無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

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136.お手柔らかに

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 えー、闘技場にいまいるんだがよくここまで作り込んだと感心する。

 闘技スペースは一周400メートルのトラックコースほどの広さがあり、床は雑草を抜いて土を踏み固めた作りになっている。闘技スペースを取り囲むように柵がありその後ろへ観客席が設置されている。
 観客席はベンチが並んでいて、闘技スペースから見ると後ろへ行く程せり上がっており何処から観戦しても問題ないように考えられているのだ。

 さすがカエサル監修の闘技場。隙がない。いい作りだ。
 いつまでも闘技場の出来を眺めていたいが、今は現実逃避したいんだよ。

 何故か?

 それは……

――木刀を持ったベリサリウスが俺と対峙しているからだよ!

 闘技場本日の初戦にしてメインイベントはベリサリウス対プロコピウス!
 お互い木刀で参ったした方が負けだ。制限時間はだいたい三十分。長いな……
 試合開始の合図と共に大きな砂時計がひっくり返され、砂が流れ落ちきるまでが試合の制限時間となる。制限時間を過ぎても決着がつかない場合には引き分けってことだ。
 
 観客席の中央最前列は貴賓席になっており、カエサル、辺境伯ジェベル、小鬼の村長が並んで座っている。彼らの隣には大きなドラが設置してあり、試合開始を告げる時にこのドラが鳴らされる。

<プロコピウスさん、変わってもらえますか?>

 俺は心の中でプロコピウス(本物)に声をかける。

<本当にいいのか? トミー。ベリサリウス様と手合わせできる機会なぞ早々ないぞ>

<ぜひ頼みます>

 良いも悪いもねえよ。変わってくれないと困る……
 俺が目を閉じると体の主導権がプロコピウス(本物)に切り替わる。
 
「ベリサリウス様。胸を借りさせていただきます」

 俺はベリサリウスへ帝国式の礼をすると、ベリサリウスも帝国式で返礼する。
 
「うむ。プロコピウス。全力でかかってこい」

 ベリサリウスの言葉に俺の体が歓喜に包まれる。よっぽど嬉しいんだな……ベリサリウスとやり合うのが……バトルマニアの気持ちは分からない……
 目に入るベリサリウスの顔も口の端をつりあげとても嬉しそうだ。

――ドラの音が鳴り響き、戦闘が開始される。

 俺は勢いよく一歩踏み出すとそのままの勢いでベリサリウスへ握った木剣で袈裟懸けに斬り込む! ベリサリウスはニヤリと笑みを浮かべ、俺の剣を剣で受け止める。
 続いて二撃、三撃、四撃と俺は流麗な動きで剣を繰り出していくが、その全てをベリサリウスは一歩も動かず受け止めて行く。
 剣を振るっている俺だが、力が入っている様子が全くないのが不思議でならない。体を捻りその全てを剣先に集中させているのかな? 力が入っていないのにものすごい手ごたえだよ。
 
「腕は衰えておらぬようだな。プロコピウス」

 ベリサリウスは莞爾かんじと笑い、剣を突き出してくるが、俺はベリサリウスの剣に軽く自身の剣に触れただけで彼の剣を逸らす。

「さすがベリサリウス様。全く息が乱れておりませんね」

 俺も嬉しそうにベリサリウスへ声をかける。
 
 お互いの剣が行き来し、まるで踊りでも踊っているかのように軽快な音が絶え間なく響き渡る。これは決まった型なのかと思うようなお互いに息の合った動きなんだが、恐らく二人は真剣に剣を突き合わせているんだろう。
 二人は本当に楽しそうだ。言葉ではなく、剣で語るとはこういうことなんだろうな。プロコピウス(本物)が楽しいと言った意味が少しだけ俺にも分かった気がしたんだ。

 だが!
 
「プロコピウス。そろそろ行くぞ。お前の流水の動きで防いでみるがいい」

 ベリサリウスのその言葉を最後に楽しい剣の語らいは終わりを告げる。

――ベリサリウスの空気が一変する! これまでの静かな水のような動きから、激しく燃え盛るような荒々しい動きへと。

 こうなると俺は防戦一方になってしまったが、それでも巧みな動きと剣を使ってベリサリウスの剣を凌ぎ続ける。ミネルバやモンスターとやり合った時と比べプロコピウス(本物)の動きは余裕が無いように思えるが、それでもたまに剣を振るうくらいには対応している。
 
 俺は目を閉じる! な、何も見えないんだけど、体はとても自然な動きで左右にステップを踏み、体を逸らし、剣を振るう。

「ほう」

 ベリサリウスから感嘆の声が漏れる。
 
 ここから、恐らく互角の攻防が続いているのだと思う。剣を振るう回数が増え、ベリサリウスから剣がうなる音の聞こえる回数が減っているからだ。

「腕を上げたな。プロコピウス」

「恐縮です」

 これほどの動きをしている二人だが、まだしゃべる余裕があるのかよ! もちろんお互いの手は一切止まっていない!
 
 さらにベリサリウスの動きが変化する! これまでの激しい荒々しい動きから、洗練された動きへと。しかし、剣の勢いは衰えていない。表現は難しいけど、動の中に静があると言えばいいのか。
 俺はこの動きに変化したベリサリウスから徐々に押され始めると、また防戦一方になってしまう。
 
 ベリサリウスから一撃こそ入れられなかったものの、壁際まで追い詰められてしまった。
 
「参りました。ベリサリウス様」

 そこで俺は両手を広げ降参のポーズを取る。

「驚いたぞ。プロコピウス。いつのまにここまでできるようになったのだ」

 ベリサリウスは敗れた俺を褒めたたえる。
 
「ここに来てから戦いの内にです。自身より強大な身体能力を持つ相手に対することで新たな境地を学びました」

「おお。そうか。さすがプロコピウス」

「しかし、まだまだベリサリウス様にはかないません」

 俺は少し悔しそうにうつむくが、ベリサリウスは豪快な笑い声をあげ俺へ向き直る。
 
「これは私もうかうかしていられぬぞ。次はもっとお前が迫ってきそうだな」

「恐縮です」

 俺達の戦いが終わったことを見て取った観客が一斉に拍手と歓声を俺達へと向ける。

 歓声はしばらくたっても鳴りやまなかったが、観客席からカエサルが降りてきて俺達の元まで歩いて来た。
 
「お二人とも素晴らしい腕をお持ちだ。久しぶりの闘技場での観戦でこれほどのものが見る事ができるとは。感動したよ」

 カエサルは手放しに俺達を褒めたたえ、観客へ手をあげると歓声がさらに大きくなる。

「カエサル様。お褒めいただき恐縮です」

 ベリサリウスはカエサルに礼を行う。
 
「ベリサリウス殿の武勇、古今東西に並ぶものなしですな。素晴らしい」

 カエサルはベリサリウスの礼に応じると、また観客席に戻って行く。
 
 ここで体の主導権がプロコピウス(本物)から俺へと戻って来た。
 ふう。なんとか怪我せずに乗り切った。しかし、ベリサリウスだろうがミネルバだろうが恐怖心は変わらないぜ。分かったことはベリサリウスは強いってことだな。
 いつも無双していたプロコピウス(本物)が追い込まれるなんて、ベリサリウスが強いことは分かっていたが本当にプロコピウス(本物)より一枚上手なんだなあ。

<ありがとうございます。プロコピウスさん>

<こちらこそ、礼を言いたい。さすがベリサリウス様だ。お強い>

<俺には何が何だか分からなかったですよ>

 心の中でプロコピウス(本物)に礼を言うと、俺とベリサリウスは闘技スペースから退場する。
 さて、あとは観客として眺めていたらいいだけだ。良かった良かった。
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