凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第10話 立札

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 立て札に書かれていたことをまとめるとこんな感じになる。
 ≪釣り大会、参加者募集! 優勝者には賞金1万ジェム! 他にも賞品多数!≫
 そんで、何で競うのか、というといくつか部門がある。
 魚のサイズ、重さはよくあるやつで、他には釣った数や魚の色の種類が多い、とかいうのもあった。各部門ごとに賞金1万ジェムが出る。
「ええと、開催は5日にやるって、いつなんだろ」
「明後日です! いっぱい参加者が集まりますよ!」
「場所は港?」
「街から見える海岸線ならどこでもよいってここに書いてます」
 賞金の説明に比べ、小さな文字で場所のことも書かれていた。お金(ジェム)がない俺としては明後日開催がありがたい。賞金ハンターに俺はなる。
「あ、そうだ。ここをマークしておくよ」
「人通りが多いので避けた方がいいかと思います!」
 マークとはゲートの魔法の転移先を指定する魔法だ。予めマークをしておくことでゲートを使うことができるようになる。
 マークでいくつでも転移先を登録できるものの、登録し過ぎには注意が必要だ。というのは、ゲートの扉を出すときにマークで登録した場所が頭の中に浮かぶ、浮かんだ景色を指定してゲートの魔法を発動させる感じなんだよね。
 マークで登録し過ぎるとどこがどこやらになってしまう。ちなみにどこも指定しない場合はホームに移動となる。
 ゲートはとても便利な魔法であるが、アーニーの指摘通り制約もあるんだ。
 マークで指定可能な場所は地面に触れていること、ゲート発動時の転移先に障害物がないこと。障害物の定義は曖昧で、野球のボールくらいのサイズでも障害物としてみなされる。
 立札のある広場は人通りも多く、ゲート発動時に引っかかる可能性が高い。NPCなら歩く場所が決まっているから避けることもできたのだが、本物の人となるとそうはいかない。ゲートで転移できたとしても、ゲートから出てきた俺と衝突して怪我するまである。
「アーニーの家の前でマークさせてもらおうかな」
「はい!」
 距離はあるがテレポートで崖下りすれば街まですぐだし、彼女の自宅前なら人通りの心配もない。
「よっし確認はできたし、戻るとするか」
「ハミルさんのところには行かれないのですか?」
 ハミルトンのことを忘れていたわけじゃない。アーニーから彼がいることを聞いていたから、会いに行こうとは思っていた。
 彼女の発言から予想されることは……聞いてみよう。
「ハミルトンもこの街にいるの?」
「はい、よろしければ案内しますよ」
 おお、アーニーとハミルトンは同じ街で暮らしていたのか。彼もアーニーと同じく俺のホームへちょこちょこ訪れてくれているはず。
 だけど、ゲートの魔法があるから住む場所はどこでもいいわけだ。
 なので同じ街だとまでは考えていなかった。二人が会うにしてもホームで待ち合わせできるし。
 案内を買って出て歩き始めたアーニーが思い出したかのように立ち止まる。
「ハミルさん、今はまだお仕事中でした」
「邪魔しちゃ悪いよな。顔を見るだけでも見たい」
「はいー、行きましょう!」
「おう」
  
 そんなこんなで大通りを歩くこと15分ほど。
 三階建ての重厚な建物の前でアーニーが立ち止まる。お店か何かかな? ハミルトンは俺の趣味で筋肉質なスーツが似合う紳士といったキャラメイクをしているから、ホテルの従業員でも似合うと思う。建物の大きさからして宿泊施設の線もありうるか。
 建物は一階が石壁、二階は木製のようだ。入口は解放されており数人がすれ違っても余裕なほどだった。
「ここは……あ」
 アーニーへ尋ねようとしたところで気が付いたぜ。入口のところにでかでかと看板が掲げられていることを。
 ≪探索者ギルド 君も探索者になろう≫
「ハミルさんはギルド職員もやってるんですよ!」
「ギルド職員も、ってことは他にも?」
「はいー、わたしが出ている時はハミルさん自ら道案内をします」
「アーニーがいないときはハミルトンがやっているってことか」
 ダスタルドの道案内は主にアーニーがやっている。ハミルトンが探索者ギルドの職員なら、ダスタルドへ行きたい探索者にアーニーを紹介することも可能だ。
 彼女が出払っている時はハミルトンも道案内をすることで、ダスタルドへ行きたい探索者に漏れなく道案内ができるって寸法である。
 道案内以外の仕事もできそうなものだが、彼らもまた思うところがあるのだろう。
 
 時刻はいつの間にやら昼下がり、リンゴしか食べていないのでお腹も減ってきた。ハミルトンの顔を見たらホームに戻って食事にしようっと。
 さてさて、彼はどこにいるのだろう。
 中は広く、依頼書を張り付ける用のボードがずらりならんだエリア、軽食が取れそうなエリア。そして、受付エリアがあった。
 時刻的なものなのか、閑散としていて探索者らしき姿は4、5人といったところ。
「受付の方へ行ってみましょう」
 探索者ではない俺が受付に行っていいものかと思ったが、アーニーがいるなら大丈夫かな?
 道案内で探索者とここで会っていそうだし。
「探索者ギルドっていつごろ始まったの?」
「だいぶ昔です」
「だいぶ昔かあ。探索者って……あ、後でで」
「こんにちはー」
 会話しながら歩いていたので受付前まで到着し、会話を打ちきる。
 一方のアーニーは受付にいるウサギ耳のギルド職員に向け笑顔で挨拶をしていた。
 彼女のことを知っているらしいギルド職員は笑顔で彼女へ挨拶を返す。
「アーニーさん、今のところ道案内のお仕事は来ていません」
「道案内はしばらくお休みしようかなって思ってます。ハミルさんいますか?」
 そこで俺はアーニーの服の袖を引っ張り、彼女の耳元へ口を寄せる。
「仕事中だから邪魔するのはやめておこう。ハミルトンの仕事が終わる頃また来ようよ」
「はいー、分かりました。バニーさん、また後できます!」
 仕事関係者でもない俺たちが会社訪問して仕事中の社員に会う、のはさすがに気が引けるよ。
 いつ頃ギルドの仕事が終わるのか分からないのでアーニーに聞くか。
 
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