無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第41話 勇者エルネストの没落 その2

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 他の血気盛んな冒険者達と共に、ギルドを追い出されたエルネスト。

 彼は一言「場所を変える」とだけ宣言して、殺気立つ冒険者連中を引き連れ、ギルドから少し離れたところにある、噴水の広場までやって来た。

「テメェ……さっきから何してやがる!」
「ギルドを追い出されてぶるっちまったのか?」
「勇者のくせに臆病者だなオイ!」

 エルネストは、口々に彼のことを挑発する冒険者達を無視して、大きな木箱を広場の中央へ運び込む。

「……マジで何やってるんだお前? アタマおかしくなったのか?」

 冒険者の一人が、前に進み出てそう問いかける。

「ゴブリンに説明したところで、理解はできまい」
「何だとこのや――「待て」

 威勢のいい冒険者を静止し、こう続けた。

「俺と戦いたかったらここに金貨を十枚入れろ」
「………………は?」
「もう一度言う、俺と戦いたかったらここに金貨を十枚入れろ」
「意味が分からねえぞ……」
「いいか、これはビジネスだ。ギルドを追い出されていくらか頭が冷やされた俺は、この非生産的な状況をマネーに変える画期的なビジネスを思いついた」
「…………何言ってんだテメェ?」
「――やはりゴブリンに理解はできなかったか」

 呆れたようにそう呟き、深くため息をつくエルネスト。その態度が、冒険者たちの神経を逆なでする。

「クソ野郎が……! ぶっ殺してやる……!」
「ならここに金を入れろ」

 エルネストは、木箱を指し示しながら再びそう繰り返した。

「どうして俺がそんなことしなきゃいけねぇんだよッ!」
「別にしなくてもいいが……そうしたら俺はお前達と戦わない。生産性が低いからな」
「テメェにその気がなくても、こっちからやってやるよッ!」

 冒険者がそう言うと、エルネストは深く息を吸い込み、そして叫んだ。

「衛兵さああああああああああああん! 暴漢に襲われてますううううううううううッ! 助けて下さああああああああああああああああああい!」
「は!? ば、馬鹿お前やめろッ!」
「どうした? 邪魔されずに戦いたければ金を払うしかないぞ? さもなくば俺はこのまま衛兵が来るまで助けを求め続ける。衛兵さああああああああああああん!」
「わ、わかった! 払ってやるよ畜生がッ!」
「……それでいい。さあ、俺と戦いたい奴はここに金貨を入れて並べ。先払いだ」

 その言葉に対し、一人の冒険者がある疑問を投げかける。

「そんなことして、途中でお前が負けたらどうするつもりだよ?」
「そしたら、俺を倒した奴に箱の中の金貨を全てやる。腕に自信がある奴は先に並び、ない奴は後ろの方へ並んで連戦で弱った俺と戦うのがオススメの戦法だ」
「おいおい、マジかよ! そりゃあやべえな!」

 エルネストの誘導に従い、純粋に彼のことをぶん殴りたい者や、手合わせを望む者たち、金に目がくらんだ者たちが、次々に木箱へ金貨を投じていく。

 やがて、木箱が金貨で一杯になり、ようやく希望者が全員揃った。

「……ざっと一万か。まあ、悪くはない」
「へ……大口叩くのはいいけどよ、Cランクに降格したザコが俺に勝てると思うなよ?」

 列の先頭に居た、威勢の良い冒険者が、拳を構えながらエルネストと相対する。

「フン。ゴブリンどもに負けるほど、俺もやわではない。調子に乗るな下等生物風情が!」
「また言いやがったなこの野郎!」

 こうして、大勢の人間を巻き込みながら盛大な力比べが始まろうとしていた。

 ――ここから、俺の新たな伝説がスタートする。

 エルネストは、自身の気分が高揚していくのを感じていた。



 数分後、広場に大勢いた人だかりはいなくなり、ぼこぼこになったエルネストが噴水の傍にもたれかかっていた。

「クソが……!」

 結局、最初の冒険者に勝つことはできたが、三人目に手合わせした赤い髪の少女に、完膚なきまでに叩きのめされてしまったのである。

「ふざけるな……! 俺の女運はどうなっている?! ファッキンビッチッッ!」

 金貨も全て持っていかれ、プライドもへし折られ、悪態をつくことしかできないエルネスト。

 その時、彼の前に二人組の衛兵が現れた。

「君、ちょっといいかね?」

 衛兵の一人が、エルネストの前に進み出て呼びかける。

「あ……? なんだ貴様は」
「この広場で騒ぎを起こしたのは君かな? 私についてきなさい」
「ま、まて! 俺は何も利益を得ていない! 無実だッ!」
「話は後で詳しく聞かせてもらおう」
「やめろッ! やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 不運続きのエルネストは、最終的に騒ぎを聞きつけてやってきた衛兵に連行されてしまったのだった。
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