無職だと売られて大森林。パンダに笹をやり最強の村ってやつを作るとしようか

うみ

文字の大きさ
8 / 30

8.大和その2.不穏な空気

しおりを挟む
 ――大和。
「すまん。疲れているんだ」
「それでしたら、私がお体をほぐさせて頂きますわ」

 先ほど一人来たから、安心していたらもう一人やって来た。
 いい加減、分かってくれよ。
 今度の子は人間じゃなかった。
 コスプレか何かだと思ったのだけど、どうやら違うらしい。
 ウサギのような耳にふわふわしたボブカット、垂れた目が保護欲を誘う。
 甘え上手で、甘えさせたくなるような、そんな子だ。
 こういう子が案外計算高かったりするんだよな。偏見だとは重々分かっている。

「さっきの子にも言ったんだけど……」
「さっき……?」

 んんーとあざとく指先に唇をあてるウサギ耳の女の子。
 アヒル口まで作っちゃってまあ。
 この様子だと、彼女らは全く情報連携ができていなさそうだ。
 ん、それはおかしい。
 
「少し、話に付き合ってもらえるか?」
「やったー」

 女の子は急に口調が変わり、万歳のポーズをする。
 堅苦しい言葉遣いは俺も苦手とするところだから、気持ちは分かるぜ。
 
 彼女はウキウキとウサギ耳を弾ませて入ってきた。立ったままもあれだったので、椅子に座ってもらう。
 俺はベッドに腰かけることにした。
 すると、片方の耳を折り曲げ、小首を傾げた彼女は「んんー」と指先を唇にあてる。

「そのままステイで」
「焦らされちゃうのも嫌いじゃないですうー」

 全く。本心は嫌々だと思うんだけどなあ。どうしてこうも……まあいい。
 残念ながら彼女の期待には応えられん。
 
「アブラーンから頼まれたのか?」
「アブラーン?」
「あれ、知らないのか。ガルシアから直接? それとも、彼の部下か?」

 直球過ぎたか。さすがの彼女も俺の意図を察したようだった。
 彼女は両耳をペタンと頭につけ、両手を頬にあてる。

「雇い主さんのことは秘密なんですうー」
「そらそうだよな」
「でもー。次も私を指名してくれたら、こっそりとこそこそ」
「分かった。って指名ってどうやるんだ?」
「ダブランダーさんにミミをって言ってくださいネ」
「ダブランダー?」
「きゃあ。言っちゃいましたあ。ミミ、ダメな子ですう」

 わざとらし過ぎる態度だったが、彼女なりにうっかり言っちゃったと演出したいのだろうか。
 うっかりだったら仕方ないよな……彼女の首が飛ばないか心配だ。
 首といっても仕事を辞めさせるではなく、物理的にという意味で。
 それにしても、どんどん口調が崩れていくな。別に思うところは何もないが。
 
「ダブランダー氏に依頼しようにも、彼のことがまるで分らん」
「ダブランダーさまったら、やっぱりマイナーだったのね」
「いやいや。そう言うわけじゃない。雇い主のことを聞いてないからといって」
「冗談でえすヨ。柊で逢引しましょうよお」

 柊はどこかの場所の暗喩か。逢引もそこでダブランダーとコンタクトを取れる者か彼自身に会う事が出来るということ。
 ひょっとしなくても、俺の部屋は誰かに盗聴されている?
 彼女はぽわぽわしたように見せているが、アブラーンと並び切れ者なのかもしれない。
 この会話だったら、彼女のことを気に行った俺が、昼間も会いたいと言っているようにも思えないことはないか。
 雇い主のことは盗聴をしている者からしたら承知のこと。なので、別に漏れてもいいって感じかねえ。
 ダメだ。頭を回転し過ぎたからか、クラクラしてきた。
 蓮夜のようにはなかなかいかねえよ。
 慣れだ。慣れ。ランニングだって毎日やりゃあ、疲れなくなってくる。それと同じだ。
 
「話はこれで終わりだ。じゃあ、明日な」
「明日の指名頂きましたあ。やったー」
「柊で」
「はいい。明日は明日。今日は今日でおたのしみに」

 わーいと両手を上にあげた彼女の乳がゆさゆさと揺れる。
 そのまま脱げないかハラハラして見てれらんないよ。
 まあ、俺を誘うために来ているわけだし、布が少ないことは致し方ないか。
 そんな彼女に向け苦笑しつつ、お引き取り頂いた。
 
 ◇◇◇
 
「参りました!」
「たまたまだよ」

 ロザリオの首筋に向けた木剣を引く。
 彼女と朝稽古をするのは二回目だ。こうして練習試合を行うのは十度目になる。
 結果? 俺の九敗だよ。
 朝日と共にロザリオが部屋の扉を叩き、そのまま朝稽古に向かったのだ。こうして体を動かした後の朝食は格別だよな?
 しっかし、こんな細腕の女の子にまるで勝てないとは。
 これでも高校の時は剣道でいいところまで行ったんだけどなあ……。
 指南役として選ばれた腕は伊達じゃないってことだな。
 彼女がこの街の中で上位の腕を持つとしても、この街の中での話だよな。
 となると、この世界の剣士たちは相当平均レベルが高い、と思う。
 俺が未熟なだけだろ、という話はひとまず置いておく。

「いえ、素晴らしい対応力かと。最初に立ち合いした時、大和様の剣は綺麗過ぎると思ったものです。それが、もう」
「実戦的じゃないってことか」
「失礼ながら……」
「そうだな。俺は実戦を経験したことがない。モンスターとやらがいる世界じゃなかったから」
「そうでしたか。モンスターも戦争もない世界、夢のような世界です」

 この世界にはモンスターとやらがいる。彼女から聞いただけで、実物はまだ見たことがない。
 猛獣が更に強くなったようなものだと想像しているが、猛獣に剣一本で挑むとなるだけでもゾクゾクする。
 あれだろ、岩本が好きだった恐竜みたいなのを狩るようなゲームで出て来るような奴、ああいうのと剣で戦う?
 絶対無理だろ!
 あんなのが街を襲撃してきたら、ひとたまりもないぞ。
 
「ロザリオ、一つ教えてくれ。柊って知ってるか?」
「柊? 公園にある柊園のことでしょうか」
「そうか。この後、そこに行きたい」
「承知いたしました。ですが、お気を付けを」
「それって……?」

 ここでダブランダーの名を出すほど、抜けてはいない。
 一方、ロザリオは相当焦っているようで、踵をあげ俺の耳へ顔を寄せてくる。

「誰に聞かれているか分かりません……」
「盗聴器がそこら中に?」
「盗聴器なるものは分かりません。ですが、囁きを聞く魔法が様々な場所に仕掛けられています」
「ずっと見張られているってことか……」
「街を歩きながら、でしたら」
「ロザリオと俺が歩いていたら、目立つんじゃねえのかな」
「……お任せを」

 もしや、ロザリオはアズラーンの配下の者じゃないのかも?
 信じ切るには材料が足りないが、彼女は何でも顔に出るから。
 目線だけを動かし、頬が引っ付きそうになっている彼女の顔を見やる。
 彼女は真剣そのものといった様子だった。
 深く考えるのはよそう。俺はいつだってそうだったじゃないか。
 自分の肌が感じたままに、進め。信じるも信じないも、理屈じゃなく自分の感性を信じる。
 
 ◇◇◇
 
 案があると自信満々に「お任せを」などと言うものだから……いや、もう何も言うまい。
 彼女に任せたのは俺である。まさかこんな手段に出てくるなんて。どこか隠れ家的なものや、盗聴を阻害する場所なんてものがあるのかと思っていた。
 
「大和さん♪ あれ、美味しそうぷん」
「お、おう……」

 街娘風の服に着替え、ピンク色の長髪という形状のカツラを被ったまではいい。
 俺の右腕に両手を絡ませるまでは、まだ理解できる。
 変装して恋人風を装う。うん、ベタだしすぐバレると思うが、了承した俺にも責任がある。
 だが、このキャラは何なんだよ! キャラまで作らなくていいんだって!
 
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...