無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

文字の大きさ
61 / 167

61.聖教騎士団戦開戦

しおりを挟む
 聖教騎士団は魔の森を進み、旧小鬼村まで半日以下の距離まで接近すると野営の準備を始める。そこへ、デイノニクスに騎乗したベリサリウスが現れる。
 俺とエリス、ティン、エルラインは飛龍に乗り待機しているが、彼が現れたのを確認し飛龍をベリサリウスの近くでホバリングさせる。距離は上空二十メートルといったところか。
 ここまでにじり寄って大丈夫かよ! 敵は千百人。こちらは四人。ベリサリウスは危なげなく逃げるだろうけど、俺達は大丈夫かよ?

 そんな俺達の気も知らず、敵の野営地に堂々と姿を現したベリサリウスは厳かに宣言する。
 一方聖教騎士団は突然出現したデイノニクスに騎乗するベリサリウスに度肝を抜かれているようで完全に固まっている。

「聖教騎士団の諸君。私はローマのベリサリウス。諸君らへ挨拶に伺った!」

 驚きで未だ硬直している聖教騎士団を悠然と眺め、ベリサリウスはさらに続ける。

「私は正直なところ、諸君らと戦いたくないのだ。しかし! もし挑んで来るというならば容赦はせぬ! 心してかかって来るがいい!」

 此処で一度言葉を切り、ベリサリウスは一歩前に出た聖教騎士団の隊長らしき者へ目を向ける。

「ローマのベリサリウス殿でしたかな。私は聖教騎士団第一団の団長ムンドと申す」

 団長と名乗る男――ムンドはベリサリウスへ名乗りをあげる。

「ムンド殿。今ならまだ不問としようではないか。兵を引いてくれぬかな」

「それはならぬ。我々は魔族と手を組む者には亜人や人間であっても容赦はしない。特に貴殿は魔族と亜人を迎合させている。今なら命までは取らぬ。魔族を置いて魔の森を出るがいい」

「笑止! ムンド殿。後悔なさらぬよう。容赦はしませぬぞ」

「ベリサリウス殿。話すことはそれだけですかな。ここでは貴殿の勇気に免じ、手は出さぬ。行くがいい」

「心意義痛み入る。例の場所で貴殿らを待とう……」

 ベリサリウスは踵を返し、俺達に目をやると旧小鬼村へ築いた陣地へと戻って行く。彼の後を追い、俺達も陣地へと戻ることにした。
 この挑発劇の裏は何だろうか? 俺が想像するに二つの目的がある。単独で敵の陣地に突っ込むことの見返りとして元が取れてるかは分からないけど。目的の一つは敵を油断させることだろう。ベリサリウスは傲慢で挑発的な態度を取った。これは敵を少しでも油断させる目的を感じ取れた。
 もう一つは、敵の動きを旧小鬼村陣地へ向かわせることだ。相手の様子を見るに素直に攻めて来そうに感じた。敵の陣地へわざわざ攻め込むのは一見すると悪手に見えるけど、こと魔の森の戦闘に関しては俺達にゲリラ戦をされるほうが彼らにとっては厄介だろう。
 先日百名の聖教騎士団はゲリラ戦で殲滅させられているしな。彼らは俺達の位置を捉えることが非常に困難だ。何故なら、彼らはそもそも魔の森の地理に疎い。さらに俺達は空から彼らを補足できるうえに、風の精霊術で情報伝達できるからな。

 正直、ゲリラ戦に徹したほうが勝率が高いと思うんだけど、ベリサリウスが取った手段は籠城戦だった。どんな作戦を思案しているのか……彼は敵の一度に攻めて来る数によって作戦を変えると言っていた。果たしてどうなるのか。


――翌朝
 敵の進軍を確認するに、全軍でこちらに攻めかかってくることがハーピーの偵察で判明する。敵は戦力分散を避け、一息にこちらを潰そうって腹だ。
 聖教騎士団の数は千百。対するこちらの戦力は百と少し……。戦力差は十一倍にも及ぶ。いくら籠城戦とは言えこちらが不利なことは明らかだろう。

 状況を見たベリサリウスは全員を集め、指示を出す。

「諸君。今日まで良く訓練に勤しんでくれた。今日この時が成果を発揮する時だと思うかね?」

 ベリサリウスは全員の顔をゆっくりと見渡す。多くの戦士たちは彼の言葉に頷きを返している。

「それは否だ。兵数など物の数ではない。君たちが折角習得した技術を半分しか使うことができないのだ。残念でならないが……」

「それはどういうことですか? ベリサリウス様」

 俺が代表してベリサリウスの言葉へ疑問を呈する。

「ふむ。君たちの役目はただ盾で敵の炎弾を防ぐこと。これだけだ! ある程度防いだら、ここを放棄する」

 放棄? せっかく作った陣地を刃を交えることなく捨て去るのか……なんという大胆な手を使うんだ。ベリサリウスの事だから、陣地を放棄しても勝つ目があるからこうした指示を出すんだろうけど。
 一体何をするつもりだ? 敵は千百名。この陣地に詰め込むには少し狭いが、入らないことはない。外縁部の堀の内側へ兵を入れるだけなら問題無く入る。さすがに中央宿舎には二百名も入らないけど。

 俺が疑問に思ったのと同じく、みんなも俺と同じような顔をしている。

「逃げ遅れぬよう。注意しろ!」

「はい!」

 疑問に思いつつも、全員がベリサリウスの声に従う。彼に任せておけば安心だと絶対的な信頼を彼に抱いているからだ。

「諸君! 疑問に思うかもしれない! しかし安心して欲しい。この戦い、敵の無謀な侵攻であったと夜には皆が分かる!」

「了解しました。ベリサリウス様」

 俺の声にベリサリウスは満足そうに頷く。

「こんなもの、ローマの危機ではない! ただローマの歴史が始まったことを祝う祭事に過ぎないのだ! ローマよ永遠なれ!」

「ローマ万歳!」
「ベリサリウス様万歳!」

 集まった戦士たちは口々にローマとベリサリウスを称える。 


 演説が終わったベリサリウスへ俺は労いの言葉をかける。

「ベリサリウス様。さすがの演説でした。全員聞き入っておりましたよ。士気も抜群です」

「いやいや。お前の演説には敵わぬよ。勝利の指揮者たる名は伊達ではない」

「いえいえ。ベリサリウス様あってこそですよ。俺ではこうはいきません」

「ははは。言うようになったではないか。まあ良い。私は脱出する際の援護に回る。お前は空から敵情をエリスを通じて私に報告せよ」

「了解しました」

 俺はベリサリウスへ敬礼し、飛龍の元へ向かう。これから空を飛び、敵の位置を逐一ベリサリウスへ報告する。
 いよいよ戦争が始まる……果たして俺達は無事生き残れるのか……ベリサリウスが率いるとはいえ、戦争となるとやはり不安になるよ……


◇◇◇◇◇


 エリス、ティンと俺のいつものメンバーは飛龍に乗り、後ろからエルラインが飛んでついて来るといういつもの体制で空から聖教騎士団を観察する。
 彼らは特に走るわけでもなく、ゆっくりと先日来た偵察部隊の生き残りに先導され俺達の陣地へ向かっている。

 俺達は順次ベリサリウスへ位置を伝えつつ、彼らを上空から追っていく。そしていよいよ、両軍が対峙する時がやって来たのだった……

 こちらの陣地は、北側に居住棟があり、それを囲むように胸くらいの高さまであるコンクリートの壁。壁の外側には塹壕が掘ってあり、塹壕の外側は木をモルタルで固めた柵。
 集落の外縁部には堀が築かれており、深さは一メートル半。幅も一メートル半になっている。
 ただし北側には堀は無い。

 幸い敵は最短ルートを堂々と進み、南側から俺達の砦と向き合っている。敵の位置としては理想的な位置だ。
 一方俺達は、塹壕の中に全員が入り真上に盾を構えている。盾は飛龍やベリサリウスの倒したモンスターの革など耐熱性の高い革を木の盾に張り付けたものだから、そうそう炎で燃えることはないだろう。
 俺やエリスが乗る飛龍は、ちょうど宿舎の上あたりで旋回している。

 聖教騎士団第一団の団長ムンドが手を振り上げ、振り下ろすと前方に位置した兵士から炎弾の魔法が一斉に俺達の陣地へと飛翔していく。
 掘を挟み、塹壕まではそれなりに距離があるので、彼らの炎は塹壕の前の柵に当たる。

 いよいよ戦争が始まった……

【後書き】
作中で出ているムンド(ムンナ)はベリサリウス時代のローマ将軍とは全く関係ありません。
一応ここで補足しておきます。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...