34 / 35
34.エピローグ
しおりを挟む
チハルたちが無事地上に戻ってから二週間後に騎士団による探索チームは迷宮探索を終了させた。
結局彼らは43階まで潜り、行方不明の事故があってからは30階に拠点を移したそうだ。
さてチハルたちと言えば――。
「いいの?」
「おう。他にも騎士団からの報酬もある」
チハルの手にはクレアの所持していた魔晶石が収まっていた。
クレアが大事にしていた魔晶石を譲ってくれたのにはもちろん訳がある。
37階に寄り道した時のことを覚えているだろうか?
ついでに宝箱を開いた中から出てきた緋色に輝くインゴットをクレアに鑑定してもらったところ、ヒヒイロカネという超希少な魔法金属だと分かった。
ヒヒイロカネは大陸銃で発見された全てを合わせても片手剣一本分が何とか作ることができる程度である。
今回彼女らが持ち帰ったヒヒイロカネはそれだけで片手剣一本分になるのだ。四分割したヒヒイロカネと魔晶石を交換ということで交渉がまとまった。
(クレアは加えてゴルダを支払うと言っていたが、チハルが固辞したためこのような取引となった。)
本日は一旦騎士団による探索チームが解散したということで、お疲れ様会を開いている。マスターの奢りで。
場所はいつものギルド横の酒場である。
集まったメンバーも迷子の探索チームを探しに行った面々だった。
チハルにとっては最近最も親しい間柄の人たちである。
「そういや、指輪の鑑定は済んだのか?」
ビールをぐびりと飲み、ジョッキをテーブルの上に置いたゴンザがマスターに問いかけた。
「あれは二つセットで使うアイテムらしい……ってところまで分かったが一つしかないから使えない。ただの骨董品だな」
「ペアリングだったのか。それじゃあ仕方ねえなー」
仕方ねえと言いつつもゴンザの表情は真逆で、ガハハハと愉快そうに笑っている。
彼は独り身だし、これまでの探索者生活でそれなりの蓄えもあった。一攫千金を狙うという野心など彼にとって皆無だし、自分はもうそのような歳でもないと思っている。
それに、ヒヒイロカネでたんまりとお金が転がり込んできた。
「チハルさん、(魔晶石の)残り一つ、取りに行かないっすか?」
「危ないよ」
「大丈夫っす! こう見えて逃げ足だけは超一流なんすよ」
「それ、自慢になってないから」
ぽこんと彼女の肩を叩くアマンダに「にへへ」と舌を出すルチア。
そんな彼女らにテーブルの上に乗ったままのカラスがくいっと嘴を向ける。
『50階にいるガーディアンが面倒だな。まあ、ミスリルの武器があるなら行けるんじゃねえか』
「あら。そうなの」
すぐに主従契約を解除すると約束していたアマンダとクラーロであったが、未だに契約関係が続いていた。
というのは、チハルに原因がある。
彼女はクラーロとアマンダがとても仲良くなったと喜び、アマンダに「クラーロとこれからも仲良くしてあげてね」なんて言われてしまった。
どうするか、クラーロとアマンダで相談した結果、使い魔契約を今しばらく継続することにしたのだ。
といってもクラーロはアマンダの傍にいるわけではなく、チハルとずっと一緒にいる。
だが、二人の意思疎通に距離は関係ない。クラーロは離れたところにいる者に対しても頭の中に語りかけることができる。
普通の人間に対してはできないが、使い魔契約をしていおりラインが繋がったアマンダであれば問題ない。
彼らは毎日離れたところから会話を交わしている。というのは、アマンダが新しい魔法を覚えるためだ。
チハルの希望を叶えつつ、使い魔契約を解除するには、使い魔契約無しでもアマンダがクラーロと意思疎通ができるようにならなければならない。
そのための魔法を彼女は習得中というわけである。
伝説の魔法使いから直接教授されていることに戦々恐々としたアマンダであったが、最近は慣れてきた。しかし、習得にはまだ一ヶ月か二ヶ月くらいかかる見込みである。
「そんじゃあ、最後の魔晶石を取りに行くか? ぷはー」
「明日に行きますか?」
「おう、いいぜ。ちょうど騎士団のが終わったところだしな」
「自分達もっす!」
チハルにもちろん異議などあろうはずはなく、明日に最後の魔晶石を取りに向かうこととなった。
場所は迷宮の54階。これまでで最長距離である。
迷宮中で二泊できるように準備をして行くことに決まった。
◇◇◇
大陸にある魔晶石は全てチハルの手元に集まる。
54階の魔晶石も特に苦労することなく獲得でき、副次的に開けた宝箱からは高価なアーティファクトが出たとかなんとか。
レッドアイを召喚して以来、魔晶石が手元にあっても喚んでいなかった。
ルルるんから、「次の魔晶石のゲットに繋がるのを喚ぶといいもきゃー」と言われてから、結局彼女は新しいおともだちを喚んでいなかったのだ。
全てが集まった今、順番を考えるでもなく喚べば良い。
「もう魔晶石はないもきゃ?」
「ううん。海の中とか島にもあるよ?」
「そうかもきゃー。次は長い旅もきゃー」
「あはは。そのうち、ね!」
フクロモモンガがチハルの首元を移動しながらもきゃもきゃと喜ぶ。
一方でチハルはすぐに動き出すとは応えなかった。
だって、リンゴを売りに行かないといけきゃだし! と彼女はニコニコと満面の笑みを浮かべる。
そんなチハルの足もとでカラスが首を上にあげ彼女を見つめた。
『チハル。どいつにするんだ?』
「うーん。レッドアイを喚んだから、エメラルドアイも喚んであげなきゃ、だよね」
『いいんじゃねえか。他はどうする?』
「どの子でもいいよ! みんな待ってるのかな?」
『さあな。喚んでも食べるものがなきゃ意味がねえ。偏食組は後からだな。笹とかユーカリはこの場にない』
「そうかー。植えるといいのかな?」
『そうだな。探しに行くか?』
「うん! ピクニックに行こうー」
『くああ。そうだな。二日で戻ることができる距離でな』
騒がしいルルるんとクラーロたちの声を丸まったままのソルが聞いているよと右耳をピクリと動かす。
白猫は「にゃーん」と無邪気に鳴き、ふあああと大きな欠伸をした。
チハルは両目を瞑り、心の中のワタシに呼び掛ける。
――ワタシの記録を呼び出します。
チハルが心の中で念じる。
「魔晶石のコードを実行します。対象は覇王の朋友『エメラルドアイ』」
魔晶石が強い七色の輝きを放ち、粒子となって溶け始めた。
おしまい
ここまでお読みいただきありがとうございました!!
18話が抜けておりました。よろしければこちらもお読みいただけますと幸いです!
結局彼らは43階まで潜り、行方不明の事故があってからは30階に拠点を移したそうだ。
さてチハルたちと言えば――。
「いいの?」
「おう。他にも騎士団からの報酬もある」
チハルの手にはクレアの所持していた魔晶石が収まっていた。
クレアが大事にしていた魔晶石を譲ってくれたのにはもちろん訳がある。
37階に寄り道した時のことを覚えているだろうか?
ついでに宝箱を開いた中から出てきた緋色に輝くインゴットをクレアに鑑定してもらったところ、ヒヒイロカネという超希少な魔法金属だと分かった。
ヒヒイロカネは大陸銃で発見された全てを合わせても片手剣一本分が何とか作ることができる程度である。
今回彼女らが持ち帰ったヒヒイロカネはそれだけで片手剣一本分になるのだ。四分割したヒヒイロカネと魔晶石を交換ということで交渉がまとまった。
(クレアは加えてゴルダを支払うと言っていたが、チハルが固辞したためこのような取引となった。)
本日は一旦騎士団による探索チームが解散したということで、お疲れ様会を開いている。マスターの奢りで。
場所はいつものギルド横の酒場である。
集まったメンバーも迷子の探索チームを探しに行った面々だった。
チハルにとっては最近最も親しい間柄の人たちである。
「そういや、指輪の鑑定は済んだのか?」
ビールをぐびりと飲み、ジョッキをテーブルの上に置いたゴンザがマスターに問いかけた。
「あれは二つセットで使うアイテムらしい……ってところまで分かったが一つしかないから使えない。ただの骨董品だな」
「ペアリングだったのか。それじゃあ仕方ねえなー」
仕方ねえと言いつつもゴンザの表情は真逆で、ガハハハと愉快そうに笑っている。
彼は独り身だし、これまでの探索者生活でそれなりの蓄えもあった。一攫千金を狙うという野心など彼にとって皆無だし、自分はもうそのような歳でもないと思っている。
それに、ヒヒイロカネでたんまりとお金が転がり込んできた。
「チハルさん、(魔晶石の)残り一つ、取りに行かないっすか?」
「危ないよ」
「大丈夫っす! こう見えて逃げ足だけは超一流なんすよ」
「それ、自慢になってないから」
ぽこんと彼女の肩を叩くアマンダに「にへへ」と舌を出すルチア。
そんな彼女らにテーブルの上に乗ったままのカラスがくいっと嘴を向ける。
『50階にいるガーディアンが面倒だな。まあ、ミスリルの武器があるなら行けるんじゃねえか』
「あら。そうなの」
すぐに主従契約を解除すると約束していたアマンダとクラーロであったが、未だに契約関係が続いていた。
というのは、チハルに原因がある。
彼女はクラーロとアマンダがとても仲良くなったと喜び、アマンダに「クラーロとこれからも仲良くしてあげてね」なんて言われてしまった。
どうするか、クラーロとアマンダで相談した結果、使い魔契約を今しばらく継続することにしたのだ。
といってもクラーロはアマンダの傍にいるわけではなく、チハルとずっと一緒にいる。
だが、二人の意思疎通に距離は関係ない。クラーロは離れたところにいる者に対しても頭の中に語りかけることができる。
普通の人間に対してはできないが、使い魔契約をしていおりラインが繋がったアマンダであれば問題ない。
彼らは毎日離れたところから会話を交わしている。というのは、アマンダが新しい魔法を覚えるためだ。
チハルの希望を叶えつつ、使い魔契約を解除するには、使い魔契約無しでもアマンダがクラーロと意思疎通ができるようにならなければならない。
そのための魔法を彼女は習得中というわけである。
伝説の魔法使いから直接教授されていることに戦々恐々としたアマンダであったが、最近は慣れてきた。しかし、習得にはまだ一ヶ月か二ヶ月くらいかかる見込みである。
「そんじゃあ、最後の魔晶石を取りに行くか? ぷはー」
「明日に行きますか?」
「おう、いいぜ。ちょうど騎士団のが終わったところだしな」
「自分達もっす!」
チハルにもちろん異議などあろうはずはなく、明日に最後の魔晶石を取りに向かうこととなった。
場所は迷宮の54階。これまでで最長距離である。
迷宮中で二泊できるように準備をして行くことに決まった。
◇◇◇
大陸にある魔晶石は全てチハルの手元に集まる。
54階の魔晶石も特に苦労することなく獲得でき、副次的に開けた宝箱からは高価なアーティファクトが出たとかなんとか。
レッドアイを召喚して以来、魔晶石が手元にあっても喚んでいなかった。
ルルるんから、「次の魔晶石のゲットに繋がるのを喚ぶといいもきゃー」と言われてから、結局彼女は新しいおともだちを喚んでいなかったのだ。
全てが集まった今、順番を考えるでもなく喚べば良い。
「もう魔晶石はないもきゃ?」
「ううん。海の中とか島にもあるよ?」
「そうかもきゃー。次は長い旅もきゃー」
「あはは。そのうち、ね!」
フクロモモンガがチハルの首元を移動しながらもきゃもきゃと喜ぶ。
一方でチハルはすぐに動き出すとは応えなかった。
だって、リンゴを売りに行かないといけきゃだし! と彼女はニコニコと満面の笑みを浮かべる。
そんなチハルの足もとでカラスが首を上にあげ彼女を見つめた。
『チハル。どいつにするんだ?』
「うーん。レッドアイを喚んだから、エメラルドアイも喚んであげなきゃ、だよね」
『いいんじゃねえか。他はどうする?』
「どの子でもいいよ! みんな待ってるのかな?」
『さあな。喚んでも食べるものがなきゃ意味がねえ。偏食組は後からだな。笹とかユーカリはこの場にない』
「そうかー。植えるといいのかな?」
『そうだな。探しに行くか?』
「うん! ピクニックに行こうー」
『くああ。そうだな。二日で戻ることができる距離でな』
騒がしいルルるんとクラーロたちの声を丸まったままのソルが聞いているよと右耳をピクリと動かす。
白猫は「にゃーん」と無邪気に鳴き、ふあああと大きな欠伸をした。
チハルは両目を瞑り、心の中のワタシに呼び掛ける。
――ワタシの記録を呼び出します。
チハルが心の中で念じる。
「魔晶石のコードを実行します。対象は覇王の朋友『エメラルドアイ』」
魔晶石が強い七色の輝きを放ち、粒子となって溶け始めた。
おしまい
ここまでお読みいただきありがとうございました!!
18話が抜けておりました。よろしければこちらもお読みいただけますと幸いです!
77
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
追放聖女35歳、拾われ王妃になりました
真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。
自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。
ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。
とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。
彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。
聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて??
大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。
●他作品とは特に世界観のつながりはありません。
●『小説家になろう』に先行して掲載しております。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる