無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

文字の大きさ
87 / 167

87.あーなんかトリップしたよー

しおりを挟む
「まずは小手調べといこうか!」

 緑の髪の美女は腕を振るうと、人一人分ほどある火炎が迸り俺に向かってくる!
 うおおおい! 避けて。俺避けてえええ!
 
 残念ながら俺は身動き一つせず不適な笑みを浮かべ、剣を腰だめに構える……
 
「曲芸か……曲芸には曲芸で答えよう」

 何やらカッコいいセリフを決めた俺が、目前に迫った炎へ剣を振るう!
 剣が炎に触れると、なんと炎が真っ二つに裂け、左右に別れた炎の塊が俺を通り過ぎた。
 
 ちょ! 無茶しなくていいから。少し腕にかすったって。少し焦げてる……
 俺の思いを全く汲み取ってくれないプロコピウス(本物)は、美女と睨み合いお互いいい笑顔で対峙する。
 全く何が楽しいんだか……

――二人がお互いに向かって駆ける!

 剣とかぎ爪で互いに襲い掛かるが、甲高い音がしてお互いの武器を打ち合う。剣を取って返す俺に反対側のかぎ爪で受ける美女。
 その隙をついて、美女は開いた方の爪を振るうが俺は上体を背後に反らし爪を避ける。
 
――二合、三合、四合と剣と爪を打ち合わせる二人。

 俺は五合目を打ち合わせた後、後ろへ飛びのくと美女と距離を取る。

「なかなかの腕だが……」

 プロコピウス(本物)はこう言っているが、彼女の膂力は俺をはるかにしのぐと予想される。軽く片手で振るった爪の衝撃は人間の膂力と比べ大人と子供ほどの差があるように思えた。
 スピードも俺の目では捉えることは難しい。この膂力とスピードは俺の記憶にある人物に近い。そうあいつだ。龍殺しドラゴンバスターのぺったん戦士リベール。
 リベールは龍を倒せる程の実力者だと言っていたが、目の前の美女は彼女の「ベルセルク」状態とそう変わらない実力を持つように俺には思えた。
 そんな相手に俺は――
 
――剣を腰に戻す。

 何考えてるんだ! こいつはあああ! 俺の心の叫びも虚しくプロコピウス(本物)は口を開く。
 
「だいたい分かった。当てれるものなら当ててみろ」

 武器をしまった俺は美女を挑発すると、美女は驚きに目を見開いた後、激高の勢いで俺へと駆けて来る! 頼むから安全に行ってくれえ!
 
<流水の動きの真髄を君に見せよう>

 心の中にプロコピウス(本物)の声が響く。俺へ戦い方を見せる為に挑発したのか? 戦いはもうあなたにお任せする予定なんだけど……
 
 美女のスピードは先ほどまでとは段違いだ。今までは小手調べだったんだろう……スピードはおよそ先ほどまでの三倍! 既に俺の目では捉えることは叶わない。
 美女の爪が迫る!
 
 彼女は憤怒で顔を歪ませているが、鋭い目をした彼女の美しさを少しも損ねていない。
 しなやかな肢体から繰り出される爪の一撃は軽く振るっているように見えるが、人間の限界を軽く凌駕する力を秘めている。

 しかし俺は上体を軽く反らすだけで、彼女の爪を流し、前へ一歩踏み込む。
 対する美女は長い髪を揺らし、強烈な蹴りを繰り出すが、俺は彼女の肘を指先で軽く突くと何故か彼女の蹴りが俺から逸れる!

 い、意味が分からない!
 続く両手の爪も蹴りも、俺は彼女の体のどこかへ触れてほとんど動くことなく凌いでいく。これから一体どう学べと言うのか……レベルが違い過ぎて何も参考にならないんだけど……
 
 仕方ない。まだまだ彼女の攻勢が続いているが、彼女の体を観察し少しでも動きを見ようか。
 
――あ、おっぱいが見える。何も着てないもんなあ。大きくはないが小さくはない。動くたびに少し揺れてる。プルンプルン。

 あ、見えなくなった。後ろに回ったからだ。ちょうど長い緑の髪が飛び跳ねた影響でふわりと上へ伸びあがっている。あーうなじもそそるなあ。
 おや、着地した彼女の頭にポンと俺が手のひらを乗せる。そのままナデナデ。おー。手触りいいね。

 彼女はものすごい勢いでこちらに振り返り、真っ赤な顔で口を開く。

「人間とは思えぬほどの実力は理解した! ただ、頭を撫でるなんて……」

「隙だらけだからさ。力もある。スピードもある。身体能力は人間を凌いでいるようだが」

「ならば何故当たらない!」

 彼女の荒々しい声なぞどこ吹く風と言った様子で、俺は彼女と目をしかと合わせる。彼女と俺はちょうど身長が同じくらいだから、真っすぐ立った状態だとちょうど目の位置が同じくらいだ。
 俺の身長は男としては平均より少し高い程度……そんな俺と同じくらいの身長の彼女は長身の部類に入るだろう。とはいえ……龍になれば二十メートルオーバーだから身長差ってレベルじゃあないけど。
 
 目があった彼女は少したじろくが、俺は構わず再び彼女の頭を撫でる。ああ、髪の毛の感触が気持ちいい。

「ば、馬鹿にするな!」
 
 彼女は顔を真っ赤にして怒鳴る。
 
「何故だと思う?」

「どれだけ爪を繰り出しても、お前をすり抜けるようだ! 何者なのだお前は……」

「ただの人間だよ。龍よ。人間だからこそなのかもしれぬ。君の動きを凌げるのは」

「意味が分からない! 一体何が言いたいんだ?」

「武芸というものは龍でも学ぶのかな?」

「もちろんだ。一通りの動きは学ぶ!」

「少し意味が違うな。人間の武芸とは、長い年月の蓄積だ。祖先の築き上げた武芸をより研磨し次の世代へ伝えていくのだ。分かるか? 龍よ。私の武芸は人の歴史の蓄積なのだと」

「ッ! 我々は基本動作を学ぶのみだ。しかしそれで充分……我々に敵う生物はあの魔王のような例外はあるとはいえ、ほとんど存在しない」

「巨大な身体能力に胡坐をかいていたのだな。龍たちは。私にあしらわれるくらいだ。ベリサリウス様には束でかかっても敵わぬよ」

 ヤレヤレと肩を竦める俺……何か話こんでますけどー終わらないかなあ。もういいよね。終わったんだよね?
 あ、唇プルプルだー。リップも塗ってないだろうにすごいなあ。
 
「お前、名は何という?」

 ぶっきらぼうに美女はキッと俺を睨みつけ吐き捨てるように言葉を紡ぐ。
 
「プロコピウス。……私の事はピウスとでも呼ぶがいい」

 ピウスと呼べというのは、俺への気遣いだろうか……きっとそうだ。プロコピウス(本物)自身は愛称でピウスって呼ばせてたとは思えないからなあ。
 
「そうか。ピウス。頼みがある」

「何かな? その前に私の強さは君たちの目に敵ったかな?」

「もちろんだ! お前は我より強い!」

「ふむ。それは良かった。役目は果たせたようだな」

 俺は腕を組むと、軽く頷く。

<私の役目はここまでだな。では、主導権を戻そう>

 心にプロコピウス(本物)の声が響き、俺の視界が切り替わり、体の主導権が戻る。
 こ、ここでかよ!
 
「ピウス。頼みというのは……」

 突然俺へ口づけをする美女! 何? 何なの? 呪い……まさか。
 俺の心配をよそにすぐ口を離すと、彼女は俺をじっと見つめる。

「私に武芸を教えてくれ。今のは契約の証だ」

「契約?」

「龍の口づけだよ。ピウス。お前に龍の加護を」

「えっと。龍の加護を与えるから武芸を教えてくれと?」

「その通りだ。ピウス。頼む」

 困った……俺に武芸は教えることは出来ない……どうしようう。プロコピウス(本物)さん?

<よかろう。私が面倒を見てやろう。人を凌ぐ身体能力がどう化けるのか楽しみだ……>
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...