無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

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86.本物さん出番です!

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 いい朝だ。キラキラと太陽の光が窓から差し込み、俺は目を細める。
 ああ、クラクラするほど眩しいよ。

 昨日風呂に入ると、またしても素っ裸のカチュアが入って来た! しかし、リビングにエルラインがいるから何も出来ずもんもんとする俺。

 さらに、俺の寝床にカチュアがやって来た! いややって来たというと語弊があるな。最初から布団に入っていた!
 どうもエルラインに要らぬことを吹き込まれたようで風呂にも寝床にもアタックして来たのだろう。
 本人余り分かってないしな……奴が見ている。目に入らないが絶対見ている!

 故に興奮するが、何も出来ない俺!
 そして、朝を迎えるというわけだ。

「おはよー」

 布団をめくり俺に挨拶するカチュアは何も着てない。
 これを前にして何も出来ないとか、許さぬぞ。エルライン!

 しかし俺は内面のグツグツ煮えたぎる思いを露ほどにも見せず、朗らかにカチュアへ挨拶を行う。

「おはよう。カチュア。行ってくるよ」

 俺は歯ぎしりしながら、部屋を辞す……


◇◇◇◇◇


 そんな悶々とした朝だったが、エルラインの転移魔術で移動し、待つこと少し……当たり前と言えば当たり前だけど、昨日出会った龍三匹がやって来ると、悶々とした気持ちなぞ吹き飛んでしまったよ!

 巨大な龍が俺の前に三匹!
 迫力があるってもんじゃないよ。恐怖感が募る。
 
「魔王よ。約束通り一日待った。通してもらおうか」

「刻印を持つ人に会いたいのなら、連れて来てあげるよ」

「おお。それは手間が省けて助かる」

「声の事はだいたい想像がついているんだけど、教えてくれないかな?」

 ほんとエルラインは気さくに話すよなあ。こんな巨大な龍を相手に……俺はさっきからずっとビクビクしてるんだけど……
 
「災いを成す者が呼び出された。と声が導くのだ。我らとて無知ではない。真実を確かめにやって来たというわけだ」

「ふうん。災いを成す者がいる場所は分かるの?」

「だいたいはな。声がだいたいの方角を示してくれる」

「声が導く方向は一つじゃないよね?」

「……何故それが分かる……」

 龍は先手を打ったエルラインに少し驚いているようだ。ここまでの話で俺にも何の事が見えて来たぞ。声の送り主は悪意を持って俺達へモンスターをけしかけている。
 この世界へ召喚された者を災いを成す者として声で導いているんだろう。問題はその数だ。俺とベリサリウス、ナルセスと後二人この世界へ召喚された者がいるはずだ。
 以前エルラインと英雄召喚について検討した時、ナルセス以外の者は聖王国じゃない土地に出て来たはずだと推測をたてた。この推測が間違っていなければ、声が導く人数で声の主が何者が想像がつくぞ。
 
「龍よ。声は何人導いているんだ? 四人か? それとも五人?」

 俺が口を挟んだ事で、龍はハッとして俺の方を見る。何故数が出来るって顔だな。

「四だ。何故分かる人間よ?」

「四か……なるほど。俺が災いを成す者の一人って龍は既に分かっているのか?」

「……そこまで把握しているのか。ああ。分かっている。人間よ。お前は災いを成す者と声が導く者の一人に違いない。会ってすぐ分かったぞ」

 龍を導いた声は俺達と出会うと災いを成す者と特定できる情報を与えているってことか。そして……災いを成す者の数は四。このことから、声の主は聖王国の奴だな。
 ナルセスに対しては導く対象にしていないことから分かる。エルラインの情報からすると、聖教騎士団の幹部連中かな……過信は出来ないが、まず間違いなく声の主が聖王国に与する者で確定だ。
 
「龍よ。俺は襲い掛かる者にはもちろん必死で抵抗するけど、自ら誰かを滅ぼそうなんて考えてはいないよ」

「言葉だけで言われてもな……信はおけぬよ」

「魔の森の亜人が協力してローマって街を作っているんだ。それを見てもらったら俺達が平和的に生きてることは分かると思う」

「……亜人どもが協力するだと! 種族を越えて?」

「ああ。種族に関係なく皆で街を建築している。彼らは働き者でみんな穏やかだよ」

「……信じられん」

 龍は大きな首を振り、悪夢だと言わんばかりだ。そんな龍を楽しそうに眺めていたエルラインが龍へと声をかける。
 
「そうさ。彼は面白い。実に興味深いんだ。まあ、君たちもローマを見てみるとわかるさ」

「魔王まで協力しているのか……孤高で誰にも靡かぬ魔王が……」

「僕は面白いから観察しているだけだよ。ね。ピウス」

 困る内容を俺に振るんじゃねえ! 観察と言いながらも結構協力してもらっているんだよなあ。彼にとっては面白いからの一言に尽きるんだろうけど。

「い、いや。エルには協力してもらってるから……」

 乾いた笑みを浮かべながら、とりあえず俺が思っていることをエルラインへ回答する。俺の表情が面白かったのか、彼はいつもの悪戯が成功した時のような表情を浮かべケラケラと声をあげて笑う。

「……あの魔王が……人間よ。そこまでの事を成したと言うのならば、我に力を見せてみよ!」

 ま、待て。なんでそうなる? ローマを見て平和的に解決すればいいじゃないか。戦争反対! 暴力反対!
 
「ふうん。面白くなってきたね。たまには体を動かしてもいいんじゃない? ピウス」

 追い打ちをかけるな! 断れなくなってしまうだろ! いや、断れる雰囲気じゃないから、やるしかないんだが……やはりベリサリウスを無理にでも連れて来るべきだった!

「わ、分かった。力試しというのなら、受けてたとう……」

 もうやけくそだー! 俺にはなプロコピウス(本物)がついているんだぞ。後はお任せします。プロコピウス(本物)さん。

<分かった。任せておくがいい>

 心の中でプロコピウス(本物)の声が響き、俺の願いを了承してくれた。
 
「では、地に降りようか」

 龍三匹に導かれ、俺とエルラインも地上へ降りる。やりたくないが仕方がない……後はお任せコースだ!
 俺が願うと体の主導権がプロコピウス(本物)に移り、体が勝手に動くようになると俺は龍の方へ一歩前へ出る……
 
 地上に降りた龍の内先ほど俺達と会話していた龍が、一歩前に出る。この龍とやり合おうっていうのか。

「そちらの龍で構わないのかな? 一遍にかかってきてもいいのだぞ」

 待て! 俺の口! 入れ替わった途端にとんでもないことを口にしやがる。なるべく安全に行こうよ。
 俺の気持ちなど全く反映せず、俺は腰の剣を引き抜く。 

 それを見た龍は俺の挑発など意にも介さず感心したように、ほうと息を漏らすと、体から白い煙が上がり始める。
 煙がはれると現れたのは――
 
――長い緑の髪をなびかせた美女だった。全裸の。

「ほう。中々……」

 俺がそう独白するが、これは全裸を眺めた興奮から来た言葉じゃないことは俺の体が如実に語っている。これは……強敵に会ったことに対する喜びの感情だ。
 何でそんな戦闘大好きなんだよ! 英雄ってみんなこんなのなの?
 
「龍の姿ではお前をとらえきれぬと分かったからな……」

 美女はニヤリと口の端をあげると、手の甲から二十センチほどのかぎ爪を出す。これで剣とやり合おうというわけだな。
 
「いざ尋常に勝負と行こうか」

 俺は嬉しそうにニヒルに微笑み、美女へと足を踏み出す。
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