ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~

うみ

文字の大きさ
30 / 35

30.とつにゅー

しおりを挟む
「でだな。騎士団を含む大規模迷宮探索組のうち殆どは無事なんだ」
「だったらその人たちが救出に迎えばいいだけじゃないの?」
「そうしたいのはやまやまなんだがな。見失ったんだと」
「詳しく聞かせてもらえるかしら?」

 ギルドマスターの回りくどい説明に対し、代表してアマンダが的確に突っ込みを入れる。
 「まあ、焦らず聞いてくれ」と彼は後ろ頭をペチリと叩き、話を続けた。
 かつてない大規模探索の進み方は役割がきっちり決められたチーム単位で行われている。
 最初に挑むは階層探索チーム。新しい階に入ると、四つの探索チームが階層全域をくまなく踏破していく。
 他のチームは降りる階段の前または、スペースがなければある程度の広さがある部屋か通路に拠点を作る。
 全部で四つのチームが協力して着実に階層を進めて行く手筈だ。
 四つのチームで全体の三分の一になる。残りの三分の二は補給活動に当てられていた。
 といっても、ずっと補給だと騎士団にとっては修行にならないし、集まった猛者たちは腕試しができない。
 なので、補給活動に当たるチームも4つを一組にして二組作り、順番に入れ換えていく方法を取った。
 当たり前だが、深く潜れば潜るほど、補給路の確保が大変になってくる。

「まあ、そんなこんなで、補給線の限界があるわけだ」
「道が分かっていたとして、40階前後くらいかしら」
「そうだな。最短距離で進むにしろ、途中でモンスターに襲われるし罠も突如発生する」
「よく考えていると思うわ。補給の人たちが一番人数が多いんですものね」
「んだな。慎重な作戦が功を奏し、今のところ犠牲者は一人もいない」

 アマンダとのやり取りがひと段落ついたところで、マスターは顎髭をさすりつつ、すっと目を細めた。
 自然とチハル以外の集まったメンバーの気が引き締まる。
 
「ここからが本題だ。探索チームのうち一つが忽然と姿を消してしまった。場所は41階だ」
 
 マスターの言葉に無言で頷く三人と「ん?」と首を傾けるチハル。
 41階で探索を行い、規定の時間になっても1チームが戻ってこない。そこで該当チームの探索範囲を回ったところ、発見することができなかった。
 次に41階をくまなく捜索したが、彼らが見つからない。
 そこで考えられるのが罠によって彼らが41階から別の階層に移動してしまった可能性だ。
 考えられる罠で最も確率が高いのは「落とし穴」である。アーチボルトらが洗礼を受けた落とし穴は最大2階層落ちることがこれまで確認されていた。
 もう一つは「転移」。これは文字通りの意味で、どこに移動するのか分からない。
 ギルドマスターが転移のトラップに引っかかったと報告を受けたことはこれまで二度しかなかった。
 それほどレアな罠であるが、報告によると一度は同じ階層に転移。もう一例は一つ上の階層に転移したとのこと。

「そんなわけで今は42階と、補給チームを一時的に40階に待機させて探索に当たっている」
「いつからなの?」
「二日前からだ。拠点確保としつつだから、時間はかかるにしろ40階から42階にいるのなら発見されていてしかるべしなんだよな」
「隠し部屋……かもしれないけど、ロストしたチームは護符を持っているのかしら?」

 無言で首を振るマスターにゴンザとアマンダの口からため息が漏れる。
 そんな中、チハルだけはにこにこしたまま、じっとみんなの様子を見守っていた。
 彼女の様子を見たマスターが彼女に問いかける。
 
「チハル。行方不明の奴らのいる場所が分かるのか?」
「ううんと。動いているアーティファクトがあるの。誰かが持っているんじゃないかな?」
「アーティファクトの位置が分かるのか!」
「全部じゃないよ。そのアーティファクトは分かるんだよ」
「何のアーティファクトかは気になるところだが、ありがたい。騎士団ならアーティファクトを持っていても不思議じゃないからな」

 アーティファクトはとても希少で高価なものであるが、国の抱える騎士団ともなれば、いや騎士団だからこそアーティファクトを所持しているはずだとマスターは言う。
 アーティファクトは何も骨董品や記念品というわけではない。実利を兼ねたものだ。
 武器タイプのアーティファクトならば、一流の職人が鍛えた剣よりも鋭く、硬い。更に、アーティファクトによっては追加効果を持つものまである。
 本気の攻略となれば、できうる限り最高の装備で挑むのは当然のこと。
 
「何階層にその動くアーティファクトはいるんだ?」
「47階だよ。わたしじゃ、34階までしか行けないよ」
「アマンダ、ゴンザ、ルチアの三人と協力すればどうだ?」
「アマンダさんたちが怪我しないかな」
「危なくなったら引くくらいなんてことはねえよな?」

 笑いながら「な」と目で訴えるマスターに対し、三人は即頷きを返す。
 
「俺たちはモンスターと戦うのが本職だぜ。心配するな、チハル。いつもの仕事をやるだけさ。いざとなりゃこいつもある」

 ガハハと白い歯を見せながら立てかけたハルバードをポンと叩くゴンザであった。
 一方、指先を額に当てたアマンダが反対側の手をあげる。
 
「47階には私たちが挑む、でいいのかしら。騎士団の人たちは?」
「これから打診してみるが、チハルのことは見せたくないんだよな」
「そうね。47階の人たちも動いているみたいだし、移動されて他の階に……ということもあるわ」
「俺たちでも探してみる、と伝えた方がいいか?」

 アマンダはマスターから目を離し、チハルへ目線を向けた。

「チハルちゃんがそれでよければ。チハルちゃん、私たちと47階まで行ってみない?」
「いいの?」
「もちろんよ。ゴンザも言っていたことだけど、私たちは迷宮を探索するのが主なお仕事だから、道案内とモンスターを鎮めてくれるチハルちゃんがいれば大助かりよ」
「うん!」

 元気よく頷くチハルにアマンダではなくルチアが「任せてくださいっす!」と力強く拳を握りしめていた。
 この後、マスターから騎士団に話を通し、チハルたちも迷宮に潜ることとなる。
 メンバーはアマンダ、ルチア、ゴンザの三人の探索者とチハル、クラーロ、ソルといつもの面々だ。
 迷宮内で夜を明かすことも考慮し、二日分の食糧も準備した。荷物持ちは主にゴンザである。
 もちろん、リュートも忘れずに。
 
 彼女らが迷宮に入ってから数時間で33階にまで到達した。33階にも休憩室があり、そこで一旦休憩を取る。
 ここで一旦疲れを癒し、問題の35階へ挑もうという腹だ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏灯みかん
ファンタジー
生まれながらに強い魔力を持つ少女レイラは、聖女として大神殿の小部屋で、祈るだけの生活を送ってきた。 けれど王太子に「身元不明の孤児だから」と婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」 追放の道中で出会った冒険者のステファンと狼男ライガに拾われ、レイラは初めて外の世界で暮らし始める。 冒険者としての仕事、初めてのカフェでのお茶会。 隣国での生活の中で、レイラは少しずつ自分の居場所を作っていく。 一方、レイラが去った王国では魔物が発生し、大神殿の大司教は彼女を取り戻そうと動き出していた。 ――私はなんなの? どこから来たの? これは、救う存在として利用されてきた少女が、「自分のこれから」を選び直していく物語。 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。 【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

処理中です...