ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~

うみ

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24.みんなでおでかけもきゃ

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 ビーバーがチハルのおともだちになってから早三日が過ぎようとしている。
 彼を喚んだ時、たった一晩で厩舎を作り上げたビーバーの活躍はこれだけに留まらなかった。
 チハルと一緒に地下水路まで行ったにも関わらず、痛んだチハルの家を見事にリフォームしたのだ。
 更に、柵を作り直し、外で食事ができるよう屋根付きのテーブルセットまで作り上げたのだった。
 
「いただきます!」

 おともだち全員で外のテーブルを囲んでチハルは満面の笑みで手を合わせる。
 それぞれ食べるものは異なるが、全員がチハルの「いただきます」を待ってから食事に口をつけた。
 カラスとフクロモモンガは魔力を込めたマンゴー、ソルと白猫スレイプニルは焙った肉、ビーバーはニンジン。
 残るチハルは鴨肉を挟んだサンドイッチである。
 
 しゃりしゃりとマンゴーを皮ごとかじっていたフクロモモンガのルルるんがハタと顔をあげた。
 構わずマンゴーに顔を埋めるものだから、ふさふさの口周りがベトベトになっている。
 
『チハル。魔晶石を取りに行かないのかもきゃ?』
「54階も37階もわたしじゃ取りに行けないよ」
『54階? 何の事もきゃ?』
「迷宮だよ?」
『そこじゃないもきゃ。オレサマは暗いところが好きじゃないもきゃ』
「ん、どこの魔晶石なの?」
『あっちもきゃ』

 勢いよく左手を指さすルルるんの口元から果汁が飛び散った。
 食べるか喋るかどちらかにした方がいい典型である。
 チハルが「んん?」としていることで、彼の動きは更にエスカレートしてきた。
 両腕を振り上げ、大きな真ん丸の目をパチパチさせて「もきゃー」と鼻をひくひくさせる。
 必死な様子のルルるんに対し、カラスが呆れたように「くああ」と鳴く。
 
『まるで分らん』
『もきゃー。カラスにはオレサマの偉大なる計画など見えなくて当然もきゃ』
『あー、はいはい。んで、どこだ?』
『山もきゃ』
『山……天井山脈の魔晶石はお前が拾ってきたんじゃないのか?』
『そうもきゃー! 魔王様たるオレサマにかかれば、ぎょわあ』

 カラスに鼻先を突っつかれ変な叫び声をあげるフクロモモンガだった。
 一方でチハルはぽんと膝を打つ。
 
「山なんだね。ルルるん」
『そうもきゃー! そうと決まったらさっそく行くもきゃ』
「洞の中はルルるんが取ってきたんだよね。山……ええっと、、『周囲よりも高く盛り上がった地形や場所』のことだよね?」
「もきゃ?」

 ルルるんの頭にハテナマークが浮かぶ、やれやれとカラスが「そうだ」とチハルをフォローする。

「だったら、二つあるよ。どっちもわたしじゃ取りに行けないよ?」
『スレイプニルが手伝ってくれるもきゃ。すぐ行くもきゃ。チハルは魔晶石が欲しいもきゃ?』
「うん。どっちだろ?」
『どっち? よくわからないけど、行くもぎゃー』

 「ダメだこいつ」と口を漏らすカラスにルルるんが「なんだともきゃー」とお怒りになり、取っ組み合いになってしまう。
 しかし、あっさりとカラスに脚でペシペシされ「ぐぬぬ」と引き下がるフクロモモンガであった。
 
『今は急ぐもきゃ。カラスに関わっている暇はないもきゃ。チハル。ソルに乗るもきゃ』
「うん!」

 と言いつつも全員が食べ終わってから移動を開始することになるのである。
 彼女たちにとって「急ぐ」とはこの程度のこと。魔晶石は逃げるものでもないのだから。

 ◇◇◇
 
「みんなでお出かけ、楽しいね!」
『まあ、悪くはないな』
「びばば」
「グルル」

 ソルの背にはチハルだけじゃなく、彼女のお腹のところにビーバーが。ソルの頭にはカラスが乗っかっている。
 ビーバーもカラスも今回のピクニックで特に何かをするわけではない。でも、せっかく遠出するなら「みんな一緒に行こう」とチハルが誘ったのだ。
 チハルだけじゃなく、ビーバーやソルはもちろん捻くれカラスも楽しいのか時折、尾をピクピクさせていた。
 
『こっちもきゃー』

 白猫にまたがり「ふんふんもきゃー」とご機嫌に鼻歌を口ずさむ彼らの歩みは人間が走るくらいの速度である。

「ルルるん、真っ直ぐ進んでいるの?」
『そうもきゃー。山があろうが谷があろうが、スレイプニルの敵じゃないもきゃ』

 さすがにスレイプニルに飛び越えることのできない谷や川なら簡単にはいかないだろうと思ったカラスであったが、紳士な彼は黙っておくことにした。
 それより、先に確かめたいことがある。
 
『進む先にある魔晶石は遠いのか?』
「この速度だと二日? くらいかな?」
『おいおい、何の準備もしてねえぞ。おい、フクロモモンガ。もうちっとスピードアップできねえのか?』

 チハルに尋ねた後、思った以上の距離にカラスがフクロモモンガを煽る。
 
『スレイプニルがソルに気遣ってるだけもきゃ。ついてこれなくなるもきゃ?』
「グルル」
「ソルは大丈夫だよ」
『分かったもきゃ。スレイプニルの本気を見せてやるもきゃー!』

 「もきゃあああ!」と奇声を発したルルるんに合わせるかのように、白猫スレイプニルがグングン速度をあげる。
 馬より速く、更に速く。風のようなスピードで駆ける。
 ソルも負けてはいない。ピッタリとスレイプニルを追走する。
 
 チハルの体内時計にして進むこと凡そ1時間と56分。ここでスレイプニルが速度を緩め始めた。
 高台の上に到達した彼女らの前方には噴煙ふきあげる火山が見えている。現在も激しく活動しているようで、マグマが斜面から流れ落ち山麓の半ばほどにある湖に流れ込んでいた。
 火山灰がひらひらとチハルたちのいる高台にまで飛んできている。このまま火山に踏み込むと確実に熱に焼かれるか、火山の吐き出す有毒ガスで生きてはいられない。

『チハルに教えてもらった場所の一つもきゃ』
「ルルるん。燃えちゃうよ?」

 ルルるんはスレイプニルを喚び戻すためにチハルから各地にある魔晶石の情報を聞いていた。
 彼はカラスの言う天井山脈の3000年樹に持ち前の樹上生活に向いた体を活かし、魔晶石を取って戻って来たのだ。
 この場所にも以前挑戦したことがあるらしい彼だったが、この高台から先に進むことは諦めたのだと言う。
 
『スレイプニルがいれば平気もきゃ!』
「にゃーん」

 ルルるんの宣言にスレイプニルも可愛らしく鳴く。
 ストンとソルから降りたチハルはとてとてと白猫の前にしゃがみ込み、彼を抱き上げる。
 ルルるんはというと長い尻尾をチハルの腕に絡みつけながら、彼女の肩に乗っかった。
 
「一緒だよ!」

 白猫を抱いたまま、ソルの背にまたがるチハル。
 目指す先は火山にある湖だ。
 
 ソルが高台を駆けおりようとした時、白猫が「にゃーん」と鳴く。
 するとソルの周囲を青白いオーラが覆う。
 彼の元に舞い降りた灰が青白いオーラに触れると、凍り付きボロボロと崩れ去る。
 
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