外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーし俺を閉じ込め高見の見物をしている奴を殴り飛ばす~

うみ

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25.テイム

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 黒い霧が晴れ上がる。
 すると、どあっぷのベルベットの顔が。思わずのけぞると、俺の服の袖を掴むハールーンの姿も見えた。

「よかったー。生きてた生きてた」
「俺が黒いブレスに包まれてからどれくらいたつ?」
「四つ数えるくらいだね。大した時間は経過していない」

 質問に対してハールーンが冷静に答えてくれる。
 黒い稲妻ブレスに包まれ、時の停留所に転移、ブレスが晴れるまでに四つ数えるほどの時間しか経過していないってことか。
 影法師の言う通り、時の停留所で過ごした時間はゼロだった。
 
「暴帝竜からはかなりの距離を取れたよな」
「恐らく、追って来てはいない。他の餌を追いかけているんじゃないかな」
「目の前で餌を全部消し炭にしたから、怒り心頭だったかもな」

 俺とハールーンの視線がベルベットに向く。
 たじろく彼女はぷううと頬を膨らませ口を尖らせる。
 
「何よお。一気にやっておしまいー、だったじゃないのお」
「いや、別にベルベットを責めているわけじゃないんだよ。暴帝竜が常に動く生物を追っているのでは、と分析していただけだ」
「怪鳥? だっけ。あれを追っていたんじゃないの?」
「分からん。ストームバードが暴帝竜の圧倒的な気配にビビッて逃げただけなのかもしれない。もしくは暴帝竜に発見されて慌てて飛んでったか」

 ベルベットの問いに首を捻る。
 暴帝竜と対峙したことで、奴がどれだけ規格外なのかは分かった。
 ストームバードが天候を操作してまで逃げようとした気持ちは分かるんだ。たとえ、怪鳥の飛行速度に暴帝竜が追いつけないにしても。
 もし、暴帝竜がストームバードに向けて追尾するブレスで攻撃していたら、ストームバードは無事で済まなかったかもしれない。
 怪鳥の判断は間違っていなかったと言えるだろう。
 
「ウィレム。一応は当初の目的通り、ほぼ真っ直ぐ右に向かっている。そのまま『端』を見てみるかい?」
「だな。行ってみよう。エリアの端がどうなっているのか見てみたい。そこからぐるっと外周を回ってマップを埋めていく感じが確実かなってさ」
「いこういこうー」

 ベルベットが右手を振り上げ歩き始める。
 ハールーンと俺はお互いに顔を見合わせ、苦笑し合う。
 何のかんのでベルベットがいると、暗い気持ちにならずに済む。
 そうだよな。必ず、俺たちはうまくいく。
 そう信じて進もう。前向きな気持ちを保ち続けることは、自分の実力を高めるのと同じくらい、時にはそれ以上に重要なことなのだから。
 ベルベットがいれば、その点、安心だよな。
 
 ◇◇◇
 
 魔獣の森ってどれだけ広いんだろうか。
 頭に迷宮だという認識があったので、そう歩かないうちに端が見えると思っていた。
 だけど、二回ぐっすりと寝て、更に歩いているが未だ端が見えてこないんだ。
 途中、何度かモンスターと遭遇したけど全てBランク以下と特筆するような相手ではなかった。
 手記にあった妖精なるものとも出会っていない。
 
「うーん。広いな……騎乗できるモンスターを手懐けてとかできないものか」
「さっきやろうとしたくせにー。ぷーくすくすー」
「うるせえ! あれはなかった。なかったんだ」
「もうお腹の中だしねー。あはははー」

 全く。記憶から完全に消去していたってのに。
 いらんことを思い出させてくれる。ベルベットめ。
 いやあ、六本脚の黒い馬のようなモンスターがいたんだよ。手記になかったから、名前は不明。
 六本馬って勝手に名付けた。
 それはともかく、「よーしよし」とやろうと草を持って近寄ったら噛みつこうとしてきやがったんだよ。
 だからほら、ひょっとしたら肉食なのかなー、とイノシシ型のモンスターの肉を差し出したら「ふんす」と鼻息荒くなって、後ろを向いて蹴ろうとしてきた。
 つい、反射的に叩き斬ってしまったというわけさ。
 仕方ないじゃないか。一度は我慢しただけでも、大したものだと褒めて欲しいくらいだね。
 やっぱり、ほら、地上じゃダメじゃないか?
 ストームバードのような鳥型だったら、より早く移動できるぞ。
 鳥型は地上に降りてこないからなあ……。どうしたもんか。
 
「ふうん。そういうことかい」
「いや、俺は優しく接したつもりなんだって」

 突然立ち止まって顎に手を当てるハールーンに言葉を返す。
 しかし彼女はふうとため息をつき顎で前を示す。
 
「君にテイムの才能がないのは分かった。そうじゃなく、見てみなよ」
「え、あ。あれってもしかして」

 深い森のど真ん中をぶち抜くような開けた場所。
 あれは「道」だ。緩やかな坂道になっていて、あの場所だけ視界良好なため、とても目立つ。
 ま、まさかあの道は。
 ワナワナしていると、ハールーンが「ふむ」と指を二本立てる。
 
「可能性は二つ。もう一本、同じような『大通り』があった」
「もう一つは、右に進むと一周してここに戻ってきた、か」
「ご名答。どっちだと思う?」
「ループしている可能性の方が高いんじゃないか」
「僕も同じ意見だ」

 暴帝竜と遭遇して蛇行したり、超敏捷で駆け抜けたりを加味しても、三回寝ないうちに一周回れるほどの距離か。
 だが、右に進むと一回転して元に戻ってくるとなれば、エリアを全て埋めていくことが困難になるな。
 何だよ、もう。
 人が真剣に考えてるってのに。
 ベルベットに服を引っ張られても無視していたら、抱き着こうとしてきたのでヒラリと躱す。
 
「ねね、どういうこと?」
「右に進んでも、左に進んでも、あの道に到達するんじゃないかとみているんだ」
「そっかー。だったら、あの道を進もうじゃないか。ウィレム、ハールーンちゃん」
「変なモンスターに目をつけられなきゃいいけど。いや、何も道のど真ん中を通る必要ないだろ!」

 さっそうと歩きだそうとしたベルベットの肩をむんずと掴む。
 しかし、掴んだ俺の手にハールーンが背伸びして手を添え、顔を上に向ける。
 
「ウィレム。悪くない手かもしれないよ」
「道の脇を進んで行けば、身を隠すこともできるし目立たないんじゃないか」
「安全をとって、一回目はそれで進んだ方が無難かもしれないね。暴帝竜がいないとも限らない」
「一回目……そういうことか。ハールーンの考えは分かった。なら、一発目から正解を狙っていきたい。道のど真ん中を進もう」
「君がそう決めたのなら、僕に否はないさ」

 ハールーンの重ねた手が離れる。
 と同時に俺もベルベットの肩から手を離した。
 
「というわけだ。ベルベット。君は姿隠しの魔法をかけておくのもいいかもしれない。魔力次第だけど」
「ちょっと、二人だけでいい雰囲気にならないでー。説明を求めるわ。そうよそうよー。横暴よー」
「分かったから、食いついてくるな」
「ドレインしちゃうぞ」
「叩き斬るぞ!」

 「あくまで予想に過ぎないが」と前置きしてからベルベットに向け説明を始める。
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