」
「こわい………………」
エリーを盾にして縮こまるソフィアに、真っ赤な顔で詰め寄るメイベル。
「ま、まあまあ、落ち着こうよメイベル。今日はおにーちゃんの為に三人で力を合わせないとダメでしょ? 時間もないし、ケンカしてる場合じゃないよ!」
「時間がないのはあんたたちのせいでしょ! もうっ!」
「だ、だから怒らないでってばぁー!」
長女のメイベル、次女のソフィア、三女のエリーは同い年だ。
父はグレッグで、母親はそれぞれ別である。
そんな複雑な事情を抱えた、まるで性格の違う三人は、いつも喧嘩ばかりしているのだ。
「ずっと扉に張り付いていたけれど……おにーさまとお父様が何を話してるのかは分からなかった……。少し、心配……」
しかし、「お兄ちゃん」という共通の話題で、どうにか均衡を保っているのである。
「そうね……。まさかパパが心変わりしてお兄ちゃんの誕生日を祝ってる……なんてことないでしょうし」
「おにーちゃん、また怒られちゃったのかなぁ……?」
「――だとしたら、なおさら頑張らないといけないわ! 素敵なパーティにして、お兄ちゃんを慰めてあげましょう!」
「そうだね! よぉし、はりきっていこー!」
「「「おー!」」」
――アニが三人の仲を取り持っていなければ、同じ跡継ぎ候補であり、互いに蹴落とし合う敵同士である彼女たちが、仲良く力を合わせるような奇跡は起こらなかっただろう。
それを理解しているからこそ、彼女たちはアニを慕っているのだ。
*
――それから数時間後。
「……さてと、食堂の飾り付けはこれで完璧ね!」
満足げにそう呟くメイベル。
そこへ、立派なケーキを持ったソフィアと、綺麗に装飾された大きな箱を抱えたエリーがやって来た。
「できたわ……。おにーさまへの想いを詰め込んだ……特性ケーキ…………今日だけで十年分は働いた……」
「あたしの方もできたよ! みんなでおにーちゃんに向けて書いた手紙と、みんなで選んだプレゼントが入った、可愛い飾り付きのハコ!」
「よくやったわ二人とも。……ふふふ、あとはお兄ちゃんを呼びに行くだけよ! さあ、行きましょう!」
そう言って、メイベルは二人を先導する。
「ねえねえ、プレゼントとケーキ、喜んでくれるかな……?」
「当然よエリー。きっと泣いて喜ぶに違いないわ!」
「首を洗って待っていて……おにーさま…………」
――かくして準備を終えた三人は、お兄ちゃんのことを呼びに行くのだった。
20
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる