無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第26話 勇者パーティの崩壊 その10

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 リタとルドガーはダンジョンを後にし、ダフニの町へ戻って来ていた。

 辺りはすでに日が沈みかけている。

「いやーついたついた。まったく散々な目にあったよ! ……私の耳、ちゃんとついてるよね……?」

 ルドガーは両耳を触りながら、心配そうに呟いた。

「取れてるよ」

 リタは、無慈悲にもそう言い放つ。

「うえぇっ!?」
「……うそ。からかってみただけ。びっくりした?」
「そ、そういう心臓に悪い冗談はやめてくれたまえ。リタ……君は常識的な人間だと思っていたのに……!」
「それはルドガーが勘違いしてただけじゃないかな。ふふふ」

 リタは取り乱すルドガーを見てくすくすと笑った後、続ける。

「……さて、とりあえずシリルとエイラは冒険者ギルドで依頼を出して回収してもらおうか。あと一応、教会で蘇生してもらうために寄付もしておかないとね」
「脱退したパーティのためにそこまでしてあげるのかい? 奇特な人だね☆」
「うん。大嫌いだったけど……シリルもエイラも一応元パーティメンバーだから」
「エルネストの方はどうするんだい? 本当に置いてきちゃったけど」
「……知らない。勝手になんとかするんじゃない? 勇者だし」
「そっちには厳しいんだ……☆」
「当たり前じゃん! だってマルクを追放した張本人だよ!? ボクは絶対にアイツのことを許さない!」

 エルネストに対して溜まった怒りを吐露するリタ。いきなり大きな声を出したので、通行人が数人こちらへ振り向いた。

「そ、そうかい。君は随分とマルクのことが好きだったんだね」
「…………うん。大好き……だよ」

 リタは、顔を赤らめて少し恥じらいながら返事をする。

「あれ…………?」

 思っていたものとは違う反応に困惑するルドガー。

「ちなみに、どうしてマルクのことが好きなんだい?」
「それはもちろん……可愛いから……」
「まあ……私としてもマルクには小動物的な可愛さがあるとは思うが……」
「それに優しいし……でも時々ボクのことを見る目は男の子だし、魔物と戦ってる時も可愛いし……生足はしゃぶりつきたくなるほど――って、恥ずかしいこと言わせないでよっ! ルドガー!」

 リタは顔を真っ赤にしてルドガーの平坦な胸をポカポカと叩く。

「な、なんか最後の方で恐ろしい言葉が聞こえた気がするが……ということはつまり、君は恋愛的な意味合いでマルクのことが好きなのかい……?」

 ルドガーの問いかけに対し、リタは小さくうなずいた。それと同時に、獣耳がぴこぴこと揺れる。

「おいおい、マルクは十歳だよ……?」
「違う、十一歳になった。マルクの誕生日……祝ってあげられなかったな……」
「そう言えばそうだったね…………なんてことだ。私より詳しいじゃないか」
「マルク……自分の誕生日をすごく楽しみにしてたのに……」
 
 がくりと肩を落として落ち込むリタ。

 それから少しして、はっとした様子で顔を上げた。

「そ、そうだ! ねえっ、ルドガー!」
「なっ、なんだい唐突に……?」

 リタの異常性に気づき始め、やや距離をとりながらそう問いかけるルドガー。

「あなた、マルクの師匠なんでしょ!? だったら、マルクに好きな人とか……婚約者とかいないか知ってるよね!? 教えて!」
「いないとは思うが……強いて言えばお姉ちゃんのことが好きなんじゃないかな……?」
「知ってる! でもそれは姉弟愛的なやつだもん! 確かに禁断の恋の方が燃えるかもしれないけど……ボクとマルクだって十分禁断だし、関係ないもん!」

 リタはまるで自分に言い聞かせるかのようにそう言った。

「どうでもいいけど……そもそも、そんなことを私に聞いてどうするつもりなんだい……?」
「……けっこん、したいの」
「うん?」
「ま、マルクと結婚したいのっ! だって、ボクは結婚相手を探すために村を飛び出して冒険者になったんだからっ!」

 さらりと自分が冒険者になった動機を話すリタ。

「いやいや、結婚って……もう一度聞くけど、君マルクの歳わかってるかい?」
「だって! 愛に年齢は関係ないもんっ!」
「正気の沙汰とは思えないね……☆ まあ、君とマルクはそこまで歳が離れていないんだろうけどさ……」

 ルドガーは内心かなりドン引きしていた。本人は隠しているつもりだが、すでに態度にも出ていた。

「……ボク、これからいなくなっちゃったマルクのことを探そうと思うんだ。それでちゃんと思いを伝えたい。――だから、ルドガーも手伝ってくれないかな……?」
「ま、まあ、私もマルクを見つけるという目的は同じだから構わないが……」
「じゃあ決まりだね! これからよろしく、ルドガー!」

 リタはルドガーの手を取ってにっこりと笑う。

「よろしく……☆」

 ぎこちない笑みを浮かべて、そう返事をするルドガー。

「やれやれ、なんだかとんでもないことになっているよ……マルク」

 そしてリタから顔をそらした後、ぼそりとそう呟いた。
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