大草原の小さな家でスローライフ系ゲームを満喫していたら、何故か聖女と呼ばれるようになっていました~異世界で最強のドラゴンに溺愛されてます~

うみ

文字の大きさ
4 / 34

4.ドラゴンさんとコーヒーを

しおりを挟む
「――それで、昨日植えた種はどうなったかなと見に行こうと外に出たら、ファフニールさんがいたんです」
「なかなか面白い話を聞かせてもらった」

 ファフニールは私の出した飲み物を口に含み、渋い顔をする。
 私と彼は家の軒下に設置したベンチに並んで座っていた。木製のベンチは背もたれもなく、ペンキで真っ白に塗られている。
 よく見る形だけど、よく見る形だからこそ、見知らぬ場所ではありがたい。
 何だか、少しでも私のいた世界と繋がっているという気がしてくるの。
 カップにはいった湯気を立てているコーヒーだって、そう。

「お砂糖があれば、ファフニールさんにも気に入ってもらえたかも」
「初めて飲む味だが、嫌いではない。この苦みがあるからこそ、却ってスッキリとするのだな」
「そうですか。私は牛乳をたっぷりと入れた方が好みです」
「お前の魔法は変わっている。道具を出すことに特化しているのか?」
「え、ええ。ダメな感じですか?」
「いや、ちょっと変わった魔法だが、聖女らしいといえば聖女らしい」

 くすりと微笑んでくれたのかな? ファフニールのしかめっ面はこの短い時間で何度か見ているけど、彼の嬉しそうな表情はまだ見ていない。
 ベンチを出した時は少しだけ目を見開いていた気がした……と思う。
 「どえええ」とか分かりやすく驚いてくれたら、私も反応がしやすいのだけど。
 ファフニール(人間形態)は一言で表現したらクール系細目細身イケメンといったところ。

「ベンチとコーヒーはファフニールさんが私とお友達になってくれたから、出せたんですよ。だから、私だけの力ではないです」
「お前が魔法を使ったのだ。俺は欠片ほどの魔力さえ使っていない。謙遜は美徳だが……まあいい」
「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃ」
「……」

 ファフニールが急に立ち上がってそっぽを向く。
 そして、聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で、「嬉しかったのだろう……」と言ってくれた。
 うん。そうなんだ!
 怖かったけど、ファフニールとお友達になれたことが嬉しくて、彼のおかげでこんなことができたと言ってしまったの。
 そうじゃなくて、素直に「ファフニールさんとお友達になれて嬉しかった」と言えばよかったんだ。
 「ごめんなさい。ファフニールさん」と心の中で再度彼に謝罪する。

「道具を魔力で生成したのだとして、私と会うことで思いついたといったところか」
「そ、そんなところです」

 かなり違うけど、同意しちゃった。
 彼なりのフォローに「ダメだな私」と少し自己嫌悪になる。

「あ、あの。あの。上手く説明できないんですが、ここで目覚めてから不思議な力が使えるようになっていたんです」
「お前は……まあいい。話たいなら話せ。誰にも言わんさ。そもそも、会話する相手などいないからな」
「……それは私も同じです」
「おかわりをくれないか?」
「はい!」

 家の中に戻ってお湯を沸かし、インスタントコーヒーを入れて戻ってくる。
 ベンチに座って待っていたファフニールがコーヒーを受け取ると、僅か、本当にほんの僅かだけだけど口端が上がった……気がした。
 彼の意図はもちろん分かっているつもり。
 お茶をお代わりすることで、話が長くなってもいいと示したんだ。
 
 それから私はファフニールに「もふもふ牧場」のことをたどたどしく語る。
 彼が理解していたかは分からない。でも、言葉にすることで自分の整理になった。
 聞いて欲しいというのは、知って欲しいということもあるけど自分のためでもあったのだから。
 
 ファフニールと友達になったことで、「もふもふ牧場」的には「初めての住人を獲得したこと」になった。
 前作でもいろんなイベントが用意されていて、イベントをクリアするとボーナスが入ったの。
 アイテムだったり、行ける場所が増えたり、新しい何かがフィールドに出て来たり……と多岐に渡る。
 イベントやミッションと呼ばれるものは、ステータスを見ても表示されておらず達成すると突然メッセージでお知らせされるちょっと嫌らしい仕組みになってるのよね。
 「アイテムボックスにプレゼントが届いています」というメッセージを覚えているかな?
 ここで手に入ったアイテムが「シンプルなベンチ」だったというわけ。ショップに並ぶアイテムでは、初めての住人と交流ができるようになのか、コーヒーとハーブティーが追加されていた。紅茶だったら、そっちを選んでいたんだけどなあ……。
 ミッションクリアボーナスでもらった1000ゴルダを使って、さっそくコーヒーとマグカップを購入してお茶会にしたというわけなの。
 
「――というわけなんです」
「まるで理解できん」
「ご、ごめんなさい」
「いや、お前の魔力は限りがあるものと無いものがあるということだけは分かった。このコーヒーという飲み物は限りある方の魔力を使ったわけだな」
「そんな感じです」

 ゲームに触れた経験のないファフニールにゲーム的な説明をしたところで、理解されないのは当然だ。
 彼の言う通り、ゴルダが必要なものとそうでないものがある。
 必要のないものとしては、植物の種が代表的なものになるの。もふもふ牧場では、小さな子供でも遊ぶことができるよう親切設計になっている……のかなあ。
 種をいくらでも植えることができるといっても、種類が増えるわけじゃないのよねえ。
 種の種類を増やすには「発見」したりミッションやイベントをクリアする必要がある。
 他には畑や牧場を作る時かな。ただし、最初の一回に限るという。拡張するにはゴルダを頂戴ね、となる。

「限りがあるものを考えなしに使うものではない。すまなかったな。お代わりを要求して」
「いえ! ゴルダ……限りある方の魔力は増やすことができます。これからどんどん増やしていきます! ファフニールさんとのお茶会、夕食会がもっと楽しいものになればいいなと」
「俺がご馳走になるのだ。手伝えることがあれば言うといい」
「はい!」
「気が向けば手伝ってやる」

 つんと顔をそむけるファフニールだったが、付け足したように「気が向けば」と発言しても照れ隠しがバレバレだよ?
 彼って邪竜とか名乗っていたけど……どこがよこしまなのだろう。あ、そうか。きっと黒色だから邪竜という種族名になっていたんだ。
 うんうん。我ながら冴えてる。
 
「それで増やすには何をするのだ?」
「え、えっと。いろいろありまして。そうだ。まずは畑を見に行ってもいいですか?」
 
 ゴルダはクリアボーナスで得ることもできるのだけど、それだけじゃすぐに足りなくなっちゃうの。
 どんなイベントがあるかも分からないから、余計に。
 「もふもふ牧場」でゴルダを増やす方法は「アイテムを売る」こと。アイテムショップで収穫した作物や採集した果物、牧場からとれたものや加工したもの、要らないアイテムに至るまで売ることができる。
 種を無限に植えることができるから、ゴルダもいくらでも獲得することができるんだ。
 でも、生活していくのに植物だけ食べてってわけにもいかないし、日用品も消耗品だし、でゴルダを溜めておくに越したことはない。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

スキル『農業』はゴミだと追放されたが、実は植物の遺伝子を書き換える神スキル【神農】でした。荒野を楽園に変えて異世界万博を開催します!

黒崎隼人
ファンタジー
「そのスキル『農業』?剣も魔法も使えないクズはいらん、失せろ!」 勇者召喚に巻き込まれて異世界へ転生した植物オタクの青年カイルは、地味なスキルを理由に王都を追放され、死の荒野へと捨てられた。 しかし、誰も知らなかったのだ。 彼のスキルが、ただの農業ではなく、植物の遺伝子さえ書き換え、不毛の大地を瞬く間に聖域に変える神の力【神農】であることを。 荒野を一瞬で緑豊かな楽園に変えたカイルは、伝説の魔獣フェンリルを餌付けして相棒にし、傷ついた亡国の美姫ソフィアを助け出し、自由気ままなスローライフを開始する。 やがて彼が育てた作物は「エリクサーより効く」と評判になり、その噂を聞きつけた商人によって、彼の領地で世界規模の祭典――『異世界万博』が開催されることに!? 一方、カイルを追放した王国は深刻な食糧難に陥り、没落の一途をたどっていた。 「今さら戻れと言われても、この野菜は全部、俺とソフィアのとフェンのものですから」 最強の農民が送る、世界を揺るがす大逆転・万博ファンタジー、ここに開幕!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...