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26.ご利用の注意点
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『島の移動にはいくつか注意点があります。
・陸地を越えて進むことはできません
・特定種族が進行方向にいる場合は進むことができません
・舵は八方向のみとなり、直線的に進みます
・特定条件を満たすと移動できるエリアが拡大します』
「結構条件があるように思えるけど」
「船だと思えば、こんなもんなのかな?」
パックと顔を見合わせ頷き合う。
ニーナ? 彼女は嬉しいことに僕のために内職をしてくれている。
僕の着替えが無いと聞いた彼女は、もう一度海に潜り、海の素材を使って服を作ってくれるって。
海の素材を使って……となると少し不安になるが貝殻ブラジャーは先んじて「要らない」と言っておいた。
どうも彼女は僕が貝殻ブラジャーを好きだとか勘違いしている節がある。それも、僕が装着したいと思っている方向で。
自分で作ろうと思っていたけど、彼女が作ってくれるのなら僕が彼女の服を作ろうかな。
ズボンとかズボンとか、ズボンを。ノーパンなのは致し方ないと諦めよう。ならば、見えなきゃいいだけなのだ。ははは。
我ながら才能が怖い。
「なあなあ。あんちゃん。特定種族って何だろうな?」
「うーん。たとえば海上に漂流者がいたとするだろ。島がその人を巻きこんだらゾッとしないか?」
「そういうことか!」
「あくまで僕の推測だけどね。安全装置みたいなもんじゃないかって」
特定種族とは知的生命体が対象なんじゃないかと思っている。
魚とか海藻とかも知的生命体と同じ命だから、それらも潰さないように差別するなという想いもあるけど、それを言っていたら「動く」ことなんてできないからな。
この制限も僕の性格を考えてのことなのかと勘ぐってしまう。
この世界にはニーナのような海の中に住む知的生命体がいる。島が彼女ら海中種……でいいのかな。海中種を押しつぶして村を壊滅させたとなれば、この先は考えないでおく。
一人七面相をする僕をよそにパックの興味は次のことに移っているようだった。
「移動できるエリアってのは」
「指南書に七つの海とか書いていたから、そのことじゃないかな。特定条件は何のことか全くわからないな」
「そのうち、何とかなるんじゃないかな!」
「だな」
指南書の最初にどんなことが書いてあったっけ……。確か「島の生活を楽しめ」とかそんなことが書いてあった記憶だ。
指南書は言い換えると攻略本みたいなもので、ゲーム的に表現するなら指南書の記載通りにストーリーを進めるとイベントが進む。
となれば、島での生活を充実させるように行動していれば自ずと道が開ける……はず。
指南書が提示した海の書と島の書にある記載が増えていけば進むんじゃないかな?
今のところ、登録数は順調に増えていっているから良しだろ。
「明日、本格的に島を動かしてみるか」
「やったー。楽しみ!」
パタンと本を閉じ、ベッドに腰かける。
パックは省エネモードなのか、カモメ姿に変化した。
◇◇◇
「できましたああああ!」
「ん?」
いつの間にか寝てしまっていたようだ。ニーナの奇声で目が覚めた。
そうか、彼女はずっと内職を頑張っていてくれたんだな。僕とパックはうつらうつらして寝ちゃっていた。
仕方ないよ。海の中で何度も溺れそうになったんだもの。
それにしても、彼女は元気だ。あれだけ動き回ったってのに。
「あ、ビャクヤさん。起きてらっしゃったんですね」
「こんな時間まで、手元も暗いだろうに」
「マーメイド族は夜目が利くので大丈夫です!」
「そういや、そんなことを言っていたな」
「そんなビャクヤさんのために! こんなものも用意しました!」
じゃーんと両手の上に白い塊を乗せたニーナが、満面の笑みを浮かべる。
何だろうこれ? 指先で触れてみたら、察しがついた。
この独特の柔らかさは蝋かな?
「鮫の油を固めて海藻を混ぜたものです! 火をつけると良い感じで灯りになりますよ」
「おおお。マーメイド族には必要なさそうだけど」
「泡の中はここと違って半月より暗くなると月明かりが完全に届かなくなるんです。そうなると、暗すぎて見えなくなっちゃいます」
「そういうことか」
蝋を燃やすにしても受け皿がいる。
準備のいいことにニーナが陶器のコップも手元に持ってきてくれていた。
何だか怖い。彼女がこれだけ気が回るなんて意外過ぎて、何かとんでもないことが待ち構えているんじゃないかと疑心暗鬼になる。
いやいや、まさかそんな。一応、服を作るといっていたのだから、間違えたとしても女性ものが出来上がる程度だろ。
女性ものなら彼女に着てもらえばいいだけさ。
100円ライターで蝋に火をつけると、ロウソクより二倍ほど明るい光を放ち始める。
これはいいな。炎の勢いが強いってわけじゃないのに、明るさが二倍とは。
鮫がはじめて役に立った。すげえぞ、鮫。
でも、被るのは勘弁な。
「この明るさなら、僕でも作業ができるくらいだよ」
「よかったですー」
「といっても、夜も遅い。今日のところは寝ようか。ふああ」
「その前に見て頂けませんか?」
「ご、ごめん。蝋の光に感動して(服のことが)飛んじゃってた」
「いえ! ビャクヤさんが喜んでくださるなら何でも!」
はい! と嬉しそうに完成品を掲げるニーナ。
……寝ようか。
僕は何も見てない。
しかし、ニーナが僕の心中を読めるはずもなく。
「どうですか! 男の人用は初めて作りました!」
「え、えっと、これは寝間着?」
「泡の中での生活用です!」
「そ、そう……」
ど、どこから突っ込んだらいいんだよお。
触れたくない、だけど、彼女が一生懸命つくってくれたんだ。なるべく当たり障りのないことを尋ねるか……。
「素材は何だろうこれ。ニーナのパンツと同じ?」
「はい! クラゲです。綺麗ですよね」
「そ、そうね。透明じゃなくて薄っすら黒が入っているんだ」
「はい。男の人は黒っぽい色が好きだと思いまして」
「へ、へえ。これさ。おへそが見えるよね。胸も」
「腹筋を見せるのが流行と聞いてます。男性でもちゃんと大事な部分は隠れますよ」
「べ、別に隠れなくていいんだけど……逆にこれだと気持……嫌らしい」
言いなおしたけど、どっちもどっちだよ。嫌らしくても気持ち悪くても意味合いなんて同じなんだよ。
ニーナが丹精込めて作ってくれた服はレスリングレオタードにそっくりだった。
肩ひものように伸びた部分がヘソの下あたりまで続き、臀部はぴっちりと布が覆う。太ももの上あたりまでぴっちりとね。
もうやだこれ……。
「ニーナ、これ、男の人に流行ってるって……」
「はい! よく見かけます!」
「ナマズか……」
「男の人です」
「人間にはちょっとこいつは刺激的過ぎるよ」
「そ、そうなんですか。し、仕方ありません。着かたが分からないんですよね。でしたら、わたしが着て見せますか?」
「そう言う問題じゃあ、ま、待って。脱がないで」
といっても着ているものは貝殻ブラジャーだけなんだけどな。
どうしようこれ。絶対に着たくない。
・陸地を越えて進むことはできません
・特定種族が進行方向にいる場合は進むことができません
・舵は八方向のみとなり、直線的に進みます
・特定条件を満たすと移動できるエリアが拡大します』
「結構条件があるように思えるけど」
「船だと思えば、こんなもんなのかな?」
パックと顔を見合わせ頷き合う。
ニーナ? 彼女は嬉しいことに僕のために内職をしてくれている。
僕の着替えが無いと聞いた彼女は、もう一度海に潜り、海の素材を使って服を作ってくれるって。
海の素材を使って……となると少し不安になるが貝殻ブラジャーは先んじて「要らない」と言っておいた。
どうも彼女は僕が貝殻ブラジャーを好きだとか勘違いしている節がある。それも、僕が装着したいと思っている方向で。
自分で作ろうと思っていたけど、彼女が作ってくれるのなら僕が彼女の服を作ろうかな。
ズボンとかズボンとか、ズボンを。ノーパンなのは致し方ないと諦めよう。ならば、見えなきゃいいだけなのだ。ははは。
我ながら才能が怖い。
「なあなあ。あんちゃん。特定種族って何だろうな?」
「うーん。たとえば海上に漂流者がいたとするだろ。島がその人を巻きこんだらゾッとしないか?」
「そういうことか!」
「あくまで僕の推測だけどね。安全装置みたいなもんじゃないかって」
特定種族とは知的生命体が対象なんじゃないかと思っている。
魚とか海藻とかも知的生命体と同じ命だから、それらも潰さないように差別するなという想いもあるけど、それを言っていたら「動く」ことなんてできないからな。
この制限も僕の性格を考えてのことなのかと勘ぐってしまう。
この世界にはニーナのような海の中に住む知的生命体がいる。島が彼女ら海中種……でいいのかな。海中種を押しつぶして村を壊滅させたとなれば、この先は考えないでおく。
一人七面相をする僕をよそにパックの興味は次のことに移っているようだった。
「移動できるエリアってのは」
「指南書に七つの海とか書いていたから、そのことじゃないかな。特定条件は何のことか全くわからないな」
「そのうち、何とかなるんじゃないかな!」
「だな」
指南書の最初にどんなことが書いてあったっけ……。確か「島の生活を楽しめ」とかそんなことが書いてあった記憶だ。
指南書は言い換えると攻略本みたいなもので、ゲーム的に表現するなら指南書の記載通りにストーリーを進めるとイベントが進む。
となれば、島での生活を充実させるように行動していれば自ずと道が開ける……はず。
指南書が提示した海の書と島の書にある記載が増えていけば進むんじゃないかな?
今のところ、登録数は順調に増えていっているから良しだろ。
「明日、本格的に島を動かしてみるか」
「やったー。楽しみ!」
パタンと本を閉じ、ベッドに腰かける。
パックは省エネモードなのか、カモメ姿に変化した。
◇◇◇
「できましたああああ!」
「ん?」
いつの間にか寝てしまっていたようだ。ニーナの奇声で目が覚めた。
そうか、彼女はずっと内職を頑張っていてくれたんだな。僕とパックはうつらうつらして寝ちゃっていた。
仕方ないよ。海の中で何度も溺れそうになったんだもの。
それにしても、彼女は元気だ。あれだけ動き回ったってのに。
「あ、ビャクヤさん。起きてらっしゃったんですね」
「こんな時間まで、手元も暗いだろうに」
「マーメイド族は夜目が利くので大丈夫です!」
「そういや、そんなことを言っていたな」
「そんなビャクヤさんのために! こんなものも用意しました!」
じゃーんと両手の上に白い塊を乗せたニーナが、満面の笑みを浮かべる。
何だろうこれ? 指先で触れてみたら、察しがついた。
この独特の柔らかさは蝋かな?
「鮫の油を固めて海藻を混ぜたものです! 火をつけると良い感じで灯りになりますよ」
「おおお。マーメイド族には必要なさそうだけど」
「泡の中はここと違って半月より暗くなると月明かりが完全に届かなくなるんです。そうなると、暗すぎて見えなくなっちゃいます」
「そういうことか」
蝋を燃やすにしても受け皿がいる。
準備のいいことにニーナが陶器のコップも手元に持ってきてくれていた。
何だか怖い。彼女がこれだけ気が回るなんて意外過ぎて、何かとんでもないことが待ち構えているんじゃないかと疑心暗鬼になる。
いやいや、まさかそんな。一応、服を作るといっていたのだから、間違えたとしても女性ものが出来上がる程度だろ。
女性ものなら彼女に着てもらえばいいだけさ。
100円ライターで蝋に火をつけると、ロウソクより二倍ほど明るい光を放ち始める。
これはいいな。炎の勢いが強いってわけじゃないのに、明るさが二倍とは。
鮫がはじめて役に立った。すげえぞ、鮫。
でも、被るのは勘弁な。
「この明るさなら、僕でも作業ができるくらいだよ」
「よかったですー」
「といっても、夜も遅い。今日のところは寝ようか。ふああ」
「その前に見て頂けませんか?」
「ご、ごめん。蝋の光に感動して(服のことが)飛んじゃってた」
「いえ! ビャクヤさんが喜んでくださるなら何でも!」
はい! と嬉しそうに完成品を掲げるニーナ。
……寝ようか。
僕は何も見てない。
しかし、ニーナが僕の心中を読めるはずもなく。
「どうですか! 男の人用は初めて作りました!」
「え、えっと、これは寝間着?」
「泡の中での生活用です!」
「そ、そう……」
ど、どこから突っ込んだらいいんだよお。
触れたくない、だけど、彼女が一生懸命つくってくれたんだ。なるべく当たり障りのないことを尋ねるか……。
「素材は何だろうこれ。ニーナのパンツと同じ?」
「はい! クラゲです。綺麗ですよね」
「そ、そうね。透明じゃなくて薄っすら黒が入っているんだ」
「はい。男の人は黒っぽい色が好きだと思いまして」
「へ、へえ。これさ。おへそが見えるよね。胸も」
「腹筋を見せるのが流行と聞いてます。男性でもちゃんと大事な部分は隠れますよ」
「べ、別に隠れなくていいんだけど……逆にこれだと気持……嫌らしい」
言いなおしたけど、どっちもどっちだよ。嫌らしくても気持ち悪くても意味合いなんて同じなんだよ。
ニーナが丹精込めて作ってくれた服はレスリングレオタードにそっくりだった。
肩ひものように伸びた部分がヘソの下あたりまで続き、臀部はぴっちりと布が覆う。太ももの上あたりまでぴっちりとね。
もうやだこれ……。
「ニーナ、これ、男の人に流行ってるって……」
「はい! よく見かけます!」
「ナマズか……」
「男の人です」
「人間にはちょっとこいつは刺激的過ぎるよ」
「そ、そうなんですか。し、仕方ありません。着かたが分からないんですよね。でしたら、わたしが着て見せますか?」
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