拝啓、無人島でスローライフはじめました

うみ

文字の大きさ
2 / 31

2.拝啓、ガチャを引きました

しおりを挟む
『名もなき島へようこそ。白夜さん。
 あなたにはこの島で生活してもらいます。
 ちゃんとご褒美も準備しておりますので、事後承諾になりますがご了承ください。
 島での生活を行うにあたって、何らサバイバル経験のないあなたにプレゼントがあります。
 それは「健康な体」です。なんと風邪も引きません』

 指南書の1ページ目にはこんな文章が記載されていた!

「まじかあ。何で僕が……だけど、悪いことばかりじゃないか」 

 もし指南書に書かれていることが本当ならば、だけどね。
 喉から手が出るほど欲しかった。毎日毎日願った健康な肉体を手に入れたとなれば、自分の夢がかなったと言っても過言ではない。
 続いて指南書の2ページ目を開く。
 
『この島にあるものは全て利用して頂いて構いません。
 ・推奨事項
 小屋で休むこと
 井戸水を利用すること
 カピーと夜を過ごすこと
 海の書、島の書を埋めていくこと』
 
「水があることは幸いだ。そんで、今更ながらこの場所は島だったんだな……ぐるっと一周回って確かめてみようか」

 どれくらいの広さなのかにもよるけどね。
 他にもカピーと一緒に寝泊まりしろとか書いているな。
 海の書と島の書の件は「埋める」とはどういうことなのだろう? まさか穴を掘ってってことはないだろうし。
 いろいろ試してみて「埋める」の意味を探ろう。
 お、まだ続きがある。指南書に書かれている事項はどれも重要なことばかり。

『本島は他の島とは少し異なります。
 なんと船のように動かすことができます。どうぞ海の旅もお楽しみください。
 動かし方はレバーを操作するだけですので、難しくありません、ご安心を』
 
 ご安心を。じゃないって!
 きっと書いた人はにっこりしているのだろうけど、僕にとっては笑い事で済ませることじゃないことは明らか。
 ここまでの文章を読むに僕には何らかの課題が課せられていて、クリアすることで褒美がもらえる。
 いろいろ思うところはあるが、先に全部読んでからにしよう。
 
 続いて3ページ目。隣のページは空白だ。
 
『現在のところ、本島にいる人間はあなた一人です。
 本島の初期配置は絶海の孤島状態になります。
 
 ですが、本島は移動できます。
 七つの海を制覇し、あなたの願いを叶えてください。
 その時まで首を長くしてお待ちしております。
 ボンボヤージュ』
 
 勝手なことを言ってくれるよな。
 慇懃無礼で高みから見物ってのが気に入らない。だけど、クリアすれば下手人に会う事ができるってことだろ。
 そのうえ願いも叶うという。これが冒頭で書いていた「ご褒美」の中身ってことかな。
 
「生活しろと言ってもだな……」

 何からやればいいのか。
 そうだな。暗くなる前に井戸の確認をしておこうか。
 水が無いとすぐに脱水症状になってあの世に旅立ってしまうからね。
 
 小屋を発見した時に井戸も目に入っていたのだ。
 井戸は手押しポンプ式でレバーを上げ下げすることで口から水が出てくる仕組みになっていた。
 本来だと手押しポンプを稼働させるには呼び水が必要なのだけど、生憎水が無い。
 水が出ないだろうけど、試しにレバーの上げ下げをしてみようとやってみたところ水が出たんだ!
 ますます謎が深まるが、僕にとって悪い事じゃないのでこれで良しとすることに。
 そんなわけでさっそく水を飲もうと思ったんだけど、バケツやコップを持っていないので両手を合わせて水をため口に含んでみる。
 
「うん、大丈夫そうだ」

 しかし、食材があったとしてもこれじゃあ生活をしていくには厳しいな。
 食器、鍋、火起こし……など生活を支える必需品がなければどれだけ食材を持っていても宝の持ち腐れだ。
 小屋の中にナイフ一本でもあればいいんだが。
 今のところ、使えそうなものは浜辺に放置されたままの竹竿くらい。
 指南書の言葉が真実だとすれば、竹竿の持ち主が浜辺に現れることもないだろう。
 つまり、竹竿はいつでも回収に向かうことができる。
 
 ◇◇◇
 
 小屋の中を探してみたものの、部屋の隅に箱が一つあっただけだった。
 大きさは学校の机にちょうど乗るくらいのサイズと言えばいいだろうか。上開きする箱でゲームで見る宝箱のような見た目をしている。
 開けてみたけど、中は空っぽだった。
 
 そんなことをしていたら、夕焼け空が終わり部屋の中も暗くなってきている。
 するとむくりとカピーが起き上がりのそのそと動き始めた。

「カピバラって夜行性だったっけ……」

 小屋に入ってから、いや、小屋の前にいた時からカピーはずっと寝そべっている。
 唯一起き上がったのは小屋の中に移動したときだけと言うのんびりっぷりであった。
 鼻をひくつかせ、ぼへーっと口を開き壁へ顔を向ける。
 
「うわっ」

 ビックリした!
 突然カピーの目が光り、映写機のように壁に画像が投影されたのだ。
 画像といってもとてもシンプルなもので黒地に白で文字が書かれているといったものだった。
 
『すたーたす
 クラフト 熟練度0
 採集 熟練度0
 釣り 熟練度0
 今日の成果 無し』
 
 すたーたすって何だろ。ステータスの誤字?
 注目すべきはそこじゃない。全部0なのはいいとして、これって僕の能力の表示だと推測できる。
 つまり、この三つのカテゴリーは練習をすれば関連する能力が格段にアップするってことじゃないだろうか。
 クラフトの技術で物を作り、採集と釣りで食材だけじゃなく素材も収集する。
 何もできないサバイバルのサの字も知らない僕がこの島で生きていけるように配慮してくれた力なのかもしれない。
 そこまでやるなら、元の世界に帰してくれてもいいものだと思わなくもない……。
 健康な肉体との引き換えに無人島生活を強要されるってのなら、甘んじて受け入れるしかないか。
 
「ありがとう。カピー。毎晩これを見せてくれるのかな?」
「きゅっきゅ」

 何この可愛らしい鳴き声……。ちょっとときめいてしまった。
 お、画像が切り替わるぞ。
 
『デイリーガチャを引きますか?』
「そらもちろん。引くよ」
『どこどこどこどーん』

 え、えええ。
 気の抜けるメッセージを最後にカピーの目が元に戻る。
 ガチャを引いたと思われるのだが、特に何か出て来た様子はない。
 あ、ひょっとして。
 
 宝箱を開けるとヤカンが一つ入っていた……。
 ヤカンか。あって困るものじゃないけど、明日のガチャに期待だな。

 ヤカンをテーブルの上に置き、ベッドに寝転がる。

「明日は何か食べないと……。火を使わずに食べることができるもの……フルーツがあればいいなあ」

 なんて考えていたら、すぐに心地よい眠気が襲ってきたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...