無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第90話 狙われるマルク

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「……うん?私、一体何を……」

 ゆっくりと起き上がりながら、呟くフェナ。

「覚えてないんですか……?」

 マルクは、出来るだけ距離を取りながら問いかける。

「……いや、ちゃんと覚えてるわ。自分の部屋で夕食を食べて、それから少ししたら、身体が熱くなって、それで――――」

 そこまで言った後、何かを思い出したようにマルクの方を見た。

「私……あんたのこと襲ったの……?」
「あんなに滅茶苦茶やっておいて覚えてないなんて、酷いです……!」

 涙声でそう訴えるマルク。

 その時、フェナは自分が下着姿であることに気づいた。更によく見ると、マルクの衣服も乱れている。

「……え、うそ、もしかしてやっちゃったの!? きゃあっ!?」

 悲鳴を上げながら、自分の身体を隠すフェナ。

「うぅっ……あんまりです……っ!」
「せ、責任とるから! ……いや、この場合責任をとるのはあんたの方…………? じゃあ責任とってよ!」

 混乱するあまり、フェナは理不尽な要求をする。

「ぼくのこと……いきなり押し倒してきて、おまけに服まで脱がせてくるなんて、意味がわかりません……! フェナさんはカーミラさんみたいな変態なんですか!?」
「な、なんだ……その話を聞く限り、いくとこまではいってなさそうね……」

 フェナはほっと胸をなで下ろした。

「一人で勝手に安心しないでくださいっ!」
「はいはい、悪かったわね。ちょっとスキンシップが行きすぎただけよ」
「そんなことって……!」
「――それに、今私が叫んだら、一体どっちが襲ったことになるかしらね?」

 口止めしようと慌てるあまり、そんなことを口走るフェナ。

 その瞬間マルクは、フェナのことをカーミラやカサンドラと同類の危ない変態と認識した。

 同時に、多少あった好感度も地の底に落ちる。

「な、何よその心底人を軽蔑するような目はっ!」
「軽蔑はしてません。警戒してるだけです」
「不審者扱いじゃない!」
「違うんですか?」
「誤解よ! 私だって、いつもならこんなことしないわ! お願い信じて!」

 必死の形相で、マルクにそう懇願するフェナ。

「…………じゃあ教えてください。一体、どうしてあんなことをしたんですか?」
「そ、それは……」

 マルクに問いかけられ、フェナは現在に至るまでの記憶をたどり始める。

「――――やっぱり、アレよね……」

 その結果、自分が作った料理を食べた後気分がおかしくなったことを思い出した。おそらく、原因は隠し味として混ぜた謎の調味料だろう。

「それじゃあ、私の料理を食べた皆んなも今ごろ、さっきの私みたいになってるってこと……?」

 加えて、更に恐ろしい事実に気付いてしまうフェナ。

 つまり、変態化した皆がこの船に乗っている唯一の男の子であるマルクのおち●ち●を狙っているということだ。

 ――このままでは、マルクが危ない。

「あの……大丈夫ですかフェナさん? 今度は顔色が悪いみたいですけど……」
「ま、マルク! 他の誰かに会ったら、私に使った魔法を躊躇なくぶっ放しなさい!」
「ええっ?! どうしてですか?」
「たぶん、他のみんなもさっきの私と同じ感じで襲ってくるわ!」
「!?」

 衝撃的な話をされ、固まるマルク。

「で、でも……」
「何よ。問題でもあるわけ?」
「はい……最近は吸ってばかりで全然魔力を放出していないので、このまま使い続けるとちょっと命が危ないかもしれないです……」
「じゃあ絶対使っちゃだめじゃない!」

 どうやら、皆を正気に戻すことができる唯一の手段も使えないらしい。

「というか……いくらなんでもあんなことするのはフェナさんだけだと思いますけど?」
「あんたは知らないからそんなこと言えるのよ! アレを食べたら……ホント凄いんだからっ!」
「アレって……さっきから一体何の話をしてるんですか……?」

 マルクが聞いたその時だった。

 突然、何者かによって扉が叩かれる。

「……誰か来たみたいです。は――「しっ! 静かに!」

 大慌てで、返事をしようとしたマルクの口を塞ぐフェナ。

「むーっ?」
「あんた、死にたいわけ!?」
「……………………」

 フェナに脅されたマルクは、大人しくなる。

 それと同時に、部屋の扉をたたく音は段々と大きくなっていくのだった。
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