無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

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142.忘れられていたモンジュー

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 ミネルバに朝一で連絡したところ、すぐに来るというので、ミネルバの到着を待つ間にザテトラークまで行く旅の準備をすることにした。ミネルバは飛龍に比べて格段に早く、ローマからザテトラークまでおよそ三時間で到着してしまうのだ。
 飛龍だとその倍はかかるから、日帰りが難しくなるけど、ミネルバならローマへその日のうちに帰ってこれる。いそいそ旅の準備をしていると、足音がする……誰か来たのかなと立ち上がって振り返ると、エルラインがとてもいい笑顔で立っていた。
 いつもながら心臓に悪いよほんと……
 
「おはよう。エル」

「やあ。ピウス。久しぶりだね」

「そういえば十日ほど会ってなかったよな。何かしてたの?」

「観察だよ。観察」

「どこの観察?」

「聖王国の王都だよ」

 ちょ。今一番欲しい情報を観察していたのかよ。エルラインは一体何を調べていたんだろう。あ、そういやだいぶ前に魔王討伐がうんぬんとか言ってた気がするけど、そのことかな。

「魔王討伐やらの件?」

「そうそう。動きがありそうだったんだけど、また中止になったみたいなんだ」

「平和な方がいいじゃないか……」

「平和って、君たちは聖王国と戦うんだろう? よくそんなことが言えるね」

「そう言われると……そうだな……」

 確かにエルラインのいう通りだ。俺達はカエサルの言葉を信じるなら一年後に聖王国と戦争を行う。俺はそのための情報収集をこれから行うんだからな……
 どの口が平和って言ってんだよってのには確かにそうだよな。
 戦争をしたくない気持ちはもちろんあるけど、聖王国とはいずれぶつかることは確実で、勝てる戦いにするためにカエサルが頭を捻り戦場を用意してくれるんだ。
 
 エルラインはどうしたいんだろう。魔王討伐隊に来て欲しいのか?いや、俺をからかって面白がってるだけな気がするぞ。

「エル。魔王討伐隊は来ても来なくてもいいんだよな?」

「おや、気が付いてしまったようだね。うん。君の反応が面白かったからね」

 やっぱりか! エルラインは敵対する者の命に容赦がないのは昔から変わっていない。まるで路傍の石のように命を扱う姿に俺にも思うところはあるけど、彼も俺もお互いの価値観については不干渉を貫いている。

「エル。一つお願いがあるんだけど……」

「なんだい? 君には銀の板で協力してもらったからね……銀の板を調べてもらって妄想癖がついてしまったことは、悪いと思ってるんだ。僕に出来ることはやるよ」

 も、妄想癖って何だよ!

「いや、だから銀の板には妖精が住んでるんだって」

「ピウス……銀の板はもういいから。悪かったよ」

 エルラインは肩を竦め、彼は滅多に見せない憐れむ用な目で俺を見る。
 シルフは俺以外には見えないんだよな……エルラインは俺の妄想だと思ってるようだし。彼の誤解が解ける日はやって来るんだろうか……

「頼みたい事なんだけど、モンジューに遠距離会話できる?」

「誰だっけ? ピウスの知り合い?」

 エルラインだってザテトラークで直接会ってるじゃないかよ!
 あのハゲの騎士団の奴だよ。闘技場でジャムカの頭突きで倒れた奴。

 俺はエルラインにモンジューの事を説明したが、彼はどうもしっくり来ないようだった。

「……という奴なんだけど」

「興味がなさ過ぎて覚えてないね。で、そのモンジューに何するのかな?」

「これから行くからと伝えたいだけなんだよ」

「ふうん。ザテトラークかい? 残念だけど、僕が顔を覚えてない者とは会話できないな」

「そうか。ありがとう。そろそろミネルバが来るからザテトラークに行ってくるよ」

「ふむ。君が旅の準備をしていたから来てみたけど、面倒だし転移魔術で行こうか。僕も行くよ」

「それは有難い。助かるよ。ミネルバにせっかく来てもらってるんだけど」

「彼女には餌でもあげとけば満足するさ」

 エルラインの言い草は酷いものだけど、実に的を得ている。ミネルバは旨い食べ物を与えておけば満足するんだよな。お礼と言って彼女が一番喜ぶのは食べ物だ。実に動物的だよな。龍って。

 呼んでしまって申し訳ないけど、今日のお食事当番のティンにミネルバの食事を頼むか。
 俺はエルラインにティンへミネルバの事を遠隔会話で伝えてもらい、ミネルバには俺から彼女と通信して謝罪しておいた。
 忘れがちだけど、俺とミネルバは離れていても会話できるんだ。ミネルバは気にした様子もなく、食事と聞いて無邪気に喜んでいた……


◇◇◇◇◇


 エルラインの転移魔術で移動した先は……ザテトラークの城のテラスだった。ザテトラークの街にはテラスからしか入った事が無いってのも凄いよな。

 テラスで見張りをしていた兵は俺たちが突然現れると腰を抜かしそうになっていたが、俺の名前を告げると納得したように頷き、城の中へと入っていった。

 間も無く慌てた様子でハゲの騎士団長モンジューが出て来て、俺に敬礼を行う。
 敬礼されるような立場じゃないんだが。以前会った時に比べてモンジューの目から俺への尊敬や畏敬の念が感じられるんだよね……

「プロコピウス殿。お待たせいたしました。私に用と聞いておりますが」

 モンジューは息を切らせながら俺へ問いかけてくるけど、どうしちゃったんだよ! もっと悠然と構えてくれよ。辺境伯領の上位者なんだろ。

「たいした用事では無いのです。個人的に気になっていることでして」

「ほう。プロコピウス殿が気になっていること。興味深いですな」

 むっさ食い付いて来たんだけど! モンジューのこの変化が怖いぞ。

「聖王国の双璧や聖王国の戦法など分かることを教えて欲しいんです」

「おお。さすがあれだけの腕を持つプロコピウス殿だ。双璧と一騎打ちを考えておられるのですな」

 うわあ。こいつもバトルマニアかよ。態度が変わったのはプロコピウス(本物)の実力を見たからだろうな……一騎打ちなんてやらねえよ。集団戦を行うのに一騎打ちとかナンセンスだろ。
 個では集団には勝てない。今隣でニヤニヤしてるエルライン以外は。

 俺は興奮するモンジューに連れられて、城内の来客用の部屋で彼から熱く、暑苦しく双璧や聖王国についての熱弁を聞くことになった。

 教えてくれるのはいいんだけど、もう少し落ち着いて話をして欲しかった。む、無駄に疲れたぞ。

 聖王国の戦法は余り良く分からなかったけど、テルシオ導入前のスペインに近い形だな。盾と剣または槍を持った軽装の歩兵に、騎兵も軽騎兵だ。
 山岳地帯などの起伏に富んだ場所で戦うに向いた部隊だけど、平原では弱い。
 ジャムカたちと戦っていた聖王国兵は重装備に長槍と平原向けの装備だったから、場所によって変えてくる柔軟性を持ってそうだな。

 騎兵将カミュは努力する天才といった性格を持つ人物らしい。どんな状況でも油断せず、持てる限りの全力を持って戦いに挑むらしい。
 個人武勇は天賦の才を持つとモンジューは言っていたが、毎日の鍛錬を欠かさず強くなることに貪欲とのことだ。

 歩兵将ダリアは奔放な性格らしく捉えどころが無いとモンジューはダリアをどう表現するか迷っていたみたいだ。
 天性の勘とトリッキーな動きで、意表をつくのが得意とのことだ。カミュとはいいコンビに見えるけど……

 結論から言うと、互角の兵力ならベリサリウスはまず勝てると思う。この二人よりナルセスの方が兵を率いたら厄介だろうなあ。ま、まあ。名将だと聞いてるし優れた戦術能力を持つんだろうけど、俺にはベリサリウス以上の戦術能力は思い付かない。

 互角の兵力でやりあうことは無いから机上の空論なんだけどね。
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