超名門貴族の次男、魔法を授かれず追放される~辺境の地でスローライフを送ろうとしたら、可愛い妹達が追いかけて来た件~

おさない

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第72話 死に損ない

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「お、お父様が…………?」

 ハウラはスティングの言葉に驚愕し目を見開く。

「ああ。……そして、君がお世話してきたご主人様――アニ君が、その時に殺し損ねたレスター家の生き残りなんだ」
「…………ッ!?」
「ハウラ。アニ君にとって、君は親の仇の娘ってことになるねぇ。……もし仮に、彼がこの事実を知ったとしたら……きっと君のことを憎むだろう。…………そうと分かっていても、まだ下らない妄想に浸っていられるかな?」

 スティングは落ちていた袋を拾い上げて被り、ハウラの前に顔を近づけた。

「ほうらハウラ。アニ君はなんて言ってる? 君のことを許してくれそうかい? 父親である私のした事だから関係ないかな? ちょっと聞いてみておくれよ」
「う、嘘をつかないでくださいっ! だったら……あいつは……グレッグはどうして今まで……!」
「――国王が恐れた一族の血を引く子供だ。使えると思ったんじゃないかなぁ。グレッグは野心家だからねぇ。…………まあ、実際のところアニ君には魔法の才能がこれっぽっちも無かったみたいだが」
「私のアニ様を愚弄するなぁッ!」
「おっと」

 いきなり逆上して飛び掛かって来たハウラのことを軽く受け流すスティング。

「……やっぱり君はダメだな。もう処分してしまおう。…………安心したまえ。同じ出来損ないのアニ君もすぐに君のもとへ送ってやるさ」

 スティングは、両腕を広げてゆっくりとハウラの方へ近づいていく。

 黒い手袋をはめていた右手の指先から、一本の太い針が飛び出した。

「――――首に針を刺して少しかき回してやれば、物言わぬ死体の完成だ」
「………………ッ! ご、ごめんなさいお父様っ! 私はどうなっても構いませんっ! だからっ、だからアニ様を殺さないでくださいっ! お願いしますっ! お願いしますぅっ!」
「ほう」

 冷酷な暗殺者である父の足に縋り付き、必死に許しを請うハウラ。

「驚いたな。君が他人の為に自らの命を投げ出そうとするだなんて。……少しは成長したようだね、ハウラ」
「お父様……っ!」

 スティングはハウラに向かってほほ笑みかけた。

「死ね」
「――――――――っ!」

 しかし、その殺意が覆ることはない。

 太い針がハウラの首筋へ突き立てられようとしたその時。

「………………うん?」

突如として部屋の外で物音がした。

「きゃぁっ!」

 動きを止め、縋りつくハウラのことを足蹴にして部屋の外を見つめるスティング。

「…………グレッグか?」

 そう呼びかけてしばらく返事を待ったが、答えはない。
 
「……君のことは後で考えよう。そこで待っているように」

 スティングはハウラにそう言い残すと、部屋の外へ出た。

 *

 外の廊下には、わずかな魔力の残滓が足跡のように残っている。

「盗み聞きとは感心しないなぁ」

 そう呟きながら、それを辿っていくスティング。

 やがて彼が辿り着いたのは、書斎の前だった。

「……そういえば、ここはまだ探していなかったねぇ」

 スティングは、勢いよく書斎の扉を蹴破り中へ入る。

「……やはりここか。久しぶりだねグレッグ」

 書斎の奥の椅子には男が一人座っていた。扉に背を向け、窓の外を眺めている。

「どうして私の呼びかけに答えてくれないんだい? 一体何が――」
「ご機嫌よう、スティング殿。生憎ですが父は出かけているようです」

 スティングは、男に近づいて顔を覗き込んだ瞬間言葉を失った。

 そこに座っていたのがグレッグではなく、デルフォスだったからである。

「……ゲス」
「貴様は黙ってろカス」
「が、ガスでゲスぅ……」

 おまけに、彼が腰掛けているのは椅子ではなくボコボコにされたガスだった。

「なんだと……?!」
「スチュワート家が人員不足なのは承知していますが、こんなに質の低いカスダークエルフを使ってはいけませんよ。貴族としての品格が下がってしまいますから」
「ば、馬鹿な……そいつは魔獣使いだぞ……!」
「魔獣使い? その程度の雑魚にこの俺が倒せると思ったか? このクズが!」

 刹那、デルフォスの放った光魔法がスティングを吹き飛ばした。
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