無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

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137.ジャムカの実力

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 俺とベリサリウスは闘技場の観客席にいるカエサル達の座る特等席で今後の出場者を観戦することにする。
 俺は辺境伯ジェベルの隣に席が用意されていたのでそこに腰掛ける。

「見事な腕だな。プロコピウス殿は」

「恐縮です」

 俺が座るとジェベルが俺を称えて来る。ま、まあ頑張ったのはプロコピウス(本物)なんだけどな。

「貴殿の腕に匹敵する者は、残念ながら辺境伯領にはいないな」

「そこまで腕に自信があるわけでは……ベリサリウス様にはまだまだ敵いません」

「謙遜せずともよい。貴殿なら聖王国の双璧に届くやもしれんな」

 聖王国の双璧? 初めて聞くけど、プロコピウス(本物)より優れた腕を持つような奴がいるのかよ。
 聖王国も侮れないな。

「その双璧とはどのような方で?」

「聖王国の双璧……騎兵将カミュ、歩兵将ダリア。この二人の実力は隔絶している」

 ジェベルは肩を竦める。
 カミュにダリアか。騎兵将、歩兵将という役職からして兵を率いる立場なんだろうな。

「なるほど……」

 俺の呟きに、ジェベルは言葉を続ける。

「もっとも剣技だけなら貴殿の方が上に見えたがな」

「ベリサリウス様には敵いませんが……」

「貴殿は上の者を立てるところが好ましいな」

 ジェベルはそう言ってニヤリと笑みを浮かべた。俺がジェベルに騎兵将と歩兵将について尋ねようとした時――
 
――試合開始のドラの音が大きく響き渡る。

 ドラの音と共に、俺とジェベルはそろって闘技スペースに目をやる。戦っているのはジャムカと辺境伯の禿げ頭の騎士団長モンジューかな。辺境伯ジェベルから事前にモンジューは辺境伯領一番の使い手と聞いているが……
 戦いが開始されたというのにジャムカは一歩も動かない。それどころか木剣さえ構えていないんだが……何だろう?
 
 モンジューが何か呪文を唱えると、彼の体が白く淡い光に包まれる? あれは恐らく身体能力強化の魔法だな。リベールの緑色の光と異なるから別の魔法だろう。モンジューの魔法を見たジャムカはというと……
 
――口に手を当て眠そうにあくびをしているではないか……

 やる気あるのかよあいつ。あまりのジャムカの態度に恐らく激高したモンジューが勢いよくジャムカに斬り掛かるが、ジャムカは床に手をついてモンジューの剣をかわすと、しゃがんだままの姿勢で前転する。
 モンジューはその態度にますます激高したのか、剣をさらにジャムカへ向けて突き刺すが、立ち上がったジャムカの頭突きを胸に受けあっさりと仰向けに倒れ伏し、気絶してしまった。
 
 なんだこれ……ジャムカは何してんだよお。お偉いさんの前だというのに。まあ、彼らしいといえば彼らしいのか。
 モンジューの気絶によってジャムカの勝ちが宣言されると、観客から大きな歓声があがる。見るとベリサリウスまで立ち上がって拍手しているではないか!
 あの戦いのどこに拍手の要素が……

「プロコピウス。ジャムカ殿は相当やるぞ」

 いつの間にか俺の隣に立っていたベリサリウスが鋭い眼光をジャムカに向けながら俺へと声をかける。
 え? あのでんぐり返しのどこがやるのか分からない……達人には見るところがあったのか?
 
「え、ええ。そうですね」

 俺が曖昧に応えると、ベリサリウスはうむうむと鷹揚おうようと頷いているではないか。

「ぜひ一度手合わせしてみたいものだな。ジャムカ殿の腕は恐らく私と互角……」

 何だって! ベリサリウスと互角なのかよ。超人プロコピウス(本物)を越えるベリサリウスと並ぶジャムカ……
 もう天上の競い合い過ぎて誰がすごいかとか想像がつかねえ。
 
「よお。ピウス」

 噂をしていたら、ジャムカが観客席まで戻って来ていたようだ。俺は彼の声がした方向へ振り向くと軽く礼をする。

「お疲れさまでした。ジャムカ殿」

 俺が声をかけるもジャムカの顔がどうも優れない。一体何があったんだろう。
 
「ピウス。もう一回戦わねえか?」

「え?」

 ジャムカよ。一体何を言っているのだ。俺はもう役目を終えたのだ。戦いたくなんかねえよ。ベリサリウスと戦って、次にジャムカとか悪夢じゃねえかよ!

「あれだと、せっかく戦ったってのに全く熱くなれねえ」

「頭突きで終わりましたものね」

「武器を使うまでもなかったんだぜ。達人が来るっていうから楽しみにしてたのによぉ」

 ジャムカはとても不満そうだけど……
 
「ジャムカ殿だったかな。モンジューはあれでも辺境伯領で一番の使い手なのだ。許せ」

 ジャムカの声が聞こえていたんだろう。辺境伯ジェベルがジャムカをたしなめる。さすがにトップから釘を刺されたジャムカもバツが悪そうな顔になる。

「ジェベルさんがそう言うならしゃあねえな。ジェベルさん、強ええ奴しってんだろ?」

 ジャムカは相手が辺境伯と言えどもいつもの調子で彼に尋ねる。

「知っているとも。聖王国最強の騎兵カミュならばジャムカ殿も満足するんじゃないかな」

「ほう。騎兵か。馬に乗った俺について来れるかもしれねえのか。それは……興奮するなあ……」

 騎兵カミュの姿を想像したのか、ジャムカのまとう空気が一変する。獰猛で動物的なこの空気……どんな猛獣より猛々しい。これが本来のジャムカなんだろう。
 正直、空気に当てられただけで倒れそうだよ……

「ジャムカ殿。いい気をお持ちですな。感服しましたぞ」

 ジャムカの獰猛な気配に全く動じた様子のないベリサリウスが感心したように口を挟む。
 
「ほお。ベリサリウスさん。あんたとも一度やりあいてえなぁ」

 ジャムカとベリサリウスは視線を合わせお互いにニヤリと微笑む。間に挟まれた俺の気持ちを少しは考えて欲しい……も、漏らしたらどうすんだよ。

<トミー。ジャムカ殿もベリサリウス様もいい気を放っておられるな>

 ここで心の中にプロコピウス(本物)の声が混じって来る。バトルマニア共め。俺を一緒にしないでくれないかな。切に願うよ。

<俺はもう立ち去りたくて仕方ないんですけど……>

<またいつもの冗談か? ジャムカ殿は動の極致。ベリサリウス様は静と動のバランスを持つ。どちらが勝つのか見てみたくないか?>

 プロコピウス(本物)の言葉を解釈すると、ジャムカは動物的な勘と戦闘センスを持つのだろう。先ほどベリサリウスと戦った時に感じたあの炎のような猛々しい攻め方。あれをもっと激しくしたものかな。

――試合開始のドラの音が大きく響き渡る。

 睨み合うベリサリウスとジャムカの間を切り裂くようにドラの音が響き渡ると、二人は闘技スペースに目線を動かす。三試合目にして最後の戦いは女子同士の対決だ。
 人型のミネルバとぺったん戦士リベール。どちらも高い戦闘能力を持つがどうなる?
 
 しかし、戦闘は思わぬ推移で中止となる。リベールは木剣で斬りかかり、ミネルバは爪で木剣を受け止めつば迫り合いになったんだけど、ミネルバの爪は鋼鉄をも切り裂く強度と鋭利さを持っている。
 結果、木剣が真っ二つになって終了となった。
 
 ミネルバは木剣を使えないから、リベールが爪での戦闘を了承したのだが、一発目で武器が壊れてしまい試合中止……次回やるならもう少し考えないとだな。
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