天然ドSな彼女に抱かれ続けた結果、色々あって一緒に暮らすことになりました。

桃ノ木ネネコ

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第68話:日帰り旅行で行こう(その7)(完結)

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「もう、いい加減機嫌直してってば」
「・・・ふん!」
昼間の騒ぎから数時間が過ぎ、
夕刻も近付いて、水着から着替え終わった二人は
海の家の休憩スペースに戻っていた。

そこでユキヤは無言でスイカをかじっている。
「もぉ・・・そんな拗ねないでよ」
すみれが困った顔をして言う。

「・・・だって、お前あんな事するから・・・」
ユキヤは恥ずかしそうに言った。
「だ、だからぁ!それはごめんってば!」
すみれは慌てて謝る。
しかしユキヤは不機嫌なままだ。

・・・どうやら、さっきの事を思い出しているらしく、
彼の頬が赤くなっている。
しかし酔っていたすみれはその事を
ほとんど覚えていないのだ。
事がすべて済んだ後に、ユキヤの口から伝えられたことと、
本人の断片的な記憶しかない。

「だから、私が寄って押し倒したのは悪かったってば」
すみれはそう言って頭を下げる。
「・・・言葉にしなくていいから!」
ユキヤは恥ずかしくなり、思わず声を上げた。

「えっと・・・」
ちょっと語気が強すぎたと思い、ユキヤが声のトーンを落とす。
「まぁ・・・俺も、拒否らなかったってのもあるし・・・」
食べ終わったスイカの河を手で弄びながら
ユキヤはバツが悪そうに言う。
「う、うん」

そう、今回の彼は拘束されてない。
なので酔ったすみれに迫られても、拒絶する事は
その気になれば十分に出来たのだ・・・。

以前、すみれに初めて酒を飲ませた時、
同じような事があった。
しかしその時はすみれが初めて泥酔したことで頭が回らず
彼女のされるがままにされてしまったのだが、
今回は彼自身がすみれの暴走を受け入れてしまっていた。
(俺も多分、止めたくなかったんだ・・・)

「だから、もうこの話は終わりにしようぜ」
ユキヤはそう締めくくった。
「・・・うん」すみれもうなずく。
そうして二人はしばらく無言になった・・・。
「さてと・・・」そう言ってユキヤが立ち上がる。

「おじさん!スイカおかわりある?」
彼はスイカの皮をごみ箱まで捨てに行くとその足で
調理場にいるオーナーにスイカのお代わりを要求しに行った。
「・・・一応あるけど大丈夫かい?
君、これでスイカ丸ごと1個食べたことになるよ?」
スイカを持ってきたオーナーが心配そうに聞いてきた。

「ああ、全然平気。むしろもっと食べたいくらいだよ」
ユキヤは笑って答える。
「・・・お兄さん、意外と健啖家なんだね」
オーナーは驚いた顔をしている。

「え?そう?」ユキヤはきょとんとする。
「・・・ま、よく食べることはいい事だよ」
オーナーはそう言って調理場に戻っていった。

「もう、カブトムシか君は?」
数度目のスイカを貰ってきたユキヤを見て
すみれが呆れたようにつぶやいた。
彼は甘いものに関しては相変わらず底なしだ。

「いいだろ好きなんだから。ほら、お前も食べろよ」
「・・・うん」
ユキヤにスイカを勧められ、それの応えてすみれも立ち上がった。
そして二人で並んでスイカを食べ始めるのだった・・・
 
***

しばらく経って夕日が大分傾いた頃、
二人は海の家を後にした・・・。
「駅の直通バスの時間に間に合うかな?」
「まぁ大丈夫でしょ」
そんな会話をしながらバス停に向かっていると
声をかける人間がいた。
「よ、お二人さん!帰るのかい?」
背後から勢いのある声が響く。

声の主は緋名子であった。
「あ、お姉さん、お世話になりました」
すみれが挨拶する。
「いや、こっちこそ色々迷惑かけてごめんな」
緋名子が謝る。

「あ、いえ、楽しかったです」すみれが微笑む。
「・・・そうかい?なら良かったよ」緋名子も笑う。
実のところすみれは、休憩小屋での事を覚えてない。

「ところで彼氏君、ちょっといい?」
「え、俺?」
緋名子が少し意味深にユキヤの耳元に話しかける。

「さっきの逃げ出したバカになにしたのさ?」
「え?」
「昼間連れ帰ってから、ガクガク震えて口を利かないんだよ・・・」
「えぇ・・・!?」
緋名子の言葉にユキヤも驚愕する。

「・・・まぁ彼女ちゃんに手を出そうとしたあいつも悪いけどさ」
緋名子が続けた。
「う・・・それは・・・」ユキヤは言いよどむ。
「君も彼女を守るために必死だったんだろうけど、
ちょっと薬が効き過ぎたって感じだよ・・・」
「は・・・?」
緋名子は何やら壮絶な勘違いをしているようだ。

「ねぇ二人で何話してるの?」
すみれが割って入る。
「いや、なんでもないよ」
そう言って緋名子はごまかした・・・。
(なんて言おうか・・・)
ユキヤは言葉に詰まる。

「・・・まぁいいや、とにかく彼女ちゃんを大事にするんだよ」
「あ、はい・・・」
ユキヤはとりあえず返事を返すことにした。
「うん、よろしい。じゃあまた遊びに来いよ!」
そう言って彼女は去っていった・・・。

「・・・ねぇ、何話してたの?」すみれが聞いてくる。
「いや・・・その・・・別に大したことじゃないよ」
ユキヤは適当に誤魔化した。
「ほら、すぐそうやって誤魔化そうとする!」
すみれが不満げに言う。

「いや、ほんとに何でもないんだってば・・・」
ユキヤは苦笑いするしかなかった。
「・・・まぁ、いいけどさぁ」
すみれはまだ納得していない顔だ。

「・・・ほら、そろそろバスの時間だから急ごうぜ?」
ユキヤがそう言うと二人はバス停に向かって歩き出した。
(・・・なんか、緋名子さんに誤解されたままな気がするけど・・・)
ユキヤは不安を抱きつつも、それ以上考えるのをやめたのだった。

***

帰りの電車の中・・・
二人は並んで座っていた。
「ふぅ、あとは帰るだけか」
「楽しいとあっという間だよね」
すみれが答える。
「そうだな・・・」ユキヤも同意する。

「・・・ねぇ、ユキヤ」
「ん?」
突然すみれが話しかけてきたので、ユキヤは返事をした。
「・・・また来ようね」
そう言って彼女は微笑んだ・・・。
「もちろん!」
ユキヤも笑顔で返す。

「・・・約束だよ?」すみれは念を押すように言った。
「ああ、約束する」
二人は見つめ合って笑う・・・。
電車の窓から見える景色がゆっくりと流れていく・・・。

ユキヤがすみれの方を見ると、すみれはいつの間にか眠っていた。
「・・・・」
ユキヤは無言ですみれの手を取った。
(この手が・・・)
彼女がこの手でヤンキーを再起不能に追い込んだ・・・
そう考えるとこの手で彼女は自分自身を守ったことになる。

(乳首弄っただけであそこまで追い詰めたって言ってたけど・・・)
ただの素人のヤンキーをそこまでしてしまったのなら、
今の彼女のテクニックは相当なものになってるという事だ。
ユキヤは少し彼女が怖くなる。

(シラフの時は不器用なくせに・・・)
ユキヤは呆れ気味にそう思ったが、この「手」の
魅力も怖さも一番思い知っているのは他ならぬ自分なのだ。

(だけど、それでも俺は・・・)
彼女の全てを受け入れると決めているのだ。
「すぅ・・・すぅ・・・」
隣で寝息を立てている彼女はとても無防備だ。
そしてそんな彼女が愛しくてたまらない。

(この手が、ずっと変わらないでいてくれたら・・・)
ユキヤはそう思うとすみれの指と自分の指を絡め、
しっかりと握った。
そして、そのまま眠りにつくのだった・・・。

おわり
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